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2008年11月の記事

2008/11/30

Early Songs/Lage Lund

1307
Criss Crossレーベルの9月発売の3作のうち、やっと3枚目が届きました。今日現在(’08年11月30日)未だにAmazonやHMV通販では入手困難が続いていて、某通販CDショップで在庫有りとの情報を得て、注文したものです。ある程度人気のあるレーベルとはいっても、そんなに全国からの注文枚数は多くないはずだと思うので、プレス枚数が少なかったか、流通経路のどこかに欠陥があるのかと思います。8月に予約注文したのに9月下旬の発売で入手できなかったとは。でも、このアルバム、2ヶ月以上首を長くして待っていただけのことはありました。現代ジャズをお好きな方には、いいアルバムだと思います。


Early Songs/Lage Lund(G)(Criss Cross 1307)(輸入盤) - Recorded October 24, 2007. Marcus Strickland(Ts, Ss), Danny Grissett(P), Orlando LeFleming(B), Kendrick Scott(Ds) - 1. Scrapyard Orchestra 2. Poppy 3. You Do Something To Me 4. Vonnegut 5. Around The World In A Bottle 6. Quiet Now 7. Celia 8. The Incredibly Profound Song

(08/11/30)8曲中5曲(1-2、4-5、8曲目)がラージュ・ルンドのオリジナルで、他はスタンダードとジャズメン・オリジナル。現代ジャズとしていいメンバーです。ギターも「今」を伝えるサウンド。少し浮遊感がありながらもドラマチックで盛り上がりもある、ソロを交代しながら12分もの演奏が続く1曲目、8分の6拍子や4分の4拍子を織り交ぜつつ、温度感が低いも、フレーズの密度もある2曲目、アップテンポで軽やかにスタンダードを奏でていく3曲目、ファンクのリズムの上を踊りまわるソロ楽器、後半はボッサ的な4曲目、浮遊感のあるややしっとり系、中盤が4ビートの5曲目、ギターでじっくりと奏であげるバラードの6曲目、唯一オーソドックスなアップテンポの4ビートジャズの7曲目、基本が4ビートながら今の味付けの8曲目。

2008/11/29

9 Levels/Greg Osby

Greg9level
グレッグ・オズビーも自主レーベルからの発売になりました。やっぱりこういう先鋭的なサウンドを目指すとなると、以前のようにBlue Noteでは出しにくいという面もあるのでしょうね。最近のこういうタイプのジャズでは、彼は主に旋律転換法を使ってますが、他にモーダルな奏法、フリーのような奏法などの表現があって、今ではこれらが複雑に絡み合ってサウンドが出来上がっています。これもジャズの融合、拡散の流れだろうと思うのですが、このグレッグ・オズビーのサウンド、こっち方面が好きな人には一度聴いたら病みつきになってしまう可能性もありますね。私がそうです(笑)。


9 Levels/Greg Osby(As, Ss)(Inner Circle Music)(輸入盤) - Recorded April 14 and 15, 2008. Sara Serpa(Voice), Adam Birnbaum(P), Nir Felder(G), Joseph Lepore(B), Hamir Atwal(Ds) - 1. Principle 2. Tolerance 3. Humility 4. Truth 5. Less Tension Please 6. Resilience 7. Two Of One 8. Innocence 9. Optimism

(08/11/29)5、7曲目以外はグレッグ・オズビーの作曲。多くの曲で旋律転換法的な、メカニカルかつすんなりとはきてくれないメロディ。曲調もダークでほの暗い感じのものが多く、明るい曲調のものはほとんどないです。盛り上がったり静かな場面があったり、モーダルなサウンドとは一線を画していますが、6曲目などはフリー的なサウンドも。5、7曲目あたりはヴォイス(ヴォーカル)が印象的なメロディラインでせまります。演奏はけっこう高度なワザなんでしょうけれど、あまりそういうものを感じさせずにオズビー・ワールドにハマらせてくれるアルバム。静かな曲でも、ダークで都会的な深みがあります。口ずさみにくいメロディにコード進行だけど、様式美というか美しさを感じる場面も。9曲目後半にピアノとのデュオの隠しトラック。

2008/11/26

Atelier Of Melody/パオロ・ディ・サバティーノ・トリオ

Paoloateli
澤野工房の10月新譜。いつも1ヶ月遅れになってしまいます。でも、このアルバム、アトリエ・サワノのレーベルにしてはちょっと異色かも。確かにサウンド的に聴きやすい面もあるのですが、アレンジなどがひねくれていて、変拍子なども使ったりと、他のこのレーベルのピアニストでは見せないような面も持ち合わせています。そういう意味では、ジャズを聴きはじめた人ばかりでなく、マニアックなファンにも受け入れられるのではないかな、と思っています。有名な曲も半分近く入っているし、逆にオリジナルも多めですし。全部の曲ではないにしても、「饒舌」のフレーズというか、それが目立つピアニストです。


Atelier Of Melody/パオロ・ディ・サバティーノ(P)・トリオ(澤野工房)
Atelier Of Melody/Paolo Di Sabatino(P) Trio(Atelier Sawano AS081) - Recorded April 25-27, 2008. Marco Siniscalco(B), Glauco Di Sabatino(Ds) - 1. You And The Night And The Music 2. The Girl From Ipanema 3. Song 12 4. Tenderly 5. It's All Right With Me 6. Atelier Of Melody 7. In Love In Vain 8. Giocando 9. Tango Del Maiamore 10. Well You Needn't 11. Del Sasser 12. Love In Portofino 13. Sentimi

パオロ・ディ・サバティーノの作曲は13曲中5曲(3、6、8-9、13曲目)。他にスタンダード、ボッサ、ジャズメン・オリジナルなどがありますが、ひとひねりもふたひねりもあるアレンジや、時にリズムを崩したり変拍子だったりと、有名な曲がある割にはけっこうひねくれています。ピアノやその他のパートも饒舌気味のフレーズが繰り出され、澤野工房の他のアルバムとは一線を画すマニアックさを持っています。それでいてある程度の軽さや華やかさもあって、聴いていて飽きない70分ほどの時間の流れ。2曲目ではゴリゴリと速いパッセージを立て続けに繰り出す一面も。3、9曲目はしっとりとしつつも盛り上がる彼ならではのサウンド。まるでポップスのように軽やかに歌っていくタイトル曲の6曲目。時々出る饒舌さが心地よい。(08年10月25日発売)

2008/11/25

Harald Bergmann/Scardanelli

1761 ECM New Seriesの紹介です。ただ、このアルバムは新譜ではなく’04年リリースでしたが、映画音楽(映画ドキュメンタリー)のせいか当時の検索に引っかからず、買いもらしていたアルバムでした。先日気付いて注文したものです。本当はこちらのブログでは紹介する予定がなかったのですが、ブログ更新があいてしまうということで、アップしてみました。ドイツ語のナレーション、会話、バックにピアノまたは弦楽器の音楽が流れるという、時々このレーベルにある、映画のダイジェストのような内容で、ジャズファンにもクラシックファンにもあまり縁のないアルバムかもしれません。でもこういう企画が時々あるということは、現地ではある程度は売れていることが想像されます。

 

Harald Bergmann/Scardanelli(ECM New Series 1761)(輸入盤) - Released 2004. Walter Schmidinger(Poem), Peter Schneider(P), Noel Lee(P), Christian Ivaldi(P), Harald Bergmann(Conception and Montage)- 1. Ich Heisse Scaranelli 1 2. Der Fruhling.(Wenn Neu Das Licht...) 3. Der Name Ist Gefalscht 4. Vorgeschichte 5. An Zimmern. 6. Walzer 7. Zeugebnberichte 8. Das Angenehme Dieser Welt 9. Der Fruhling.(Der Mensch Vergisst Die Sorgen...) 10. Der Fruhling. (Die Sonne Kehrt Zu Neuen Freuden...) 11. Die Aussicht. (Der Off'ne Teg...) 12. Der Herbst. (Die Sagan, Die Der Erde...) 13. Der Winter (Wenn Sich Das Jahr Geandert...) 14. Der Winter (Wenn Sich Der Tag Des Jahres...) 15. Larghetto 16. Lieber Bellarmin! 17. Aber Dreifach Fuhlt' Ich Ihn 18. Besuch Christoph Schwab 19. Seine Unheimlich Langen Fingernagel 20. In Lieblicher Blaue 1 21. In Lieblicher Blaue 2 22. In Lieblicher Blaue 23. Seit Derer Nacht 24. Dr. Gmelins Sektionsbericht 25. Der Herbst. (Das Glanzen Der Natur...) 26. Liebste Mutter! 27. Die Aussicht. (Wenn In Die Ferne...) 28. Schlussszene 29. Lottes Todesbericht 30. Epilog

(08/11/25)"Text und Musik aus dem Film von Harald Bergmann"の記述があるように、映画の会話と音楽を抜粋してアルバムにしたもののようです。CDの全編に会話が入っていて、そのバックにピアノや弦楽器の演奏が流れているという、ECMの映画のドキュメンタリー的な内容のアルバム。ドイツ語なので内容は聞き取れませんが、ブックレットの白黒の写真は、渋くて地味そうな、ECM好みの映画のようです。かなりマニアックかも。

(注)このアルバムは’04年リリースでしたが、映画音楽(映画ドキュメンタリー)のせいか当時の検索に引っかからず、買いもらしていたアルバムでした。先日気付いて注文したものです。

Full Contact/Daniel Humair/Joachim Kuhn/Tony Malaby

Danielfull
ダニエル・ユメール、ヨアヒム・キューンのベテランと、ニューヨークでは気鋭のトニー・マラビーと組んだベースレスのトリオでのフリー・ジャズ。とは言うものの、展開していく時にお互いに鋭く反応し、あるいは先を読みあって演奏していくので、最初から最後までドシャメシャにはならない、計算された即興の部分が多いのがいいところ。でも範疇としてはフリー・ジャズなので、聴く人を選ぶでしょうね。3人の演奏能力はハンパではないので、やはりこのメンバーならではの演奏だと思います。押しまくる場面も多いですが、抑制されたところの緊張感や美しさもなかなかです。こういう方面が好きな人には、こたえられないのでは、とも思います。


Full Contact/Daniel Humair(Ds)/Joachim Kuhn(P)/Tony Malaby(Ts)(Bee Jazz)(輸入盤) - Recorded January 2008. - 1. Buried Head 2. Jim Dine 3. Full Contact 4. Oasis 5. Ghislene 6. Salinas 7. Effervescent Springbox 8. Sleeping Angels

(08/11/24)3人のフリー・インプロヴィゼーションが3曲(2、7-8曲目)とメンバーそれぞれのオリジナルですが、感触はモロにフリージャズ。2人名義の5曲目もトリオなのでこれは作曲でしょう。構築された部分というよりも、3人が対峙して反応を見ながらそれぞれに音を出し合って、ドラマを作りながら進んでいく感じ。おそらく作曲者のあるものも、テーマの提示だけでしょう。ハードな部分もあったり、静かな部分もあって、単なるドシャメシャにはならない。そのお互いの反応の仕方が、やはりこの路線も続けてきたミュージシャンなので、素晴らしい。タイトル曲の3曲目は、静かにはじまり徐々に過激になっていくフリー的展開。かなりのパワーです。フリーの合間にほんの少し、美しい緊張的な空間もあります。聴く人を選ぶかも。

2008/11/24

ロード・ショウズVol.1/ソニー・ロリンズ

Sonnyroad1
ソニーロリンズの未発表ライヴ集で、演奏は’80年から’07年にかけての長い期間の録音を、録音時期をシャッフルして聴かせています。でも、彼のワン・アンド・オンリーの演奏は、長い年月を経ても、変わったなと思わせるところがなくて、そのまま一気に時間を超えて、1枚のアルバムとして通して聴かせてしまいます。まあ、ベースがエレキ・ベースの曲が多かったり、かなり明るい曲が多かったりと、好みの問題はあるかと思いますけど。こういうタイプのサックスって、特に最近はあまり耳にすることがないので、やっぱり今でも自分にとっては昔から追いかけているミュージシャンのひとりです。


ロード・ショウズVol.1/ソニー・ロリンズ(Ts)(EmArcy)
Road Shows, Vol.1/Sonny Rollins(Ts)(EmArcy) - Recorded 1980, 1086, 2000, 2006 and 2007. Clifton Anderson(Tb), Mark Soskin(P), Bobby Broom(G), Jerome Harris(B), Al Foster(Ds), Bob Cranshaw(B), Victor Lewis(Ds), Kimati Dinizulu(Per), Stephen Scott(P), Perry Wilson(Ds), Victor See-Yuen(Per), Steve Jordan(Ds), Christian McBride(B), Roy Haynes(Ds) - 1. Best Wishes 2. More Than You Know 3. Blossom 4. Easy Living 5. Tenor Madness 6. Nice Lady 7. Some Enchanted Evening

’80年から’07年までにかけてのライヴ録音(’80年、’86年、’00年、’06年、’07年)で、未発表の音源とのこと。27年間も時間差があるのに、その時間の流れを感じさせない、どこまでもソニー・ロリンズの曲が71分で7曲。ロリンズの作曲は7曲中4曲(1、3、5-6曲目)。サイドのメンバーが誰であっても、バップと言うよりはメロディと手癖(?)で聴かせてしまう、ロリンズの個性をこれでもか、とグイグイ押してくるような感じです。そして、メチャメチャ明るいサウンド中心でも、3曲目のようにアップテンポでのマイナーのサンバも。バリバリの曲もいいですが、2、4曲目のようなバラードも、時々力技に持って行くところなど、いい感じです。ラスト7曲目はピアノレス・トリオ(アコースティック・ベース)で淡々と進行していきます。(08年10月15日発売)

2008/11/23

Life's Backward Glances - Solo And Quartet/Steve Kuhn

2090
ECMレーベル、再発ものの3CD-BOXが出ました。このスティーヴ・キューンのアルバム、日本では「エクスタシー」以外が未CD化だったものなので、今まで未CD化作品をほとんど出していなかったECMとしては画期的なBOXです。このレーベル、なぜがCDが出た時にそのまま廃盤になってしまったものの中には、けっこうクォリティが高くて売れそうなのに廃盤になってしまったものが多く、おそらくマンフレート・アイヒャーの独断だと思うのですが、ミステリーのひとつでした。それを今回聴けるものがあるので、貴重な音源と言えましょう。ただ、残念なことにオリジナルジャケットの写真は見当たりません。


Life's Backward Glances - Solo And Quartet/Steve Kuhn(P)(ECM 2090-92)(輸入盤) - Motility: Recorded 1977. Steve Slagle(Ss, As, Fl), Harvie Swartz(B), Michael Smith(Ds) - 1. The Rain Forest 2. Oceans In The Sky 3. Catherine 4. Bittersweet Passages 5. Deep Tango 6. Motility/The Child Is Gone 7. A Dance For One 8. Places I've Never Been Playground: Recorded July 1979. Sheila Jordan(Voice), Harvie Swartz(B), Bob Moses(Ds) - 1. Tomorrow's Son 2. Gentle Thoughts 3. Poem For No. 15 4. The Zoo 5. Deep Tango 6. Life's Backward Glance Ecstacy: Recorded November 1974. - 1. Silver 2. Prelude In G 3. Ulla 4. Thoughts Of A Gentleman - The Saga Of Harrison Crabfeathers 5. Life's Backward Grance

(08/11/22)Ecstacy(ECM 1058)’74年、Motility(ECM 1094)’77年(未CD化)、Playground(ECM 1159)’79年(未CD化)を3枚組BOXで再発しました。Ecstacyは再CD化のため割愛します。タイトル曲は5曲目とPlaygroundの6曲目で、フリーで耽美なピアノです。Motilityは普通のクァルテット編成ですが、耽美的で美しい演奏と、活発で先鋭的な演奏、8ビート、サンバなどさまざま。後におなじみの2曲目もあり、アップテンポの4ビートの6曲目。このCDの3、8曲目のみハーヴィー・シュワルツ作曲、残りの曲は3枚ともにスティーヴ・キューン作曲。Playgroundはヴォイスもあるトリオで、厳かさやエキゾチックな感じもあり。繊細さはこのCDも少し強めですが、4ビートの部分も(2曲目後半)。Motilityにもある「Deep Tango」がここにも。

2008/11/22

V.S.O.P./マンハッタン・ジャズ・クインテット

Mjqvsop
このアルバム、実は数日前に聴いていたのだけれど、何回も聴いてしまって、今日のアップになってしまいました。何を書いていいのか分からなかったからではなくて、楽しかったからなんですね。ジャズに関しては最初に聴いた印象を大切にするタイプなもので。まあ、本家マイルス・デイヴィスのアルバム群と比べてしまうと、深みなどが違うとは思いますが、楽しさ、温かさという点で、けっこう気に入りました。好きな曲「サム・スカンク・ファンク」もこのクインテット編成でガンガンファンクビートで演奏してくれて、これも満足。売れセンねらいと言えばそうですけど、デヴィッド・マシューズ氏、さすが、という感じがありました。


V.S.O.P./マンハッタン・ジャズ・クインテット(Birds)
V.S.O.P./Manhattan Jazz Quintet(Birds) - Recorded August 2008. David Matthews(P, Arr), Lew Soloff(Tp), Andy Snitzer(Ts), Eddie Gomez(B), Steve Gadd(Ds) - 1. Autumn Leaves 2. My Funny Valentine 3. Some Skunk Funk 4. Time After Time 5. Footprints 6. Walkin' Miles Davis Marathon Session Medley: 7. Blues By Five 8. Four 9. Oleo 10. Well You Needn't 11. Groovin'

「ヴェリー・スペシャル・ワンタイム・パフォーマンス」のタイトルなので、エディ・ゴメスとスティーヴ・ガッドの参加はたぶん今回限り。デヴィッド・マシューズの作曲は11曲目で、マイルスゆかりの曲が多いのが特徴。「枯葉」「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」「タイム・アフター・タイム」「フットプリンツ」「ウォーキン」と続き、7曲目以降のマイルスのマラソン・セッション・メドレーが圧巻(ラストだけオリジナル)。他に「サム・スカンク・ファンク」(3曲目)があり、これだけ勢いのあるファンクで異色。知っている曲が多く、ベスト盤的な聴き方ができます。リズムの2人はMJQの初期のメンバーでしたが、やっぱりその当時の方が勢いはあったけれど、今の彼らも円熟してきて悪くはありません。アレンジもいいし、聴きやすいので何度も聴きました。(08年10月22日発売)

2008/11/18

Cartography/Arve Henriksen

2086
ECMレーベル新譜がまた1枚届きました。これは、いちおうジャズの範疇には入れたのですが、いわゆる4ビート系のジャズでもファンク系でもなく、最近の北欧に多い、ビート感のないエレクトロニクス、サンプリング系のジャズ(?)ですね。ジャズから未来系の音楽に移っていく過程のサウンドと言うか。それでいてECMらしさは損なっていません。ですので普通のジャズファンには興味なさそうでも、ECMレーベルのファンには興味がありそう、とは思います。まあ、聴く人を選ぶアルバムでしょう。この人の独特なトランペットの音色がなかなか面白いです。サウンドも、流れにたゆたって、ゆったりとした感じですね。


Cartography/Arve Henriksen(Tp, Voice, Field Recording)(ECM 2086)(輸入盤) - Released 2008. Jan Bang(Live Sampling, Samples, Beats, Programming, Bass Line, Dictaphone, Organ Samples, Arrangement), Audun Kleive(Per, Ds), David Sylvian(Voice, Samples, Programming), Helge Sunde(String Arrangement and Programming), Eivind Aarset(G), Lars Danielsson(B), Erik Honore(Synth, Samples, Field Recording, Choir Samples), Arnaud Mercier(Treatments), Trio Mediaeval(Voice Sample), Verane Andronikof(Vo), Vytas Sondeckis(Vocal Arrangements), Anna Maria Friman(Voice), Stale Storlekken(Synth, Samples) - 1. Poverty And Its Opposite 2. Before And Afterlife 3. Migration 4. From Birth 5. Ouija 6. Recording Angel 7. Assembly 8. Loved One 9. The Unremarkable Child 10. Famine's Ghost 11. Thermal 12. Sorrow And Its Opposite

(08/11/16)Arve Henriksenと他のメンバー達の共作が多い。生音一発ではなくて、サンプラー、Field Recordingの多用によって、制作にけっこう時間がかかっているのではないでしょうか。なので珍しく録音年月が書いてありません。Henriksenは尺八の要素もあるような、ある種独特のサウンドのトランペットを吹く人ですが、ここでは淡々と吹く環境に合わせて、バックの音も、時にある程度人工的にもなったり、ヴォイスも入ったりしながら、ECMらしさを失っていない統一されたサウンドになっています。最近多くなっているサンプラーの使用も、北欧のミュージシャンらしく、手馴れたもの。ゆったりとドラマチックに悠久の時が流れていくような、それでいて温度感が低いサウンド。インプロヴィゼーションを時間をかけて積み重ねた感じ。

2008/11/17

ジョイアス・レイク/パットマルティーノ

Patjoyous
パット・マルティーノ作日本初CD化2枚目。こちらは4人での、リズムは’76年当時のファンクながら、ハードコア・フュージョンと言ってもいい内容です。いやー、カッコいいですね。リズム隊が黒っぽいのですが、エレキ・ベースのマーク・レオナルドはジャケット写真を見ると白人ですね。まあ、良い音楽には肌の色は関係ないのですが。今回出た2枚のうちでは、やはりギターを堪能できて、演奏もバシバシきているこちらの方を私なら先に選ぶでしょうね。まあ、SHM-CDなので再発もの(旧譜)にしては2,580円と少々高いのが難点ですけど。でも、演奏はホントにカッコいいです。気に入りました。


ジョイアス・レイク/パットマルティーノ(G、Synth、Per)(Warner Bros.)
Joyous Lake/Pat Partino(G, Synth, Per)(Warner Bros.) - Recorded September 1976. Delmar Brown(Key, Synth), Mark Leonald(B), Kenwood Denard(Ds, Per) - 1. Line Games 2. Pyramidal Vision 3. Mardi Gras 4. M'Wandishi 5. Song Bird 6. Joyous Lake

パット・マルティーノ作は6曲中3曲(1、5-6曲目)。2-3曲目がデルマー・ブラウン作、4曲目がケンウッド・デナード作。4人編成で、ハードコアなエレクトリック・ファンクを展開しています。速射砲的なギターフレーズも健在。速いフレーズのユニゾンで出だしと終わりがあり、ハードなファンクが展開するリズムを叩きまくりのサウンドの1曲目、当時の黒っぽいファンクリズムやラテンリズムの上を舞うギター、エレキピアノの2曲目、ボッサ的なミディアムのファンク、アップテンポのサンバとが交互にあわられ、ノリも良い3曲目、粘り気のあるファンクビートで、縦ノリとギターのワウワウが面白い4曲目、現代的でメカニカルなユニゾンのテーマでアドリブもスリリングな5曲目、重量級のリズムで自由にギターが踊るタイトル曲の6曲目。(08年10月22日発売)

2008/11/16

スターブライト/パット・マルティーノ

Patstar
パット・マルティーノの作品群は、やっぱり売れそうなものはけっこう早い時期に国内盤でもCD化されたけれど、今日聴いたアルバムは初CD化(ジャケット違いやタイトル違い、カップリングなどでは輸入盤CDででていたそう)だそうで、そういう意味では貴重かもしれません。ただ、内容的にもギターが16分音符で速射砲的に連続するという、彼の特徴的でスゴい場面はほとんどなく、ギターシンセサイザーも使って、短い曲を集めてトータルサウンドで聴かせるアルバムになっています。12曲でトータル33分か、というところとサウンド面で(権利の面もあるのかもしれませんが)、今まで日本でCD化されてなかった、という部分もあるのかな、と思います。


スターブライト/パット・マルティーノ(G)(Warner Bros.)
Starbright/Pat Martino(G)(Warner Bros.) - Recorded 1976. Gil Goldstein(Key), Warren Bernhardt(Synth), Michael Mainieri(Synth), Will Lee(B), Charles Collins(Ds), Michael Carvin(Ds), Alyrio Lima Cova(Per), Marty Quinn(Tablas), Al Regni(Fl), Joe D'Onofrio(Vln) - 1. Starbright 2. Eyes 3. Law 4. Fall 5. Deed A 6. Starbright Epilogue 7. Masquerada 8. Nefertiti 9. Blue Macaw 10. City Lights 11. Prelude 12. Epilogue

33分で12曲。パット・マルティーノ作は全12曲中8曲(1、3、5-7、9、11-12)。当時のクロスオーヴァー系のサウンドの曲がいろいろとちりばめられて、あまりギターの超絶技巧での活躍が少ない(ギターの音が小さかったり、ロック的な音だったり)のが、このアルバムの特徴。曲やサウンド重視ということがうかがえます。特にLP当時ではA面だった1、6曲目がタイトル曲とそのエンディングになっているので、前半はドラマチックな組曲(ウェイン・ショーター作も入ってますが)になっているのでしょう。個々の曲がちょっと短いのがもったいないですが、トータルサウンド重視なのでやむを得ないかも。ファンク的な曲、静かな曲などさまざま。それでも3、7、11曲目のように彼のギターがけっこう聴ける場面もあり、うれしい。(08年10月22日発売)

2008/11/13

Profumo Di Violetta/Gianluigi Trovesi All'Opera

2068
ECMレーベルの新譜が、ポツリポツリと届いています。今回のアルバムは、オーケストラや取り上げる曲がクラシックのサウンドで、Gianluigi Trovesiのオリジナルも多いですけど、いろいろな時代のクラシックの作曲家の曲(有名どころではプッチーニ)も入っているアルバム。サウンドだけでいけばクラシックの範疇ではないかと思えるほど。でもサックスやドラムスの自己主張が強い曲もあったりして、通して聴くとクラシックそのものという雰囲気でもなかったのですが。それにしても、ECMのこういう折衷的なアルバム、最近は増えてきました。私は雑食性なのでいいですが、ジャズは4ビートでなければ、と言う人も多いでしょうし。


Profumo Di Violetta/Gianluigi Trovesi(Cl, Sax) All'Opera(ECM 2068)(輸入盤) - Recorded September 2006. Marco Remondini(Cello), Stefano Bertoli(Ds), Filarmonica Mousike, Savino Acquaviva(Cond) - Il Prologo: 1. Alba Il Mito: 2. Toccata 3. Musa 4. Euridice 5. Ninfe Avernali 6. Ritornello Gianluigi Trovesi: 7. Frammenti Orfici Il Ballo: 8. Intrecciar Ciaccone Il Gioco Delle Seduzioni: 9. "Pur Ti Miro" 10. "Stizzoso, Mio Stizzoso" 11. Vespone L'innamoramento: 12. Profumo Di Violetta Part 1 13. "Ah, Fors'e Lui Che L'anima" 14. Profumo Di Violetta Part 2 15. Violetta E Le Altre Il Saltellar Gioioso: 16. "E Piquillo, Un Bel Gagliardo" 17. Salterellando 18. Antino Saltarello 19. Salterello Amoroso 20. "Largo Al Factotum" La Gelosia: 21. Aspettando Compar Alfio 22. "Il Cavallo Scalpita" 23. Cosi, Tosca

(08/11/12)オーケストラとの共演で、Gianluigi Trovesi(1、3-5、7-8、11-12、14、16-17、19、21(共作)曲目)の曲と、16世紀から20世紀に至るさまざまな作曲家の曲(クラシックですね)、作者不詳の曲などが混ざり合って、全体としては正当派なクラシックのアルバムを聴いている雰囲気です。ジャズ的なインプロヴィゼーションもあるのでしょうが、クラシックのサウンドの中に取り込まれている感じ。曲によっては、古い曲などはオーケストラ用のアレンジが施されています。17曲目ではクラシックからはみ出たようなサウンドもありますが、やはり全体的にはオーソドックスなクラシックという雰囲気のサウンドかと思います。19、23曲目のサックスはそれでも自己主張が強い感じ。不思議なクラシック寄りのアルバム。

2008/11/12

ファミリー&フレンズ~ランブリング・ボーイ/チャーリー・ヘイデン

Charliefami
チャーリー・ヘイデンのエマーシー移籍第1作は、カントリー・ソングのアルバムでした。ジャズ色はなく、ほんの少しパット・メセニー色のある曲と、最後のボーナストラックが何となくジャズ色を感じるかな、という程度です。ただ、ジャズ色がないからといって、こういうアルバムが嫌いなわけではなく、カントリーのアルバムと考えれば、けっこう良いアルバムではないかな、と思います。14曲目にパット・メセニー作のハリケーン(カトリーナ)の曲があり、ここだけ異色かな、とも思いますが。カテゴリー分けに困りますが、今回はあえてジャズ・カテゴリーからは外そうと思っています。たまにはこういう音楽も楽しいですね。


ファミリー&フレンズ~ランブリング・ボーイ/チャーリー・ヘイデン(B、Vo)(EmArcy)
Family & Friends - Rambling Boy/Charlie Haden(B, Vo)(EmArcy) - Recorded January 5-12, April 12, 14 and 26, 2008. Josh Haden(Vo), Rachel Haden(Vo)m Ptra Haden(Vo), Tanya Haden(Vo, Cello), Ruth Cameron(Vo), Jack Black(Vo), Pat Metheny(G), Bruce Honsby(Vo, P), Vince Gill(Vo), Dan Tyminski(Vo, Mandolin), Ricky Skaggs(Vo, G, Mandolin, Fretless Banjo), Jerry Douglas(Dobro), Bryan Sutton(G), Sam Bush(Mandolin), Stuart Duncan(Fiddle), Buddy Greene(Harmonica), Russ Barenberg(G, Mandolin), Bela Fleck(Banjo), Buck White(P), The Whites(Sharon & Cheryl)(Vo), Elvis Costello(Vo), Rosanne Cash(Vo), John Levebthal(G) - 1. Single Girl, Married Girl 2. Rambling Boy 3. 20/20 Vision 4. Wildwood Flower 5. Spiritual 6. Oh, Take Me Back 7. You Win Again 8. The Fields Of Athenry 9. Ocean Of Diamonds 10. He's Gone Away 11. A Voice From On High 12. Down By The Salley Gardens 13. Road Of Broken Hearts 14. Is This America? (Katrina 2005) 15. Tramp On The Street 16. Old Joe Clark 17. Seven Year Blues 18. Old Haden Family Show 1939 19. Oh, Shenandoah 20. The Fox Chase (Bonus Track)

ヴォーカル付きのカントリー、ブルーグラスの曲がほとんどで、ジャズ色なしのアルバムです。曲数もボーナストラックを含めて20曲も。ミュージシャンもナッシュビルのミュージシャンが大半で、録音もそことニューヨークとロスアンジェルスと3ヶ所。ベースもかなり気楽に余裕を持って奏でている感じ。チャーリー・ヘイデンの家族(親族?)も出演していて、ほのぼのとしたカントリー・ミュージックを聴くことができます。たまには気まぐれでこういうアルバムを作ってもいいのかも。その中でもパット・メセニーの参加曲が4、7-8、10、12、14、19曲目にありますが、彼のソロになるとパット色が出てくるのがうれしい。彼が作曲に絡むのは10、14曲目。でも、基本的にはカントリー・ミュージックとしてリラックスして聴くアルバムでは。(08年10月1日発売)

2008/11/11

Hidden Treasures/Gary Smulyan

Garyhidd
ゲイリー・スマリアンのこのアルバム、最初注文したのが6月末だったと思います。価格が安かったのでそのままにしておいたのですが、その後4ヶ月、待てど暮らせど入荷せず。キャンセルして、400円強高くなるけど、在庫のある国内の通販に申し込んだら、3連休を挟んでも5日で届きましたよ。バリトン・トリオのアルバムということで珍しく、彼の腕は確かと言うより、スゴいので、ぜひとも聴いてみたかったアルバムでした。でも、’05年録音のアルバムがもう入手しにくくなっているとは、やっぱりジャズの気になっているアルバムは、通販だったら新譜のうちに買えってことでしょうね。その新譜すら入手しにくくなっている場合があるのですが。


Hidden Treasures/Gary Smulyan(Bs)(Reservoir)(輸入盤) - Recorded June 23, 2005. Christian McBride(B), Billy Drummond(Ds) - 1. Straight In F 2. Eail Bait 3. Bud's Idea 4. A Woman Always Understands 5. House Of Chan 6. Omicron 7. A Rose For Wray 8. Off The Cuff 9. Jahbero 10. Fifth House

(08/11/11)全曲ジャズメン・オリジナルかスタンダード。しかもピアノレスのバリトン・サックスのトリオという珍しい編成。1、8、10曲目などアップテンポで、または他のややアップテンポのバリバリと吹きまくる曲もいいですが、半分ほどの曲はそういう速吹きでばかり聴かせるタイプの曲ではなく、バリトンならではのメロディを聴かせる曲が多いです。ただ、そういう場面でもスムーズにかなり速いフレーズが入って、しかも歌っていて、見事。印象に残る曲が多くて、さすがゲイリー・スマリアン、現在で屈指のバリトンの腕を持つ男です。スカスカな感じも全然しないですし、適度に他のパートのソロもあり、なかなかいい感じで最初から最後まで聴かせてくれます。4曲目のミディアムの曲は温かいし、7曲目のボッサもホッとする雰囲気。

2008/11/08

For Now And Forever/トヌー・ナイソー・トリオ

Tonufornow
毎月出ている澤野工房のアルバムも、1ヶ月以上遅れて紹介しています。やっと手持ちの国内盤で9月分が終了。10月はたまたま通販で揃ったものが多く、ドカッと送られてきたので、久しぶりにブログの更新頻度を高めたにも関わらず、追いついていない状況です(笑)。ブログに出さなければいいのでは、と思われるかもしれませんけど、これが生活習慣になっているので、いやはや何とも(笑)。トヌー・ナイソーは繊細なだけではなくて饒舌な部分も多く、割と好きなピアニストです。澤野工房は量産体制に入ってしまいましたが、まだ他レーベルとは一線を画しているようなところもあると思います。


For Now And Forever/トヌー・ナイソー(P)・トリオ(澤野工房)
For Now And Forever/Tonu Naissoo(P) Trio(Atelier Sawano AS082) - Recorded June 16 and 17, 2008. Taavo Remmel(B), Ahto Abner(Ds) - 1. Frank Mills 2. Rhythm-A-Ning 3. Along Came Betty 4. Yourself 5. Turning Point 6. Un Poco Loco 7. Little Waltz 8. The Sweetest Sounds 9. I Lobe You, Porgy

トヌー・ナイソー作は2曲(4-5曲目)。ヨーロッパ的ながら繊細な面と力強い面とがあり、多様な引き出しを持っている人。牧歌的で明るい8ビートのポップスのようなメロディアスな1曲目、セロニアス・モンクの曲をそれっぽいけどスマートかつスリリングに演奏していく2曲目、ちょっと渋めでややアップテンポの4ビートも健康的に聴こえる3曲目、ややゆったりした、浮遊感を伴うコード進行のポップス的な4曲目、煽り立てるようなそうでもないようなリズムに乗ってピアノが饒舌に語りかける変幻自在な5曲目、バド・パウエル作も彼流に軽がると演奏してしまう6曲目、静かで哀愁のある短調のワルツの7曲目、バリバリとピアノが語りかけてきてアップテンポがメインで進む8曲目、しっとりしたバラードを奏でつつ音数は多めの9曲目。(08年9月26日発売)

2008/11/06

サマー・スイート/藤井郷子オーケストラ・ニューヨーク

Fujiisummer
藤井郷子新譜聴き3日目で一段落。9月下旬には届いていたのだけれど、やっと聴くことができました。今回のアルバムはタイトル曲の「サマー・スイート」が39分もあってメインになるのですが、他のオーケストラ(ビッグバンド)のアルバムの曲よりもフリー度というか、抽象性が高い感じです。その分聴く人を選ぶかなあと思うのですが、元からこっち方面のサウンドが好きな人にとってみれば、けっこうドラマチックで面白いのでは、と思わせます。それにしても、彼女の関係の新譜、どんどん出てきますね。私もこっち系は好きな方なので、これからも追いかけてみようと思っています。でもマニアックだなあ。


サマー・スイート/藤井郷子(P)オーケストラ・ニューヨーク(Libra)
Summer Suite/Satoko Fujii(P) Orchestra New York(Libra) - Recorded September 28, 2007. Oscar Noriega(As), Briggan Krauss(As), Ellery Eskelin(Ts), Tony Malaby(Ts), Andy Laster(Bs), Natsuki Tamura(Tp), Herb Robertson(Tp), Steven Bernstein(Tp), Dave Ballow(Tp), Curtis Hasselbring(Tb), Joey Sellers(Tb), Joe Fiedler(Tb), Stomu Takeishi(B), Aaron Alexander(Ds) - 1. Summer Suite 2. Sanrei 3. In The Town You Don't See On The Map

ニューヨークのオーケストラでは7枚目。3曲とも藤井郷子作曲。1曲目のタイトル曲は何と39分。ベースはエレキベースで、構築された部分もあるけれど基本的には自由度の高い演奏。ファンク的な部分、時にアンサンブルの面白さ、そして各ミュージシャンの自由なソロなど、演奏者にまかせていながらドラマチック。タイトル曲もこれらが交互に、あるいは入り混じりつつ盛り上がったり静かになったりしてフリーに近いドラマを作り上げています。キメの(と思われる)部分や変化していくところがけっこう面白く、現代音楽のオケを聴いているような場面も。2-3曲目は再演曲。ややスローなファンクで重々しく流れ、中盤テンポが速まり盛り上がったり緩急自在な2曲目、変拍子のアンサンブルから発展してどんどん変わっていく3曲目。(08年9月25日発売)

2008/11/05

チュン/田村夏樹、藤井郷子

Tamurachun
藤井郷子新譜2日目。田村さんの方が先にクレジットされているのですが、作曲は全部藤井さんになっています。ここでのキーワードは無調的ということかな。でも、他のアルバムも、そういえばそうかな、と思う部分もあって、判断に迷うところです。でも、ここまで調性をなくして全曲アプローチをしているのも珍しいのでは、と思います。現代音楽的ジャズを聴いている雰囲気。それなのに、(私がフリージャズ関係を好きなせいもあるのかもしれませんが)すんなりと聴けてしまうところがスゴいところです。聴く人を選ぶかもしれないけれども、自分にとっては愛聴盤になりそうなアルバムです。

(追記)田村氏のコメントがCDについていたのですが、変拍子も多用しているそうです。なるほど。


チュン/田村夏樹(Tp)、藤井郷子(P)(Libra)
Chun/Natsuki Tamura(Tp), Satoko Fujii(P)(Libra) - Recorded July 2, 2008. - 1. Tokyo Rush Hour 2. Nudibranch 3. Infrared 4. Chun 5. Stone Flowers 6. Curt Response 7. Ultraviolet 8. Spiral Staircase 9. Triangle

全曲藤井郷子の作曲。無調的な展開が多く、相変わらずのシリアスなデュオ。無機的かつ緊張感のあるアップテンポのユニゾンからソロで盛り上がるスリリングな1曲目、影のさすメロディで静けさと対峙し、時に轟音の場面もある2曲目、ギャロンギャロンとこれぞフリー的な要素を多く持つ3曲目、飛び跳ねるようなメロディの跳躍と自由な演奏が駆けめぐるタイトル曲の4曲目、静寂の中に浮かんでは消えるトランペットが間と、時に鋭さを感じさせる5曲目、無調のような感じで静けさと盛り上がりが交互に訪れる6曲目、演奏というより効果音的な小品の7曲目、上がったり下がったりを繰り返しつつ速いフレーズが続く8曲目、21分台の日本的な情緒ある静かな演奏がしばらく続き、時に盛り上がってドラマチックに終わる9曲目。(08年9月25日発売)

2008/11/04

ヒートウェーブ/藤井郷子 ma-do

Fujiiheat
9月に藤井郷子関係のアルバムが3枚出ました。10月はブログの更新をあまりできなかったので、11月になってからの紹介になってしまいますけど、もっと早く紹介できればよかったかな。3枚とも趣向が違っていて、藤井ファン、フリーファンにはいい贈りものではないか、と思います。このアルバムはけっこう変幻自在的な部分が面白くて、静かだと思ったらファンク(変拍子含む)になったりフリーになったり。そのフリーも盛り上がる場面から、ソロでの展開になる部分など、曲の先が読めない面白さもあります。聴いて、へえー、なるほどなあ、となる面白さ。体験してみるのもいいかもですよ。


ヒートウェーブ/藤井郷子(P) ma-do(Libra)
Heat Wave/Satoko Fujii(P) ma-do(Libra) - Recorded April 12, 2008. Natsuki Tamura(Tp), Norikatsu Koreyasu(B), Akira Horikoshi(Ds) - 1. Heat Wave 2. Beyond The Horizon 3. Mosaic 4. Ring A Bell 5. Tornado 6. The Squall In The Sahara 7. Amoeba 8. Spiral Staircase 9. To The Skies

全曲藤井郷子の作曲。編成は普通のジャズバンド。でもスタイル的にはフリージャズの近くで 、けっこう緊張感があります。構築されたところもあるフリーとでもいうのか、ファンクと行き来してドラマチックでもあり、個々の場面で意外な展開をもたらす刺激的なバンド。1曲目のタイトル曲でもそうですが、緩急自在、盛り上がりの変化も大きい。日本的あるいは異国情緒があるかと思うと異空間に紛れ込み、ファンクビートがあるかと思うとフリーになだれ込む、あるいはソロが静寂から浮かび上がるなど、展開に目を離せません。その自在な変化はどの曲にも聴くことができますけど、それぞれの曲にカラーがあって、フリー方面が好きな方にはかなりカラフルに聴こえるのでは。その急展開も面白さになるマニアックなアルバム。(08年9月25日発売)

2008/11/03

ランディ・イン・ブラジル/ランディ・ブレッカー

Randybrasil
ランディ・ブレッカーのブラジルのミュージシャンとのアルバムが出ました。最初は渋いボッサを想像していたのですけど、やっぱりランディのこと、全体的に明るめなラテン・フュージョンのアルバムに仕上がってました。自作曲が少ないのも意外で、ラテン系の曲は詳しくないのですが、有名な作曲者の名前が並んでいるので、曲も聴いたことがあるものもあって、彼のラテンのベスト集、というようなイメージもあります。ミュージシャンは曲ごとに入れ替えが多いようですけど、見事にランディ色に染まっていると言うか。基本はラテン・フュージョンなので好き嫌いは分かれると思いますけど、個人的には割と好きなアルバムになりました。


ランディ・イン・ブラジル/ランディ・ブレッカー(Tp)(Victor)
Randy In Brasil/Randy Brecker(Tp)(Victor) - Released 2008. Teco Cardoso(Ss, As ,Ts, Bs, Fl), Ruria Duprat(P. Key, Clavinet, Voice), Paulo Calazans(P, Key), Andre Mehmari(P), Gilson Peranzetta(P), Ricardo Silveira(G), Sizao Machado(B), Rogero(B), DaLua(Per, TImba), Joao Parahyda(Per, Timba), Robertinho Silva(Ds), Edu Ribeiro(Ds) - 1. Pedro Brasil 2. Ile Aye 3. Guaruja 4. Me Leve 5. Malaisa 6. Sambop 7. Oriente 8. Maca 9. Olhos Puxados 10. Robento 11. Fazendo Hora 12. Aiaiai

ランディ・ブレッカーの作曲は2曲(3、6曲目)のみで、他はブラジルの作曲家の曲を演奏とメンバー作曲の11曲目。明るいラテン・フュージョンという感じですが曲によっでカラーは違います。ランディ以外は全部ブラジル人のようで、曲によってメンバーが替わります。曲はジャヴァン、ジルベルト・ジル、ジョアン・ボスコ、イヴァン・リンスの有名どころが多いです。フュージョンとは言っても、聴きやすいですがパーカッションがけっこう効いていて、やはりブラジルの味は出ているかもしれません。このノリノリの感じがいいのですが、フュージョン・タッチなので、好き嫌いは分かれるかもしれません。3曲目のオリジナルはやや淡い色のかかった渋めでほんの少しスローな曲、ノリノリの部分もあって難しそうなハーモニーで進む6曲目。(08年9月24日発売)

2008/11/02

Pathways/Luis Perdomo

1308
Criss Crossレーベル新譜聴き2日目。と言いつつ昨日紹介のアルバムは’91年録音だったので、本当の意味での新譜は今日、ということになります。早くもう1枚届かないかな、と思いつつ。ルイス・ペルドモという名前は、私はじめて知ったのですが、ジャズの友人達はサイド参加作などで知っていて、某所では割と知名度があるらしいです。ピアノの腕もけっこうスゴくて、都会的で知的なピアノを弾く人だな、と思いました。でも盛り上げるところはばっちり盛り上げるパワーもあります。トリオとしての表現も幅広いし、一体感もあって、聴いてけっこう満足度の高いアルバムでした。

(追記)実はルイス・ペルドモは「Brian Lynch Latin Jazz Sextet/Conclave」(1271)のCriss Cross盤に参加していることが判明、彼の演奏、初体験ではありませんでした。


Pathways/Luis Perdomo(P)(Criss Cross 1308)(輸入盤) - Recorded June 12, 2008. Hans Glawischnig(B), Eric McPherson(Ds) - 1. Speak Low 2. Unexpected 3. Shine 4. Fulia Chant 5. Almost Like Being In Love 6. Piensa En Mi 7. Chimanta 8. Baby Steps 9. Sunrise 10. Slap 11. Oblivion

(08/10/31)Luis Perdomo作ないしは共作は5曲(2-4、9-10曲目)。現代的で都会的なピアノを弾く人という印象。けっこうフレーズがカッコよいです。テーマがあとから出てくるアップテンポのスタンダードの1曲目、変幻自在なサウンドの変拍子で渋いけど勢いのある2曲目、ゆったりと牧歌的にはじまって自由に絡み合って進む3曲目、哀愁漂いつつも中盤盛り上がる8分の6拍子の4曲目、軽快に弾んでいくスタンダードの5曲目、しっとりとした味わいあるバラードの6曲目、静かにはじまってラテンタッチで盛り上がる7曲目、リズミカルに3人が絡み合うスリリングな8曲目、ベースとのデュオで静かに寄り添ったり暴れまわったりの9曲目、やや抑え気味ながら飛ばしていく10曲目、バド・パウエル作をソロで演奏する11曲目。

2008/11/01

Lightsey To Gradden/Kirk Lightsey

1306
9月23日発売のCriss Crossレーベル3枚のうち、2枚がやっと数日前に入ってきました。今年に入ってからこのレーベルの新譜の入荷状況が、だんだん悪くなってきます。注文が増えているのなら別ですが。このアルバム、今は亡きEddie Gladdenに捧げるアルバムのようで、録音も’91年と、このレーベルにしては珍しく旧録音です。ただ、’80年代以降は新しい手法も多いし、今でもこういうサウンド作りをする(新しさと従来の折衷的フレーズやサウンド)人も多いので、ブラインドだったらあまり新録音との区別はできないだろうなあ、と思います。渋めだけどジャズらしいところが多いアルバム。


Lightsey To Gradden/Kirk Lightsey(P)(Criss Cross 1306)(輸入盤) - Recorded January 3, 1991. Marcus Belgrave(Tp, Flh), Craig Handy(Ts, Fl), David Williams(B), Eddie Gladden(Ds) - 1. Donkey Dust 2. Number Nine 3. Everyday Politics 4. Wayne Shorter 5. Pinocchio 6. Moon 7. Working Together 8. Midnight Sun

(08/10/31)1曲目のみカーク・ライトシー作曲で、3曲目がCraig Handy作、他は6曲目や9曲目以外はあまり有名でないジャズメン・オリジナル。旧録音なのも最近のこのレーベルでは珍しい。抑えたテーマと、渋めのアドリブが印象的な中テンポのファンクビートの1曲目、フルートが軽やかに舞い、トランペットが鋭いアップテンポの4ビートの2曲目、メロディアスなテーマと弾むようなややアップテンポが軽快な3曲目、少し濃いサウンドもありつつ、8分の6拍子系のバラードでやや淡々とした4曲目、アップテンポでミステリアスな感じと勢いを感じるウェイン・ショーター作の5曲目、マーカスとのデュオでのバラードの6曲目、温かみのあるテーマの、適度なペースの4ビートの7曲目、フルートとのデュオで静かに締めくくる8曲目。

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