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2007年8月の記事

2007/08/31

Re: Pasolini/Stefano Battaglia

1998
ステファノ・バターリアは今回でECM2作目ですが、またもやCD2枚組。そして、1枚目と2枚目で参加メンバーを替えているところも同じパターン。1枚目が聴きやすいヨーロッパ調の映画音楽を聴かせているようなサウンドで、2枚目は割とハードなフリー・インプロヴィゼーションに近いサウンド。通常のレコード会社だったら1枚目のみを発売するだろうなあと思いつつ、そこはECMとしてのコダワリなんでしょうね。ただ、聴く人を選んでしまう2枚目も、15曲目のラストの曲だけは、哀愁度満点の映画音楽のようなサウンド。タイトル自体「Pasolini」ですけど。やっぱりECMだからこそこういう2枚組で出せるんだな、と妙に納得。


Re: Pasolini/Stefano Battaglia(P, Prepared P)(ECM 1998/99)(輸入盤) - Recorded April and July 2005. (CD1) Michael Gasmann(Tp), Mirco Mariottini(Cl), Aya Shimura(Cello), Salvatore Maiore(B), Roberto Dani (CD2) Dominique Pifarely(Vln), Vincent Courtois(Cello), Bruno Chevillon(B), Michele Rabbia(Per) - (CD1) 1. Canzone Di Laura Betti 2. Toto E Ninetto 3. Canto Popolare 4. Cosa Sono Le Nuvole 5. Fevrar 6. Il Sogno Di Una Cosa 7. Teorema 8. Callas 9. Pietra Lata (CD2) 1. Lyra 1 2. Lyra 2 3. Meditazione Orale 4. Lyra 3 5. Lyra 4 6. Scritti Corsari 7. Lyra 5 8. Epigrammi 9. Lyra 6 10. Setaccio 11. Lyra 7 12. Mimesis, Divina Mimesis 13. Lyra 8 14. Ostia 15. Pasolini

(07/06/03)1枚目の4曲目を除き全曲Stefano Battagliaの作曲。イタリアの映画監督のピエル・パオロ・パゾリーニがタイトルなので、その映画音楽集と思いましたが、オマージュとして捧げられている曲が多いです。イタリアの哀愁を深く含んだメロディの強い、ジャズ色のあまり濃くない、ゆったりした音楽が展開していて、沈みつつも夢見心地のサウンドが続きます。不安感を伴いながら漂う7曲目のような曲も。1枚目と2枚目は参加者が違っていて、雰囲気的には1枚目の方が映画音楽的、2枚目の方がフリー・インプロヴィゼーション的。2枚目はやや短めの曲が多く、「Lyra」というインプロヴィゼーション風の曲が8ヴァージョン、弦とのデュオまたはボトムなどとの演奏。ボトムの出番は後半が中心で、ラストの曲のみ哀愁強し。

Miles Davis At Fillmore

Milesfilmo
キース・ジャレットのマイルス参加作が4枚目にしてやっと一段落。今回は一連の4日間のコンサートの演奏なので、全面的に参加しています。オルガンでの参加というところがミソで、普通のオルガンとしてではなく、今のキーボード的な印象を持つような演奏です。サウンドやリズムに変化があると書いたけれど、当時よく聴いたベースラインの同じモチーフは、1、3-4曲目で聴くことができ、同じモチーフを引き出し的に使いながら、フリーの要素も交えて変幻自在なサウンドにもっていったのかもしれません。90分の演奏を20分台に編集して使用ということなので、元の演奏を聴いてみてみたい気もしますが。


Miles Davis(Tp) At Fillmore(Sony) - Recorded June 17-20, 1970. Steve Grossman(Ss), Chick Corea(Key), Keith Jarrett(Org), Dave Holland(B), Jack DeJohnette(Ds), Airto Moreira(Per) - 1. Wednesday Miles 2. Thursday Miles 3. Friday Miles 4. Saturday Miles

キース・ジャレットがオルガンで参加したライヴ。ドラムスとパーカッションのリズムが変幻自在かつ、迫力のある演奏で、今聴くとけっこうはまります。マイルスはマイルスですが、どこを切っても金太郎的要素は無く、 演奏ごとにサウンドやリズムの変化があります。デイヴ・ホランドはエレクトリック・ベース。曲名が曜日をとっていることからみても、一発勝負的なアドリブのライヴで、それが実際は毎日90分ぐらい続くところを、テープ編集によってそれぞれ20分台にしてアルバム発売の時にまとめたそうです。編集のせいかどうか、あまり重複したようなサウンドではなく、飽きずに楽しめますが、まだちょっと混沌とした部分もあるファンクとでも言うべきか。変わりつつあるマイルスの当時のライヴの局面を切り取ったアルバムです。

2007/08/30

Starflowers/Sinikka Langeland

1996
このアルバムはジャズというよりは民族音楽のヴォーカルもののジャンルではないかと思います。もちろん、バックには北欧のジャズメンがずらりと並んでいて、北欧ジャズ的なアプローチもありますが、どちらかというとヴォーカリストに寄り添った形での音作りの曲が多いと思います。それにしても個性的な女性ヴォーカリストと個性的なジャズミュージシャンの集まり。一種独特な言語の聴感とメロディ、それに彩りを添えているバックの音もECM的だし、時に静かな場面から浮かび上がるアグレッシヴな場面もあります。民族音楽ファンかECMの追っかけの人は、手に取るアルバムだとは思いますが。


Starflowers/Sinikka Langeland(Vo, Kantele)(ECM 1996)(輸入盤) - Recorded May 2006. Arve Henriksen(Tp), Trygve Seim(Ts, Ss), Anders Jormin(B), Markku Ounaskari(Per) - 1. Hostnatt Pa Fjellskogen 2. Den Lille Floyten 3. Solv 4. Treet Som Vekser Opp-ned 5. Saltstein 6. Sus I Myrull 7. Stov 8. Stjernestund 9. Langt Innpa Skoga 10. Det Er Ei Slik Natt 11. Vindtreet 12. Elghjertet 13. Har Du Lyttet Til Elvene Om Natta?

(07/06/24)Hans Borliの詩に、全曲Sinikka Langelandが曲をつけたもの。Kanteleはフィンランドの民族楽器で、ギターのかわりになる弦楽器。北欧の言葉に北欧の節回しのヴォーカルが民族音楽的で、歌うような語りかけるような曲が多め。周りを固めるミュージシャンもECMではおなじみの顔ぶれも多くて、時に尺八を聴いているようなサウンドも、これ、トランペットのはずだと思うなど、けっこう皆個性的。アグレッシヴなアプローチの場面も。伴奏は当地のフォークソングとしての時と、北欧ジャズのインプロヴィゼーションの時と。4-5、11-12曲目はパーカッション(ドラムス)も入って全楽器がバックアップにまわる、盛り上がり気味の曲。5曲目の素朴な味わいはいい感じ。8曲目はパーカッション・ソロが出だしで長く続きます。

Live-Evil/Miles Davis

Milesevil
今回のマイルス・デイヴィス盤は、録音時期こそ4通りあるものの、全部’70年の録音。それでも、録音の時期によってメンバーが変更されています。後半になってマイケル・ヘンダーソン(エレクトリック・ベース専門)を重視して、よりファンクの方向へ向かおうとしていたことが分かります。一発もの的ですが、この時代を考えると十分に先を行く音だったのではないかな、と思います。肝心の追いかけているキース・ジャレットなのですが、時にけっこうスゴい演奏を聴かせてくれますが、他のそれぞれのミュージシャンもかなりエキサイティングな演奏をしているので、やっぱりこのあたりのアルバムは個々のミュージシャンよりも全体のサウンドで楽しむべきかな、とも思いました。


Live-Evil/Miles Davis(Tp)(Sony) - Recorded February 6, June 3 and 7, December 18, 1970. (3曲目, Recorded February 6, 1970) Wayne Shorter(Ss), Chick Corea(Key), Joe Zawinul(Key), John McLaughlin(G), Khalil Balakrishna(Sital), Dave Holland(B), Billy Cobham(Ds), Jack DeJohnette(Ds), Airto Moreira(Per), (5-6曲目, Recorded June 3, 1970) Steve Grossman(Ss), Herbie Hancock(Key), Keith Jarrett(Key), Chick Corea(Key), Ron Carter(B), Jack DeJohnette(Ds), Airto Moreira(Per), Hermeto Pascoal(Voice), (2曲目, Recorded June 7, 1970) Steve Grassman(Ss), Hermeto Pascoal(P), Herbie Hancock(P), Keith Jarrett(P), Chick Corea(P), Jon McLaughlin(G), Dave Holland(B), Jack DeJohnette(Ds), Airto Moreira(Per), (1、4、7-8曲目, Recorded December 18, 1970)Gary Bartz(As, Ss), Keith Jarrett(Key), John McLaughlin(G), Michael Henderson(B), Jack DeJohnette(Ds), Airto Moreira(Per) - 1. Sivad 2. Little Church 3. Medley: Gemini/Double Image 4. What I Say 5. Nem Um Talvez 6. Selim 7. Funky Tonk 8. Inamorata And Naration By Conrad Roberts

全部’70年の録音ですが、録音時期が4通りあるので、曲によってメンバーが違い、チック・コリアは2-3、5-6曲目に、ハービー・ハンコックは2、5-6曲目に、キース・ジャレットは1-2、4-8曲目に、デイヴ・ホランドは2-3曲目に、ジャック・ディジョネットは全曲に参加。’70年という時代を考えると、よくここまで新しいアイデアが涌き出るものだと思います。ビートがきいていて、しかもパーカッションの音が心地よい4曲目など、後のクロスオーヴァー、フュージョンにつながっていくサウンドです。2、5-6曲目は、比較的静かな短い曲。逆に4、7-8曲目はどれも20分を超える大作で、エレクトリック・ベース専門のマイケル・ヘンダーソンを起用して、この時代にはよりファンクの方向へ向かおうとしていたことが分かります。

2007/08/29

A Long Story/Anat Fort

1994
このレーベル、最近はベテランばかりを出すとの評判ですが、今日はECMでは初リーダー作のピアニストのアルバム。とはいいつつも、脇はベテランでかためているようなところもありますが。やっぱりこのレーベル特有の、冷たいながらも鋭いフリー・インプロヴィゼーションがあるような部分もありますけれど、温度感はそのままに、優しいメロディの部分もあったりして、女性ピアニストならではの優しさをのぞかせているところもありますね。ポール・モチアンがドラムスで入っていますが、この人、入っているんだかどうだか分からないような場面もあったりして。でも、これも、味といえば味ですね。


A Long Story/Anat Fort(P)(ECM 1994)(輸入盤) - Recorded March 2004. Perry Robinson(Cl, Ocarina), Ed Schuller(B), Paul Motian(Ds) - 1. Just Now, Var. 1 2. Morning: Good 3. Lullaby 4. Chapter Two 5. Just Now, Var. 2 6. Not A Dream? 7. Rehaired 8. As Two/Something 'Bout Camels 9. Not The Perfect Storm 10. Chapter One 11. Just Now, Var. 3

(07/03/09)4曲目がクラリネットとのインプロヴィゼーションの他は、全曲Anat Fortの作曲。やはり温度感の低いちょっとピリッとしたヨーロッパジャズです。1、5、11曲目は同じメロディをモチーフにした哀愁のあるヴァリエーションか。クラシック的というかバロック音楽的でヨーロッパジャズも加わり面白い感触。明るい日曜日の朝の雰囲気のような、そして少し内省的な2曲目、やや明るめながらまったりした感じもある優しいメロディの3曲目、薄暮のような浮遊感のあるサウンドで自由に進行する6曲目、メカニカルな動きもありスピード感もあってスリリングな7曲目、哀愁のメロディと起伏があり、時にフリーで暴れまわる8曲目、スピリチュアルで荘厳な雰囲気を持つ9曲目、ピアノ・ソロで冷たい入り組んだ世界に入る10曲目。 (07年4月25日発売)

Directions/Miles Davis

Milesdirec マイルス・デイヴィスの公式アルバム集といっても、リアルタイムに出たものと、今日紹介するような、後から曲をまとめて出したものとあって、ミュージシャン別に紹介すると同一アルバムでも録音年に隔たりがあって、どう紹介したものかと悩むアルバムでもあります。個人的に一番好きなのは’60年代半ばの黄金のクインテット時代ですが、その最後の方の記録が5-6曲目で聴くことができます。ただ、今日はキース・ジャレットを追いかけていての紹介なので、彼は’70年に入ってからの11曲目ただ1曲に参加しているだけなんですよね。これを機会に、ホームページで特集を組んでいるミュージシャンごとに違ったコメントを書いていたのを集めて統一しましたが、2枚組だし出演ミュージシャンが複雑に入り組んでいるので、内容までは言及できませんでした。

 

Directions/Miles Davis(Tp)(Sony) - Recorded 1960-1970. (4曲目の録音日とパーソネル)Recorded May 9, 1967. Wayne Shorter(Ts), Herbie Hankock(P), Buster Williams(B), Tony Williams, ( 5-6曲目の録音日とパーソネル)Recorded December 28, 1967 and January 11, 1968. Wayne Shorter(Ts), Herbie Hankock(P), Ron Carter(B), Tony Williams(Ds), (7-9曲目の録音日とパーソネル)Recorded November 27, 1968. Joe Zawinul(P), Jack DeJohnette(Ds), Wayne Shorter(Ts), Herbie Hancock(Key), Chick Corea(Key), Dave Holland(B), (10曲目の録音日とパーソネル)Recorded February 17, 1970. Bennie Maupin(Bcl), Dave Holland(B), John McLaughlin(G), Billy Cobham(Ds), (11曲目の録音日とパーソネル)Recorded May 21, 1970. Airto Moreira(Per), John McLaughlin(G), Keith Jarrett(Key), (12曲目の録音日とパーソネル)Recorded February 27, 1970. Jack DeJohnette(Ds), Dave Holland(B), John McLaughlin(G), Steve Grossman(Ss) - 1. Song Of Our Country 2. 'Round Midnight 3. So Near, So Far 4. Limbo 5. Water On The Pond 6. Fun 7. Directions 1 8. Directions 2 9. Ascent 10. Duran 11. Konda 12. Willie Nelson

’60年から70年にかけての未発表曲集。マイルス・デイヴィスは一ヶ所にとどまらないでずっと進化していました。トランペットはマイルス・デイヴィスそのものですが、サウンドはいつも違っていて、’60年代半ばの黄金のクインテットだけではないことを改めて感じます。トニー・ウィリアムスは4-6曲目に、ハービー・ハンコックは4-9曲目に、デイヴ・ホランドは7-10、12曲目に、ジャック・ディジョネットは7-9、12曲目に、11曲目はキース・ジャレットが参加 。最初の3曲は’60-63年の録音ですが、4曲目以降は’67年以降なので、このあたりの時代はアコースティックの最後の時代からあと、ということになります。未発表曲集とは思えない出来ですが、どんどん変遷していく10年間のサウンドを確かめることができます。

2007/08/28

The Third Quartet/John Abercrombie

1993
ジョン・アバークロンビーの新作は、同じメンバーで3作目になりました。繊細で深い色調の、ジャズというよりはこれこそがECMの音楽という雰囲気で流れていきます。メンバーもベテラン勢で揃えてますので脆そうながらも安定したバランスの演奏。もちろんバリバリの4ビートでジャズメン・オリジナルの7曲目もありますよ。でも、やっぱりこのメンバーでは静かな場面に耳を傾けたいと思います。こういうサウンドって、他のミュージシャンでは意外に出せないものじゃないかなあ、と思ってます。クセはありますけれど、いわゆるECM好きにとっては割とオーソドックスかも。こういう世界も、なかなか良いと思います。このグループに限らず、ECMはテンポのない、あるいはゆるい曲も得意です。


The Third Quartet/John Abercrombie(G)(ECM 1993)(輸入盤) - Recorded June 2006. Mark Ferdman(Vln), Marc Johnson(B), Joey Baron(Ds) - 1. Banshee 2. Number 9 3. Vingt Six 4. Wishing Bell 5. Bred 6. Tres 7. Round Trip 8. Epilogue 9. Elvin 10. Fine

(04/04/14)7曲目がオーネット・コールマン作、8曲目がビル・エヴァンス作曲の他はJohn Abercrombieの作曲。このメンバーでの3作目。耽美的で危なげな一体感。フリーになりそうでエキゾチックなメロディが淡々としている1曲目、ゆっくりしたテンポで、静かなメロディが語りかける2曲目、繊細な旋律のやり取りが絶妙なタイミングの3曲目、やや陽性から中間色にかけての流れるようなジャズの4曲目、淡いメロディの漂いのまま盛り上がりのある5曲目、マイナーでホンワカ系から8分の6拍子のシャープな方向に行く6曲目、これはもうバリバリの4ビートでの7曲目、静かでちょっと東洋的な味も垣間見えるバラードの8曲目、色調はそのままにミディアムの4ビートで攻める9曲目、アコースティック・ギターの多重録音の10曲目。

Get Up With It/Miles Davis

Milesgetup
ミュージシャン別の特集において、この時期のマイルス・デイヴィスのアルバムのコメントをすることは難しいです。特に、自分のホームページの特集ミュージシャンが参加している曲が全曲ではなくて、さまざまな時期に録音されたアルバムなので、その中の1曲か2曲に参加している場合など、マイルスのアルバムの全貌をコメントするにはもっと字数と聴き込みが必要だし、難しい。そういうわけで割り切って、ミュージシャンの参加している曲だけのコメントで済ませてしまおうと思ってますが、これまた曲のイメージをとらえきれているかどうか。いつの時代にもマイルスは奥が深い、ということなんでしょうね。


Get Up With It/Miles Davis(Tp)(Sony) - Recorded May 1970 - June 1974. (3曲目のパーソネル、Recorded May 19, 1970)Keith Jarrett(Key), Airto Moreira(Per), Steve Grossman(Ss), William Cobham(Ds), Michael Henderson(B), John McLaughlin(G), Herbie Hancock(Key), (1曲目のパーソネル、Recorded May 1974)Reggie Lucas(G), Mtume(Per), David Liebman(Fl), Michael Henderson(B), Al Foster(Ds), Pete Cosey(G), Dominique Gaumont(G), (5曲目のパーソネル、Recorded September 1973), Pete Cosey(G), Al Foster(Ds), Michael Henderson(B), David Liebman(Fl), Reggie Lucus(G), Mtume(Per), John Stubblefield(Sax) - 1. He Lobed Him Madly 2. Maiysha 3. Honky Tonk 4. Rated X 5. Calypso Frelimo 6. Red China Blues 7. Mtume 8. Billy Preston

’70年から74年にかけての録音を後から集めて発表したアルバム。’70年5月19録音の3曲目のみにキースジャレットは参加。ハービー・ハンコックとキーボードで共演していますが、どの音がキース・ジャレットか分かりませんでした。もっともこの時期のマイルス・デイビスのアルバムは参加メンバーで聴くよりも、アルバム全体として聴いたほうがいいのかも。’74年5月録音の1曲目に デイヴ・リーブマンはフルートで参加。比較的静かな曲ですが32分の大作です。フルートもゆったりと後半ソロが流れています。リズムの影響か、混沌としたサウンドの印象があるのですが、それでもひきつけられるものがあります。マイルスマジックなのでしょうか。また、’73年9月録音の5曲目にもフルートで参加。やはり当時のサウンド。

2007/08/27

Time And Time Again/Paul Motian

1992 もうずっと、断続的に続いているポール・モチアン・トリオの作品。相手がビル・フリゼールとジョー・ロヴァーノなので、昔ならともかく、今ではなかなかこういう顔合わせ、出来ないと思います。ただ、私は好きなのですが、ベースレスですし、浮遊感の漂うゆったりしたサウンドが、時に緊張感がありながらも、どこまでも続いていく、というパターンなので、好き嫌いはけっこう分かれるかもですね。このメンバーで聴けるだけ良しと思うか、派手さに欠けると思うかは、やっぱり聴いてみないと。でも、いわゆるジャズのサウンドやビートとは対極に位置することは間違いありません。

 

Time And Time Again/Paul Motian(Ds)(ECM 1992)(輸入盤) - Recorded May 2006. Joe Lovano(Ts), Bill Frisell(G) - 1. Cambodia 2. Wednesday 3. Onetwo 4. Whirlpool 5. In Remembrance Of Things Past 6. K.T. 7. This Nearly Was Mine 8. Party Line 9. Light Blue 10. Time And Time Again

(07/03/10)7-9曲目以外はPaul Motianの作曲。相変わらずこの3人のゆったりとした手馴れたフワフワ感は唯一無二のもの。ひっそりと、それでいてどことなく東洋的な感触のある1曲目、まろやかな味で昼間の暖かさを演出するような2曲目、ちょっと緊張感をはらんだやり取りになってアヴァンギャルドな雰囲気の3曲目、ちょっと哀愁を醸し出しつつ寄り添いながら進む4曲目、エキゾチックな響きが全編にわたって繰り広げられる5曲目、アメリカのカントリー的な素朴さが、曲の大らかさにつながっている6曲目、唯一のスタンダードを淡々とこなしていく感じの7曲目、ジョー・ロヴァーノ作で入り組んだ迷路に入り込んでいく8曲目、セロニアス・モンク作でとぼけた雰囲気がある9曲目、フワフワ感も頂点のタイトル曲の10曲目。 (07年3月21日発売)

Live-Roaring Colors/NEXT ORDER

Nextlive
前作「LIVE-POWERED NEXUS」の時は、インディーズとしての紹介でした。今度はBOMBAレコードから出るということで、一般の商業アルバムと同じフォーマットでの紹介になります。そうするとコメントの字数を詰めなければならず、うまく伝わるかどうか、という点がありますが、珍しい日本でのハードコア・フュージョン・バンドなので、それだけでもその方面が好きな人は聴いてみる価値があると思います。少しラフな部分もありますけれど、その方がライヴの勢いを伝えていて面白いし、何よりもどこのバンドとも似ていない個性がいいですね。前作に比べるとちょっとおとなしめになったかなという気もするし、それだけ成熟したのかな、という気もするし。9月23日発売予定なので、お楽しみに。


Live-Roaring Colors/NEXT ORDER(Order Tone Music/Bomba) - Recorded January 2007. 武藤祐志(G)、清野拓巳(G)、石垣篤友(B)、松田”GORI”広士(Ds) - 1. Gepetto 2. B-612 3. Desert Yellow 4. Blue Moon 5. Another Day 6. Synapse 7. Simply "Red" 8. Prelude To...

ライヴ音源で、ハード・フュージョンのアブストラクトな勢いと臨場感。2人のギタリストも対照的なサウンドで個性的。変拍子のキメのテーマや静かからハードな場面まで、ダイナミックレンジの広いドラマチックなファンクの1曲目、やや内省的で淡いメロディが印象的な、5拍子基調で後半盛り上がる2曲目、重量感があってエキゾチック、スペイシーでフリーなソロの場面も長めの3曲目、しっとりとしたサウンドで語りかけるように進行する4曲目、6拍子系のファンクでおとなしめのビートの上をギターが飛翔しつつ盛り上がる5曲目、ドッシリとしたリズムから小刻み系と交互に変化してソロもあり、目まぐるしくサウンドが変わる6曲目、浮遊感があって徐々に盛り上がる13分台のバラードの7曲目、ペンタトニックを面白く組み合わせた8曲目。(07年9月23日発売予定)

2007/08/26

Ojos Negros/Dino Saluzzi/Anja Lechner

1991 今日はバンドネオンとチェロのデュオの作品の紹介です。ちょっと4ビートジャズからは離れた世界だし、チェリストの方はクラシックの方のようでもあるしで、ジャズのアルバムとして紹介するには腰が引けてしまうのですが、個人的にはインプロヴィゼーション(もっと説明を加えると、広義の意味でのアドリブ)があればジャズと認めていいと思っているので、これも入れていいでしょう、となります。寒色系の沈んだサウンドが続くので、BGMには不向きだろうなあと思うのですが、聴いていると不思議と心の中にしみこんでくるものがあります。どちらかと言えば、クラシックの鑑賞に近いような感じです。「ゆったり」「ゆっくり」がコメントに何度も出てくるのでちょっと陳腐ですが、これがピッタリ来るのかと。

 

Ojos Negros/Dino Saluzzi(Bandoneon)/Anja Lechner(Cello)(ECM 1991)(輸入盤) - Recorded April 2006. - 1. Tango A Mi Padre 2. Minguito 3. Esquina 4. Duetto 5. Ojos Negros 6. El Titere 7. Carretas 8. Serenata

(07/04/14)タイトル曲の5曲目以外はディノ・サルーシの作曲。チェロとのデュオで、地味だけれどなかなか渋い世界が現出しています。タンゴとは言いながら、リズム楽器がないため、その切ない哀愁のメロディが強調されてせまってくる1曲目、ゆったりホンワカとした旋律から現代音楽のようなフレーズも混ざる色調が変化する2曲目、ゆったりとした川の流れのように、時にややリズミカルに進んでいく3曲目、沈んだ寒色系のサウンドがゆっくりと語りかけてくる4曲目、何となく伝統的なタンゴの部分も残されているように感じる、やや淡い5曲目、クラシックのようにきちっとして、ちょっと静かに進んでいく6曲目、綾織り系の渋い沈んだハーモニーが心に響くゆったりした7曲目、落ち着きと、デュオの割に厚い雰囲気のある8曲目。 (07年4月25日発売 邦題「黒い瞳」)

 

Sky Dive/Freddie Hubbard

Freddiesky
キース・ジャレットの共演・参加作というのはあまり多くないのですが、デビューしたての頃のチャールス・ロイド・クァルテットの時期のアルバム、全部聴きもらしているのがちょっともったいないかなあ、と思います。今から聴きなおすのもなんですし。’70年代に入ると、全面的なサイド参加作品は激減します。その数少ない中で、珍しくCTIレーベルに2枚あり、その中の1枚が私が持っているこのアルバムです。もう1枚は「フリー/アイアート・モレイラ(Per)」’72年録音。美しいフレーズももちろんですが、アヴァンギャルドなフレーズも時おり今回は聴くことがありました。いずれにしても、珍しいと言えば珍しい参加です。


Sky Dive/Freddie Hubbard(Tp)(CTI) - Recorded October 1972. Don Sebesky(Arr), Hubert Laws(Fl), Keith Jarrett(P, Key), George Benson(G), Ron Carter(B), Billy Cobham(Ds), etc. - 1. Povo 2. In A Mist 3. The Godfather 4. Sky Dive

1、4曲目はフレディ・ハバードの作曲。キース・ジャレット参加が意外かも。曲の趣向はさまざまですが、美しいピアノのフレーズやバッキングが出てくることも多く、CTIならではのブラス・セクションがつく豪華なアルバム。一発ものに近いミディアムの8ビート的なジャズ・ロック的なファンクと渋いメロディのテーマが、どこか懐かしさを感じる、もちろんフレディ他のソロも聴きどころの12分台の1曲目、ビックス・バイダーベック作を、やや現代っぽく、しかも叙情的に演奏する、バラードからアップテンポの4ビートになる2曲目、ニーノ・ロータ作曲の映画「ゴッドファーザー」を哀愁満点に全員が寄り添うような形で演奏する3曲目、小刻みなビート(ボッサのタッチ?)で淡く明るめの、盛り上がるところは盛り上がるタイトル曲の4曲目。

2007/08/25

Closeness/Charlie Haden

Charlieclo
キース・ジャレットの共演・参加作品コメント手直し2日目。チャーリー・ヘイデンというと、デュオのアルバムを多く作っていますが、その最初期にあたるデュオアルバムかなと思います。ハンプトン・ホーズとのデュオ作品がこの前後1月に録音されていますけれども。全部のヘイデン参加のアルバムを聴いているわけではないですが、このあたりがデュオのはじめと言うことができるんではないでしょうか。通常のベースからすると粘り気があって、かなり異端のベーシストではありますが、けっこう好きなんですよね。やっぱりジャズはテクニックよりも個性とか味が大切だな、と思います。


Closeness/Charlie Haden(B)(A & M) - Recorded January 26, March 18 and 21, 1976. Keith Jarrett(P), Ornette Coleman(As), Alice Coltrane(Harp), Paul Motian(Per) - 1. Ellen David 2. O.C. 3. For Turiya 4. For A Free Portugal

全曲チャーリー・ヘイデンの作曲。4人を相手にそれぞれ1曲ずつデュオで勝負しています。4人が4人とも個性があって、ビッグ・ネームでもあるし存在感があります。1曲目はキース・ジャレットとのデュオで、スペイシーな空間の中を比較的自由なゆったりとしたテンポでメロディが流れていく、美しいバラードの曲。2曲目はオーネット・コールマンとアップテンポで、まさに彼のフリーな世界を飛翔するようにサウンドを切り裂いていきます。3曲目、アリス・コルトレーンはハープを使用しても、エキゾチックでもあり、ヘイデンのもったりしたベースとで、なかなか独創的で美しいバラードになっています。4曲目はなんとポール・モチアン(Per)とチャーリー・ヘイデンのデュオ。多重録音で歌声や銃声が録音されていて、変化に富んでいます。

The Carnegie Hall Concert/Keith Jarrett

1989 ジャズファンというよりは、ピアノファン、いやキース・ジャレットのファンというのが幅広く存在する稀有なピアニストの、カーネギーホールでのコンサート。素晴らしいと思うと同時に、CDではあまりのめりこめない自分がもどかしく、ライヴの特にアンコールで2-3分にもわたって鳴り止まぬ拍手と歓声に、やはりそういう観客の境地に達するには現場にいなければダメだなあ、と思ったりもしました。やはりアンコールの拍手などを縮めずに収録して臨場感を出すにはDVDなどヴィジュアル系の方がよいんじゃないか、とも。自分の中ではこのアルバム、かなり評価は高いのですが、せめてCDではアンコールの間の場面、編集を加えてほしかったかなあ、とも思います。「マイ・ソング」は目玉なんですが、ちょっとヨーロピアン・クァルテットに比べて淡々としているなあ、という印象。確かに、コンサートの現場がスゴかったのは、録音から分かります。現場に立ち会いたかった(と言ってもアメリカですか)自分に少々後悔。

 

The Carnegie Hall Concert/Keith Jarrett(P)(ECM 1989/90) - Recorded September 26, 2005. - 1. Part 1 2. Part 2 3. Part 3 4. Part 4 5. Part 5 6. Part 6 7. Part 7 8. Part 8 9. Part 9 10. Part 10 11. The Good America 12. Paint My Heart Red 13. My Song 14. True Blues 15. Time On My Hands

最初の10曲が本編、5曲がアンコールという構成で、スタンダードはラストの曲のみ。短めの曲が多くなったけれど、それは長大な道のりの小休止ととらえた方がいい感じのドラマチックな盛り上がり方。やはりクラシック・現代音楽の影響も無視できない奏法かなと思います。深化してきたと共に、一見さんをはね返すような親しみやすさを排除している部分もある本編。出だしが特にその傾向は強いです。ただ曲を短くした事でコード一発や、クラシック的、フリー的、叙情的、カントリー的な表現への切り替えがうまくいき、うねりながら本編を進んで行き、アンコールへと橋渡しをします。鳴り止まぬ拍手と歓声。その後に淡々と、時に情感的に演奏する姿。13曲目の「マイ・ソング」がやはり白眉か。ライヴならではの盛り上がり。(06年9月29日発売)

2007/08/24

「Handel: Recorder Sonatas」「Johann Sebastian Bach: Sonatas, BWV1030-1035」 by Michala Petri/Keith Jarrett

Keithhandel
Keithbach
RCAから出た、キース・ジャレットのリコーダーとのデュオのバロック作品2枚。今日から彼の共演・参加作品へ行こうかと思います。ただ、彼はやはり孤高の人。共演・参加作品は演奏歴が長い割にはほとんどありません。こういうジャズ(彼の場合はクラシックも弾きますが)のミュージシャンは珍しいのではないのかな、と思います。そんな中で、リコーダーとのデュオ作品を’90年代になって2枚も作ったので、よほど共演者のミカラ・ペトリと相性が良かったのではないかと想像させます。いい演奏だな、ということは分かります。


Handel: Recorder Sonatas/Michala Petri(Recorder)/Keith Jarrett(Harpsichord)(RCA) - Recorded June 1-3, 1990. - 1-4. Sonata In G Minor, Op1, No.2 5-8. Sonata In A Minor, Op1, No.4 9-13. Sonata In C, Op1, No.7, 14-16. Sonata In F, Op1, No.11 17-19. Sonata In B-Flat, HWV377 20-26. Sonata In D Minor, HWV367a

クラ シック・バロック作品。邦題「ヘンデル:リコーダー・ソナタ集」。ヘンデルは18世紀の、ドイツ生まれでイギリスに帰化した作曲家。このアルバムはRCAから出ていますが、プロデュースは、ECMのマンフレート・アイヒャーです。リコーダーとチェンバロのデュオは安らぎを覚えます。 哀愁の加減と分かりやすさは、やはりこの時期のバロック音楽だと思います。もういくつもクラシックを録音しているキースは安定感がかなりあると思います。


Johann Sebastian Bach: Sonatas, BWV1030-1035/Michala Petri(Recorder)/Keith Jarrett(Harpsichord)(RCA) - Recorded February 28-29, 1992. - 1-4. Sonata, BWV1030 5-7. Sonata, BWV1031 8-10. Sonata, BWV1032 11-14. Sonata. BWV1033 15-18. Sonata, BWV1034 19-22. Sonata, BWV1035

同じくクラシック・バロック作品。邦題「J.S.バッハ:リコーダー・ソナタ集」。今度はバッハの曲をデュオで演奏しています。 バッハは18世紀ドイツの有名な作曲家。バロックといえばバッハというくらいに、自分の中では何を聴いてもいい、と思ってしまいますが。リコーダーの湿り気を含んだ木の音と、ハープシコードのサウンドが溶け合い、哀愁のあるサウンドに仕上がっています。包み込むように流れていく、印象的なメロディが魅力です。

On The Wing/Stephan Micus

1987 ステファン・ミクスは、つい先日、ECMレーベルの傍系レーベル、JAPOレーベルにもいくつか作品を残しているのでまとめ聴きをしたことがあるのですが、1枚ごとに演奏する楽器の比重や、方向性などを変えつつも、基本は無国籍的民族音楽系のヒーリング・ミュージックだと思います。なぜこういう彼の音楽をECMからたくさん出しているのか分かりませんが、欧米ではこういう音楽の需要って多いのかな、ということを連想させます。これだけポッとだして、日本では数は出ないだろうなあと思います。だから国内盤としては出ないのでしょうけれど。これまたいわゆるジャズ色は一切なし。

 

On The Wing/Stephan Micus(All Instruments)(ECM 1987)(輸入盤) - Recorded 2003 - 2006. - 1. On The Wing 2. Winterlight 3. Gazelle 4. Blossoms In The Wind 5. The Bride 6. Ancient Trees 7. In The Dancing Snow 8. The Gate 9. Turquoise Fields 10. Morning Sky

(06/11/02)相変わらず民族楽器を中心に、1人多重録音の世界(楽器はSatta, Mudbedsh, Classical Guitar, Nay Sho, Hne Suling, Tibetans Cymbals, Korean Gong, Burmese Gong, Hang, 14-string Guitar, Steel String Guitar, Shakuhachi, Sitar)。いろいろな楽器が混ざっているので、無国籍的な民族音楽というのは相変わらずです。シンプルな楽器編成で小品的な素朴な味わいの曲もあれば、5-6曲目のように、ややサウンドに厚みがあって、壮大とまではいかないにしても、大きな音世界だなあ、と思わせる曲もあったりします。8曲目のみはシタールのソロで、それでも4分続きます。大半はゆったりとしていて、少しエキゾチックな流れていくようなサウンドが続きます。ジャズ色は全くなく、これぞヒーリングの世界でしょうか。

2007/08/23

Vladimir Godar/Mater

1985
ウラジミール・ゴダール作品は、他からのライセンスでの発売のようです。でもECMっぽい音ですね。


Vladimir Godar/Mater(ECM New Series 1985)(輸入盤) - Recorded September 2005. Iva Bittova(Voice), Milos Valent(Vln, Viola), Bratislava Conservatory Choir, Dusan Bill(Choir Master), Slamente Naturali, Marek Stryncl(Cond) - 1. Maykomashmalon 2. Magnificat 3. Uspavanky 4. Ecce Puer 5. Stala Matka 6. Regina Coeli 7. Maykomashmalon

(06/11/21)邦題は「マテル-聖母-」。Vladimir Godarは20-21世紀のスロヴァキアの現代音楽家。宗教的な題材をとっていて、録音場所も教会ということで、厳かな歌が続きます。宗教的な題材で癒されると書くのは間違いなのかもしれませんが、まさにそんな雰囲気も。ただ、温度感はわずかに温かめなのかも。1、7曲目は同じ曲でヴァージョン違い、しかもこの曲のみ3人(ヴォイス、弦楽器2人)。しかしこのレーベルらしい静けさも。(06年12月20日発売)

Byablue/Keith Jarrett

Keithbyabl
キース・ジャレットのアルバムコメント手直し聴き9日目。これにて、リーダー作は終了。やっぱりECMの「ケルン・コンサート」だけではなくて、彼を認識するには、デビュー作の方から追っかけて、特に’70年代の、ECMでのソロ、アメリカン・クァルテット、そして今回は出なかったけれどもヨーロピアン・クァルテットの同時進行ぶりなど、全部を体験しなければ、なかなか全貌は見えてこないな、と思いました。フリーからの影響も、ドシャメシャのフリーよりはオーネット・コールマンからの影響を強く感じたし、民族音楽的な要素も無視できません。今回のアルバムはポール・モチアン作が多かったですが、メンバーとして長いこと一緒なので、一体感はありました。


Byablue/Keith Jarrett(P, Ss, Per)(Impulse) - Recorded October 1976. Dewey Redman(Ts, Mussette), Charlie Haden(B), Paul Motian(Ds, Per) - 1. Byablue 2. Konya 3. Rainbow 4. Trieste 5. Fantasm 6. Yahllah 7. Byablue

ECMとImpulseの両方にこの時期はアメリカン・クァルテットの録音があります。ミキシングの関係か、こちらのほうがどっしりした感じ。流れるような曲ばかりで、4ビートはありません。キース・ジャレット作は2曲目のみで、3曲目は奥さんのマーゴット・ジャレットの作曲、他はポール・モチアン作。モチーフ的なテーマとフリーの進行で皆バラバラに進んでいく感じの1曲目、それをソロ・ピアノで静かに演奏している7曲目、サックスが2人で荘厳な明け方の風景を切り取ったような静かな2曲目、トリオで優雅にメロディアスに、ジャズっぽく進行する3曲目、重厚な感じで、ソロ楽器が自由に飛翔しつつゆったりと進んでいく4曲目、ドラムス抜きで無機的なメロディを持つ商品の5曲目、民族音楽的なエキゾチックさを持っている6曲目。

2007/08/22

Mysteries/Keith Jarrett

Keithnyste
キース・ジャレットのアルバムコメント手直し聴き8日目。今日のアルバムも、あまり派手な感じはしないけれど、4曲が4曲とも個性的で他のメンバーでは出せない味わいがあるので、なかなかいいなあ、と思ってしまいます。1曲目のアップテンポになったときにホンの少し4ビートは出てきますが、あとは非4ビートの異世界をさまようことになります。でも、このめんばーだとそこがいいんだよね、と思ってみたり。特にここではタイトル曲の4曲目。おそらくフリーに近い形でテンポもアメーバ状に寄り添いながら演奏しているんだろうと思うのですが、味わいもあるし、いい具合に4人のバランスの良いバラードが記録されています。


Mysteries/Keith Jarrett(P, Wood Fl, Per, etc.)(Impulse) - Recorded 1975. Dewey Redman(Ts, Chinese Musette, etc), Charlie Haden(B), Paul Motian(Ds, Per), Guilherme Franco(Per) - 1. Rotation 2. Everything That Lives Laments 3. Flame 4. Mysteries

4曲ともキース・ジャレットの作曲。フリーっぽいアプローチの曲や民族音楽的アプローチの曲もあります。カッコよいテーマが用意されているのだけれども、メンバーの関係か、シャープさではなくてアメーバのようなフレキシビリティも持っている、各ソロがスピーディーでフリーっぽい面も4ビート進行もあるアップテンポの1曲目、メロディアスで哀愁が漂っている曲のうえ、ピアノやサックスがまたよく唄っていて素晴らしいと思える、珍しいボッサタイプの2曲目、フルートとパーカッションではじまり、チャイニーズ・ミュゼットが絡む民族音楽色が満載のエキゾチックな3曲目、ゆったりと自由に各楽器が舞いながら支えあって進行していくバラードの、フリーの要素も入りつつ、各パートのソロも聴きやすい15分台のタイトル曲の4曲目。

Vossabrygg/Terje Rypdal

1984
今日はテリエ・リピダルのアルバムですが、今までのクラシック指向やプログレ指向とは違って、なぜかマイルス指向、という点が興味深いです。トランペットにマイルス・デイヴィスと共演、アルバムを作ったことのあるパレ・ミッケルボルグを起用しています。サウンドも、打ち込みやサンプリングなど、今のサウンドの曲もありますが、1曲目などは、何となく懐かしいエレクトリック・サウンド。ただ、それでもギターが前面に出ている場面は多いような気がします。そして10曲全部つながっているように感じるのは、編集なのか、実際につながっているのか、もう少し聴きこんでみないと。レーベルとしてはなかなか面白いアルバムかも。


Vossabrygg/Terje Rypdal(G)(ECM 1984) - Recorded April 12, 2003. Palle Mikkelborg(Tp, Synth), Bugge Wesseltoft(Key, Synth), Stale Storlokken(Org, Key, Synth), Marius Rypdal(Electronics, Samples, Turntables), Bjorn Kjellmyr(B), Jon Christensen(Ds), Paolo Vinaccia(Ds) - Vossabrygg Po.84 1. Ghostdancing 2. Hidden Chapter 3. Waltz For Broken Hearts/Makes You Wonder 4. Incognito Traveller 5. Key Witness 6. That's More Like It 7. De Slagferdige 8. Jungeltelegrafen 9. You're Making It Personal 10. A Quiet Word

ライヴ録音で、全曲テリエ・リピダル作曲。マイルス・デイヴィス、特に「ビッチェズ・ブリュー」と、その共演者に捧げられた音楽、とのこと。キーボードやオルガンの使い方など、まさに。特に18分もの1曲目が雰囲気が、渋い当時のエレクトリック・サウンドに近く、そこにギターが盛り上げていきます。カッコ良さのあるはっきりしたビートを持つ2曲目、エレクトリックなスペイシーさを持つバラードの3曲目、サンプリングを大胆に取り入れたと思われる4曲目、小品ですが緊張感のある5曲目、抑制された懐かしいドラマチックなエレクトリック・サウンドの6曲目、ドラムスのみの小品の7曲目、それプラステンポの良いリズムとトランペットの8曲目、重いベース音と牧歌的なメロディからハードになる9曲目、静かに漂っていく10曲目。(06年3月15日発売)

2007/08/21

Death And The Flower/Keith Jarrett

Keithdeath
キース・ジャレットのアルバムコメント手直し聴き7日目。彼のインパルス作品でどれが一番人気なのだろうと思いますが、日本人ならば、この「生と死の幻想」ではないかな、と思います。なんたってドラマチックで、曲ごとの変化も富んでいる、しかも哀愁度も高いということで。次には「宝島」ではないかな、と予想させます。そちらは明るめで8ビートの曲も目立ちます。こういういいアルバムも、今まで何となく敬遠していて、聴いたのはホントに久しぶりです。4ビートではなく、フリー色もまだ少しは残っているし、民族音楽色もあるし、というあたりが理由かもしれません。でも、独自のサウンドを出すいいバンドです。久しぶりに聴いて納得。


Death And The Flower/Keith Jarrett(P, Ss, Wood Fl, Per)(Impulse) - Recorded October 9 and 10, 1974. Dewey Redman(Ts, Per), Charlie haden(B), Paul Motian(Ds, Per), Guilherme Franco(Per) - 1. Death And The Flower 2. Prayer 3. Grea Bird

邦題「生と死の幻想」。醍醐味は、キース・ジャレットの美しいピアノと、やや混沌としたサックスやリズムの対比 で曲を盛り上げていくことですが、ドラマチックな感じが強いアルバムです。3曲共に彼の作曲で、タイトル曲の1曲目は何と22分台、2-3曲目も10分前後あります。静かで民族的なフルートとパーカッションで出だしからしばらく続き、パーカッションがやや盛り上がってベース、ピアノ、サックスとエキゾチックなドラマを観ているような展開で、後半は8ビートで強力に進行する1曲目、ピアノとベースのデュオでしっとりと哀愁のあるメロディをゆったりと語り合いながら10分間続いていく、内省的な2曲目、パーカッションが元気な中、哀愁のメロディが伸縮自在なリズムと盛り上がりで、時に4ビートも入って勝負する3曲目。

Vaghissimo Ritratto/Gianluigi Trovesi/Umberto Petrin/Fulvio Maras

1983
今日のアルバムはイタリア人のジャンルイジ・トロヴェシを中心としたトリオですが、編成も変則で、パーカッションが不参加の曲もある程度あるので、クラシック的な感触が強く、そしてフリー・インプロヴィゼーションや8ビート的なポップスなどと同居している曲があります。いろいろありますけれど、やはりクラシック的な印象が強かったというか。よく知らない作曲家だけれども新旧取り混ぜて、古い方はたぶん中世からバロック音楽にかけてだと思うのですが、そのせいでしょうね。一部だけインプロヴィゼーション度高し。


Vaghissimo Ritratto/Gianluigi Trovesi(Cl)/Umberto Petrin(P)/Fulvio Maras(Per)(ECM 1983)(輸入盤) - Recorded December 2005. - 1. Primo Apparir 2. L'Orfeo 3. Grappoli Orfici 4. Mirage 5. Secondo Apparir 6. Al Primo Vostro Sguardo 7. The Lover's Appeal - Terzo Apparir 8. Angelia 9. El Grillo 10. Particolare De J. Donne 11. Amsterdam 12. Serenata - Matona Mia Cara 13. My Little Maid And I 14. Canto Vago 15. Far, Far Away 16. Vaghissimo Ritratto

(07/03/11)Gianluigi Trovesi作は3曲目、Umberto Petrin作は14曲目。Fulvio Maras作の10曲目はパーカッションが効いて現代的なアレンジ。そして3人のフリー・インプロヴィゼーションが1、4-5、7後半、12前半、16曲目とあり、他は16世紀から20世紀にかけてのおそらくイタリア人作曲家の作品。楽器編成からかジャズ色はほとんどなく、クラシックやバロックのサウンドの香り、時にポップス的(13、15曲目)。こういう世界もイタリア的ですが、クラシックに近い聴き方が多いアルバムでは。ただ、フリー・インプロヴィゼーションもアヴァンギャルドではないにしても緊張感をともなう現代的なサウンド(4-5曲目、特にタイトル曲の16曲目は。)になっていて、場合によって民族音楽的な香りも。記譜された世界とアドリブのはざま。 (07年4月25日発売 邦題「懐かしい風景」)

2007/08/20

Tresure Island/Keith Jarrett

Keithtrea
キース・ジャレットのアルバムコメント手直し6日目。この「宝島」ってコンセプトアルバムのような気がしていましたが、前作「フォート・ヤウー」と同じ日の録音だったんですね。似たような感じでもあるし。ただ、タイトル曲の4曲目はけっこう美しいし、やっぱり8ビートとフリーがキーワードの曲が多いにしても、インパルス盤のなかでは人気盤の方に入っているのは間違いないでしょう。ここでは2曲にギターが入っているのが変わっているところで、Sony盤でも登場したSam Brownが弾いています。比較的短めの曲が多く、あまりムダがない感じで、通して聴くとなかなかいい感じではありますね。


Tresure Island/Keith Jarrett(P, Sax, Per)(Impulse) - Recorded February 24, 1973. Dewey Redman(Ts), Sam Brown(G), Charlie Haden(B), Paul Motian(Ds), Guilherme Franco(Per), Danny Johnson(Per) -1. The Rich 2. Blue Streak 3. Fullsuvollivus (Fools Of All Of Us) 4. Treasure Island 5. Introduction And Yaqui Indian Folk Song 6. Le Mistral 7. Angles (Without Edges) 8. Sister Fortune

邦題「宝島」。5曲目後半以外はキース・ジャレットの作曲。元気のいい8ビート系の曲と、やはりフリー・ジャズの部分があります。4、8曲目には珍しくギターが参加。ややスローなロックビートでドッシリとゴスペル・タッチで進んでいく1曲目、これまたロック・ビートで弾むような明るさとちょっとミステリアスな部分がある2曲目、スリリングなビートにスリリングなフレーズで、中途フリーに傾く3曲目、メロディから夢が生まれてくるような優しさのある親しみやすいロック・ビートのタイトル曲の4曲目、しっとりとしたピアノ中心の静かなバラードの5曲目、8ビートで繰り返しフレーズの提示からサックスやピアノなどのソロが入ってくる6曲目、アップテンポで目まぐるしいテーマとアドリブ、フリーの7曲目、ラストも8ビートでせまってくる8曲目。

The Words And The Days/Enrico Rava Quintet

1982
今日はエンリコ・ラヴァです。テクニックよりは雰囲気で聴かせる人かなあと思うのですが、ゆったりしつつも時々鋭いパッセージをはさみこんでます。ECMレーベルなので、通常のクインテット編成ながら、出てくる音はやっぱりECMの音。この冷たさ加減で好き嫌いが出てくるかもしれませんが、それでもこのレーベルにしては珍しく4ビートの曲も一部にありました。通して聴いてみて、やっぱりベテランの味ですね。あいにく他のメンバーであまり知っている人はいませんが、ドラムスのロベルト・ガトーはやっぱりある程度ベテランだけあって、何枚か古いCDを持っています。やっぱり、このアルバムは、味ですね、味。


The Words And The Days/Enrico Rava(Tp) Quintet(ECM 1982)(輸入盤) - Recorded December 2005. Gianluca Petrella(Tb), Andrea Pozza(P), Rosario Bonaccorso(B), Roberto Gatto(Ds) - 1. The Words And The Days 2. Secrets 3. The Wind 4. Echoes Of Duke 5. Tutu 6. Spgni Proibiti 7. Todamor 8. Serpent 9. Art Deco 10. Traps 11. Bob The Cat 12. Dr. Ra And Mr. Va

(07/03/08)Enrico Ravaの作曲は12曲中8曲(1-2、4-5、7-8、11-12曲目)。イタリアのECM的クインテットという感じで、温度感は低いながらも、地域性がにじみ出る感じです。透明感のある、やや醒めたゆったりとした、時に突き抜けるようなフレーズがある曲が多め。まろやかなトランペットが、冷たいバックで淡々と語りかけてくるようなゆったりとしたタイトル曲の1曲目、ゆらゆらとさまよってから盛り上がりを見せる2曲目、珍しく中盤で4ビートが出てきてジャズっぽいアプローチが続く4曲目、交替しながら少人数の演奏でミステリアスな香りを振りまいている8曲目、ドン・チェリー作のホーン2本のデュオでちょっとジャジーな絡みがある9曲目、珍しく陽気なジャズの10曲目、メランコリックと鋭さを併せ持つ12曲目。 (07年3月21日発売)

2007/08/19

Fort Yawuh(+1)/Keith Jarrett

Keithfort
キース・ジャレットのアルバムコメント手直し聴き5日目。いよいよインパルスに入ります。BOXもので終わっていたと勘違いしていました(笑)。手直しは5枚。アメリカン・クァルテットとしてはECMにも2枚録音がありますが、やっぱりこのインパルス時代でクライマックスを迎えるのかな、という気がしています。相変わらず8ビートのジャズ・ロックもあれば、スピリチュアルな演奏、フリー・ジャズっぽい(というよりオーネット・コールマンの影響を受けた)曲とさまざまですけれど、他ではこの時代なかなか聴くことができない、ある意味濃い演奏ですね。レーベルを超えて、通しで聴かなければ彼の全貌が見えてこないような気にもなったのでした。


Fort Yawuh(+1)/Keith Jarrett(P, Sax, Per)(Impulse) - Recorded February 24, 1973. Dewey Redman(Ts, Chinese Musette), Charlie Haden(B, Per), Paul Motian(Ds, Per), Danny Johnson(Per) - 1. (If The) Misfits (Wear It) 2. Fort Yawuh 3. De Drums 4. Still Life, Still Life 5. Roads Traveled, Roads Veiled

インパルスでのキース・ジャレットの第一弾でライヴ。全曲彼の作曲。フリージャズの影響を感じさせて、サウンドが混沌としている部分もありますが、8ビートフォーク調の曲や、叙情的な面も 相変わらず。このアクの強さが、好みを分けるのでは。粘りのある伸び縮みするようなリズムのオーネットっぽいサウンドで、フリーの要素も大胆に入りつつゴリゴリと進んでいく1曲目、自由なテンポで進行してその後ビートがはっきり出る場面もあり、それでいて叙情的な面を強く見せているタイトル曲の2曲目、素朴な感じの8ビートから徐々に盛り上がりを見せていく、ある意味淡々ともしている3曲目、美しいピアノではじまり、情感あふれるように、しかも淡々と進んでいく4曲目、ピアノではじまって、後半2ホーンのスピリチュアルな5曲目。

The Wind/Kayhan Kalhor/Erdal Erzincan

1981
はっきり言ってペルシャからトルコにかけての民族音楽であってジャズの要素はないのですが、それに基づいたインプロヴィゼーションということで「精神的」にはジャズなのかなあ、という気もしています。ブログで民族音楽のカテゴリーを作ってないこともあるし、ECMだとジャズだか民族音楽だか分けられないようなものもあるし。でも、これははっきり言って民族音楽。楽器のKamanchehやBaglamaがどんなものかも調べてませんが、写真があって片方が二胡に似ていて、片方がボディがラウンドしたギターに似ている感じ。ただ、音を聴けばかの地に飛んでいくような感じがします。


The Wind/Kayhan Kalhor(Kamancheh)/Erdal Erzincan(Baglama)(ECM 1981)(輸入盤) - Recorded November 2004. Ulas Ozdemir(Divan Baglama) - The Wind: 1-12. Part 1-12

(06/11/23)ペルシャやトルコの音楽に基づいたインプロヴィゼーションとのことです。アレンジは表題の2人で、プロデュースはKayhan Kalhorとマンフレート・アイヒャーがやっています。インプロヴィゼーションではあるけれど、その範疇は完全にその方面の民族音楽です。アレンジも施されているようですが、やり取りに緊張感をはらんでいるものの、完全にあっち側の世界を行きつ戻りつしているサウンド。静かな場面、盛り上がる場面もそれぞれに、中近東の西の方のサウンドはこうなっているのかと思わせるものが。現地では現代でもこういう音楽なのか、古典音楽なのかは分かりませんが。それにしてもこの深い哀愁とエキゾチックなサウンドには、心のひだに入り込んでくるような要素もあって、惹かれるものがあります。

2007/08/18

Expectations/Keith Jarrett

Keithexpect
キース・ジャレットのコメント手直し聴き4日目。今日は唯一ソニー(当時は確かコロンビアかCBSか?)に残されたアルバムの紹介です。当時としては大掛かりでLPだと2枚組、そして曲によってストリングスやブラスが配されています。デューイ・レッドマンとギターのサム・ブラウンは曲によって抜けたりすることもあるのですが、特にギターが入っているというのは珍しいんじゃないかな、と思います。ただ、基調はいつものアメリカン・クァルテット(という言葉はまだこの時期なかったみたいだけれども)という雰囲気で、明るめの8ビート的ジャズロックや、オーネット・コールマン的なサウンドも健在です。曲によってストリングス/ブラスが絡むのは豪華ですね。


Expectations/Keith Jarrett(P, Org, Ss, Tambourine)(Sony) - Recorded September and October, 1972. Charlie Haden(B), Paul Motian(Ds), Sam Brown(G), Dewey Redman(Ts, Cowbell), Airto Moleira(Per) and Strings/Brass - 1. Vision 2. Common Mama 3. The Magician In You 4. Roussillon 5. Expectations 6. Take Me Back 7. The Circular Letter (For J.K.) 8. Nomads 9. Sundancee 10. Bring Back The Time When (If) 11. There Is A Road (God's River)

LPにすると2枚分の77分収録で、全曲キース・ジャレットの作曲。このアルバムでは8ビート的なリズムの曲も目立っていて、フリーっぽいものやその他、バラエティに富んでます。曲によってストリングスやブラスが曲に入ることで、豪華なイメージが出てきます。曲によって編成は少しずつ変わり、ギターがいるのがちょっと特徴的かも。2曲目はブラスも入っていますが、相変わらずの8ビートのジャズ・ロック的な展開。哀愁漂うメロディのバラードがストリングに包まれて印象的に響くタイトル曲の5曲目、2ホーンでここでもオーネット・コールマンを思い出すようなサウンドの7曲目、17分にわたりやや混沌サウンドでブラスも入り、アップテンポの部分もあってドラマチックに展開していく8曲目、ゴリゴリと進むフリー的な9ー10曲目。

Lontano/Tomasz Stanko Quartet

1980
このメンバーでのクァルテットも3枚目だそうで、一体感が強くなっている感じがします。1、5、8曲目に4人での長めのフリー・インプロヴィゼーションがあるけれど、あらかじめ構築された部分が多いような緊密度があります。淡々としていて、耽美的で、しかも冷たいサウンド。それが時々ぶつかり合うような。4ビートは決して出てこず、熱くならないけれど、16ビート系の曲をやったりと、とにかく彼ら独自のサウンド(あるいはECM独自のサウンドと言い換えてもいいかも)が展開されています。こういう音楽に好き嫌いはつきものだけれど、ハマると面白いかも。


Lontano/Tomasz Stanko(Tp) Quartet(ECM 1980) - Recorded November 2005. Marcin Wasilewski(P), Slawomir Kurkiewicz(B), Michael Miskiewicz(Ds) - 1. Lontano 1 2. Cyrhla 3. Song For Ania 4. Kattorna 5. Lontano 2 6. Sweet Song 7. Trista 8. Lontano 3 9. Tale

トーマス・スタンコの曲は5曲(2-3、6-7、9曲目)、4人の長めのインプロヴィゼーションが3曲(1、5、8曲目)。叙情的な世界を垣間見せてくれます。静かな耽美的な世界が繰り広げられた後に、ちょっと激しいやり取りも聴かれる1曲目、哀愁たっぷりにトランペットがせまってくる、やや前のめりのビートと静かな場面の2曲目、静かながら牧歌的で光が当たった像の陰影が見える3曲目、クリストフ・コメダ作の、ちょっと激しいビートの上を彷徨うホーンやピアノの4曲目、色合いは違えど、しっとりとした薄暮の世界から、時々丁々発止のアドリブが浮かび上がる5、8曲目、哀愁と、やや感触の温かい、盛り上がりのあるバラードの6曲目、どことなくまったりと進んでいく7曲目、悲しみが静かに沈んでいくような再演曲の9曲目。(06年8月30日発売)

2007/08/17

El Juicio (The Judgement)/Keith Jarett

Keithelju
キース・ジャレットのコメント手直し聴き3日目。アトランティックばかりと思っていたら、先日BOXものを手直ししていたインパルスもけっこうあって、むしろインパルス聴きに近いような形だったのに後から気がつきました(笑)。ただ、演奏自体はメンバーもほとんど変わらず、つながっていくような感じではありますね。ビートのとり方など、オーネット・コールマンを意識していたな、と他のアルバムでも思っていましたが、6-7曲目にタイトルに出てくるほど、やっぱりオーネットの影響が強いようです。そこが好みの分かれ目かな、とも思いますが。6曲目は2ホーンです。こういう演奏って、勢いで、技術は必要ないのかな、という気もしないでもないですが。


El Juicio (The Judgement)/Keith Jarett(P, Ss, Fl)(Atlantic) - Recorded July 15 and 16, 1971. Charlie Haden(B), Paul Motian(Ds), Dewey Redman(Ts) - 1. Gypsy Moth 2. Toll Road 3. Pardon My Rags 4. Pre-Judgement Atmosphere 5. El Juicio 6. Piece For Ornette(L.V.) 7. Piece For Ornette(S.V.)

アルバム「流星」と「誕生」の未発表セッションとして’75年に発表されたものだそう。流星と同セッションもあるので同じ傾向。デューイ・レッドマン参加の初期でもあります。8ビートのジャズ・ロック的な明るさを持って進んでいく1曲目、4ビートよりは混沌としたフリーに近い姿で突き進んでいく2曲目、ソロ・ピアノの曲で、ECMとは全く別ものの ラグタイム的演奏ですが、スゴいと思う3曲目、パーカッションやドラムスでエキゾチックだったりドカドカしたりする4曲目、やや急進的で粘りけのあるビートを持ちながら、トリオでゴリゴリ押しつつベースとパーカッション、ヴォイス、フルートが出る部分もあるプリミティヴな5曲目、2ホーンでオーネットっぽくアップテンポの自由な4ビートに乗り進んでいく6曲目、2ホーンのみでごく短く吹く7曲目。

Nostarghia - Song For Tarkovsky/Francois Couturier

1979
このあたりになってくると「ジャズ」のくくりはどうなのかなあ、とも思います。確かにインプロヴィゼーションの世界もあるのですが、聴いた感触は、暗めの映画音楽という趣もあるし、何よりもクラシックや現代音楽にかなり近いものを持っています。ジャズ的なイディオムや4ビートすら全然出てきません。ジャンルの扱いが難しいのですが、確かに凍るほど美しいフレーズが出てくることもあれば、静かにたゆたうように聴けば、独特の世界にハマりこむということもあります。時に緊張を強いることもありますが。


Nostarghia - Song For Tarkovsky/Francois Couturier(P)(ECM 1979)(輸入盤) - Recorded December 2005. Anja Lechner(Cello), Joen-Marc Larche(Ss), Jean-Louis Matinier(Accordion) - 1. Le Sacrifice 2. Crepusculaire 3. Nostarghia 4. Solaris 1 5. Miroir 6. Soralis 2 7. Andrei 8. Ivan 9. Stalker 10. Le Temps Scelle 11. Toliu 12. L'eternal Retour

(06/11/02)タルコフスキーの映画音楽集と思ったら、主にFrancois Couturierの作曲で、3曲参加者のインプロヴィゼーション(4、6、8曲目)。ただ、映画音楽にインスパイアされてできた曲も。変則的なクァルテットで、静かで格調高く、しかもどんよりとしたかの地の気候をそのままサウンドにしたような色調の演奏。曲によって参加しない人も。1曲目から繊細な沈んだ音で心に寄り添って来たかと思うと、時に静寂を乱す不協和音。ジャズというよりは現代音楽に近い雰囲気を持っています。3曲目はタイトル曲でややエキゾチックな各楽器が印象的ですが、やぱりアルバム全体の流れを通り過ぎて行きます。インプロヴィゼーションの曲はややそれらしい。8、10曲目はスピーディー、9曲目はうごめきながら盛り上がっています。

2007/08/16

The Mourning Of A Star/Keith Jarett Trio

Keithmour
キース・ジャレットの、BOXものを除けば、コメント手直し聴き2日目。この時期の演奏はホント、久しぶりに聴きました。やっぱりECM時代の演奏と比較すると、暑苦しい感じもしないでもないですが、逆にスピリチュアルな部分も多く持っていて、原初的な発露も多くて、聴くとなるほど、と思います。ここでのメンバーはトリオで、この後にデューイ・レッドマンの参加などで、クァルテットが中心になっていきます。トリオとクァルテットと、これまたどちらが好みかは迷うところ。ECMのソロ・ピアノ作「フェイシング・ユー」の録音と数ヶ月しかずれてないので、ピアノのエッセンスだけを取り出すと近いような気もしています。


The Mourning Of A Star/Keith Jarett(P, Ts, Ss) Trio(Atlantic) - Recorded July and August, 1971. Charlie Haden(B), Paul Motian(Ds) - 1. Follow The Crooked Path (Though It Be Longer) 2. Interlude No.3 3. Standing Outside 4. Everything That Lives Laments 5. Interlude No.1 6. Trust 7. All I Want 8. Traces Of You 9. The Mourning Of A Star 10. Interlude No.2 11. Sympathy

邦題「流星」。キース・ジャレットがサックスを吹くことも。フリー・ジャズ、8ビートのジャズロック、民族音楽調の曲と、いろいろな要素が入ってます。7曲目のみジョニ・ミッチェルの曲で、他はオリジナル。2、5、10曲目はインタールード。フリーの要素がかなり強く、粘りがあってゴンゴンと進んでいく1曲目、8ビートの牧歌的で明るく乾いたサウンドの3曲目、しっとりとした美しいメロディのバラードが漂う4曲目、ピアノのフレーズが伸び縮みしつつ声も出しながらゴリゴリと進む6曲目、ロック的な8ビートでメロディアスに進んでいく7曲目、まったりしたサックスが漂う自由な4ビートの8曲目、メロディアスでスリリングなピアノと安定したリズムの、やはり8ビート系のタイトル曲の9曲目、出だしのソロ・ピアノが流麗なバラードの11曲目。

Juan Condori/Dino Saluzzi Group

1978
ECM New Series(クラシック/現代音楽)の方は輸入盤を買ってしまうことに決めてあるのですが、ジャズのECMの方は国内盤と発売時期があまり変わらない時は国内盤を買うことが多いです。これも価格差がどれくらいになるかに依存してますけれど。このアルバム、曲によってはパット・メセニー・グループがちょっと変化したような、フュージョン色の強い曲もあったりするので、76分という時間、変化に富んでいて退屈はしません。ある意味ECMのレーベルカラーを守りつつはみ出している部分もあるわけで、最近はこういう束縛から自由になる傾向が、このレーベルにはあります。しかしそれにしても、このレーベル、最近新譜が多いですね。


Juan Condori/Dino Saluzzi(Bandoneon) Group(ECM 1978) - Recorded Octover 10-14, 2005. Felix 'Cuchara' Saluzzi(Ts, Ss, Cl), Jose Maria Saluzzi(G), Matias Saluzzi(B), U.T. Candhi(Ds, Per) - 1. La Vuelta De Pedro Orillas 2. Milonga De Mis Amores 3. Juan Condori 4. Memoria 5. La Parecida 6. Inside 7. Soles/La Camposantena 8. Las Cosas Amadas 9. A Juana, Mi Madre 10. Los Sauces 11. Improvisacion 12. Chiriguan

11曲目がフリー・インプロヴィゼーションで、2曲目、7曲目前半以外はディノ・サルーシの作曲。珍しく彼の故郷アルゼンチンでの録音で、彼のファミリーによる15年ぶりの作品。静けさもあるものの、温度感はほんの少し高めのようです。これぞアルゼンチンの哀愁というものを聴かせてくれますが、1曲目はラテン系の盛り上がる場面もあって、やはり自由にやらせてくれるのかな、という印象も。いちおうマンフレート・アイヒャーのプロデュースですが。他の曲も哀愁があったり明るかったり、静かだったりラテン・フュージョンっぽかったり、リズムがはっきりと盛り上がったりと構築力もあり、変化に富んでいて飽きさせません。タイトル曲の3曲目はゆったりと素朴でいい味を出しています。フリーの11曲目もあまり違和感はないです。(06年11月22日発売)

2007/08/15

Somewhere Before/Keith Jarett Trio

Keithsome
キース・ジャレットはECMレーベルのものはコメント手直しをしてしまったので、残るはアトランティック・インパルス中心。この場合、チャーリー・ヘイデンとポール・モチアンが参加しているので、一緒にコメントが直ってしまうというメリットもあります。このアルバムはかなり有名で何度も再発されています。私がこれをCDで買ったのが自分のジャズ歴の中でも初期だったので、4ビート進行のオーソドックスな展開が全然ないのに驚きました。いろいろ聴くようになり、分かってくると、こういう時代でもあり、こういう展開も、アリかな、けっこう面白いな、と思うようにもなりましたが。最近は他のマイナーな盤もCD化されているので、時系列的にはつながりました。


Somewhere Before/Keith Jarett(P) Trio(Vortex) - Recorded October 30 and 31, 1968. Charlie Haden(B), Paul Motian(Ds) - 1. My Back Pages 2. Pretty Ballad 3. Moving 4. Somewhere Before 5. New Rag 6. A Moment For Tears 7. Pout's Over (And The Day's Not Through) 8. Dedicated To You 9. Old Rag

ライヴ録音。キース・ジャレット作は1、8曲目以外の7曲。当時からフォーク・ソング的な面や、ECMやアメリカン・クァルテットに通じる面を持ち合わせていたようです。時代が時代なので、完全にフリー・ジャズのようなアプローチも見られます。ボブ・ディラン作の明るい8ビートフォークになっている1曲目、しっとりキラキラと流れるように進んでいくバラードの2曲目、バリバリのフリーでゴリゴリと押し進める3曲目、ややスローで明るいポップスのようなメロディのタイトル曲の4曲目、アップテンポでスリリングかつ明るい5曲目、ベースのアルコとゆったりしたピアノのバラードの6曲目、ロック的な8ビートでノリ良くせまってくる7曲目、伸びたり縮んだりするようなフレーズのバラードでの8曲目、ストライド的アップテンポでせまる9曲目。

Fleuve/Pierre Favre Ensemble

1977
ピエール・ファヴルの久しぶりのリーダー作。ドラマー&パーカッショニストですが、通常のジャズドラムではなくて、クラシック的(ECM的)なサウンドに、さまざまなパーカッションで味付けをしていく感じの、けっこう曲作り重視のミュージシャンではないかと思います。ジャズドラムを期待すると肩すかしをくいますが、音楽性は、こういう方面が好きな人はいいんだろうなあという感じ。聴く人をある程度選ぶっていうことなんでしょうけれど。静かで温度感の低い音楽が続いていて、インプロヴィゼーションの部分も、あまりそういうことを感じさせないで聴かせるまとまりはありますね。


Fleuve/Pierre Favre(Per, Ds) Ensemble(ECM 1977)(輸入盤) - Recorded October 2005. Philipp Schaufelberger(G), Frank Kroll(Ss, Bcl), Helene Breschand(Harp), Michel Godard(Tuba, Serpent), Wolfgang Zwiauer(Bass Guitar), Banz Oester(B) - 1. Mort d'Eurydice 2. Panama 3. Albatros 4. Reflet Sud 5. Fire Red - Gas Blue - Ghost Green 6. Nile 7. Decors

(06/11/26)全曲Pierre Favreの作曲。ドラムスというよりはパーカッショニストとしての役割のほうが大きく、カラフルなサウンドの楽器でECM的な世界に味付けをしていきます。楽器編成は割と個性的です。ゆったりとしたほんの少しシャッフル気味のパルスで映画音楽のようなメロディがたゆたっていく1曲目、いろいろな楽器があらわれては消えていく、自由なスペースのあるちょっと温度感の高いやり取りの2曲目、ノスタルジーのある世界をこの編成であらわしている変化のある3曲目、3拍子系ですがリズムも軽やかにノリも良く進んでいく4曲目、ベースがメインになっていて楽器の語り合いによって進んでいく5曲目、ある程度の自在な変化と東洋的な静けさの混ざる6曲目、クラシックにパーカッションが加わったような7曲目。

2007/08/14

Sangam/Charles Lloyd

1976
チャールス・ロイドはECMで何枚も作品を残していますが、このアルバムは変則的な編成(基本的にはホーン、パーカッション、ドラムス)でのライヴながら、私の中ではけっこう上位にくるアルバムです。いつもピアノ・トリオとか、通常のクインテット編成などのジャズを好む方たちへの脳天に一撃をくらわすことのできる(かもしれない)アルバムと思いました。まあ、好みは人それぞれなので、こういうのは好きじゃない、という人もいらっしゃるでしょうけれど。とにかくスピリチュアルでエスニックな雰囲気が満載。ドラムスのエリック・ハーランドは本来こっち方面の人じゃなかったと思ったけれど、見事に全体の雰囲気に溶け込んでます。


Sangam/Charles Lloyd(Ts, As, Tarogato, Bfl, Afl, P, Per)(ECM 1976) - Recorded May 23, 2004. Zakir Hussain(Tabla, Voice, Per), Eric Harland(Ds, Per, P) - 1. Dancing On One Foot 2. Tales Of Rumi 3. Sangam 4. Nataraj 5. Guman 6. Tender Warriors 7. Hymn To The Mother 8. Lady In The Harbor 9. Little Peace

5曲目を除きチャールス・ロイドの作曲で、再演曲もあり。ライヴ録音。スピリチュアルかつエスニックな雰囲気の演奏で、リズムの2人がかなり強力で活躍の場面も多いです。その異国情緒の世界は1曲目のパーカッションからはじまってロイドが加わっていくサウンドから見い出せます。そしてやや激しいリズムの上をサックスがウネウネと吹いていく2曲目、雰囲気としては2曲目に近いタイトル曲の3曲目、ソロ・ピアノでのしっとりした小品の4曲目、唯一ザキール・フセイン作のピアノの低音ミュートの上をヴォイスが歌い他の楽器が加わっていく5曲目、原初的な雰囲気も持つやや静かな6曲目、スピリチュアルな部分も明るい部分もある7曲目、やや淡々と進行していく小品の8曲目、フルートでの演奏もエスノの感じの9曲目。(06年4月19日発売)

The Impulse Years, 1975-1976/Keith Jarrett

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キース・ジャレットのインパルス後期のアルバムを、未発表テイクを含めて記録した4枚組BOX。今はこのBOX、手に入るのかどうか分かりませんが、未発表テイクの割合が多いところからも、割と貴重な演奏ではないかと思います。好みの問題で、そこまでは別に聴きたくないよ、という人もいるかもしれませんけれど(笑)。こちらの方は、いわゆるコンプリート・ヴァージョンと言うか、長い演奏は少なくなり、レコーディングをけっこう意識した録音となっています。メンバーも前期と違って4人で固定しているし。でもやっぱりアルバムの完成度という点で言うと、オリジナルの個々のアルバムで聴いていった方がいいかな、という気もします。追いかけている人向けか。


The Impulse Years, 1975-1976/Keith Jarrett(P)(Impulse) - Recorded December 1975 - October, 1976. Dewey Redman(Ts), Charlie Haden(B), Paul Motian(Ds), Guilherme Franco(Per) - Disc 1 "Shades" 1. Shades Of Jazz 2. Southern Smiles 3. Rose Petals 4. Distribute 5. Shades Of Jazz 6. Southern Smiles 7. Rose Petals 8. Rose Petals Disc 2 "Mysteries" 1. Rotation 2. Everything That Lives Laments 3. Flame 4. Mysteries 5. Everything That Lives Laments 6. Playaround Disc 3 "Byablue" 1. Byablue 2. Konya 3. Rainbow 4. Trieste 5. Fantasm 6. Fantasm 7. Yahllah 8. Byablue 9. Trieste 10. Rainbow Disc 4 "Bop-Be" 1. Mushi Mushi 2. Silence 3. Bop-Be 4. Pyramids Moving 5. Gotta Get Some Sheep 6. Blackberry Winter 7. Pocketful Of Cherry 8. Gotta Get Some Sleep 9. Blackberry Winter

4枚組のCDのBOX。インパルスで録音されたキース・ジャレット・アメリカン・クァルテットの’75-76年の録音をまとめたもの。個々のアルバムとしても残されていますが、未発表曲、未発表テイクも11曲(Disc1の5-8曲目、Disc2の5-6曲目、Disc3の5、9-10曲目、Disc4の8-9曲目)あり、そういう意味では貴重なCD。この時代、こういう演奏をECMでのソロ・ピアノと平行してやっていたという、記録として聴くべきアルバムか。 主な作曲はキース・ジャレットだけれども「バイア・ブルー」「バップ・ビー」などこのBOXの後期になると、他のミュージシャンの作曲も多くなってきます。この時期は、未発表曲はなくて、何回もテイクを重ねていく方式になっていたのですね。試行錯誤よりは、完成度を求めての演奏ということでしょうか。

2007/08/13

Saudages/Trio Beyond

1972 「トニー・ウィリアムスへのオマージュ」とサブタイトルにあります。トニーの’69年のアルバム「エマージェンシー」とも聴き比べをしましたが、トニーとジャック・ディジョネットを中心に聴き比べたところ、共通の曲も演奏してはいるものの、他の昔のメンバーもジョン・マクラフリンとラリー・ヤングでキャラクターが違うので、やっぱりドラムスもサウンドも別ものとしてとらえた方が良いくらい違うことが分かります。やっぱりここでのジョン・スコフィールドやラリー・ゴールディングスとのトリオは強力だし、音はECMらしからぬ、そして内容はECMらしい独創性のあるアルバムに仕上がったというところでしょうか。私的には今年のかなり上位にくるアルバム。

 

Saudages/Trio Beyond(ECM 1972/73) - Recorded November 21, 2004. Jack DeJohnette(Ds), Larry Goldings(Org, El-p, Sampler), John Scofield(G) - 1. If 2. As One 3. Allah Be Praised 4. Saudages 5. Pee Wee 6. Spectrum 7. Sven Steps To Heaven 8. I Fall In Love Too Easily 9. Love In Blues 10. Big Nick 11. Emergency

2枚組CDのライヴで、トニー・ウィリアムスへのオマージュとのこと。ラリー・ゴールディングスの作曲でやや叙情的な2曲目、トリオでのインプロヴィゼーションでミディアムの8ビート的なファンクのタイトル曲の4曲目と、渋めのブルースの9曲目の他は、トニー・ウィリアムスの曲(5、11曲目)や、ジャズメン・オリジナルが多く、ECMにしては温度感が高くハードなジャズの曲が多いです。ミュージシャンの露出度も抜群。1、10曲目あたりは4ビートのビンビンくるオルガンジャズを堪能できます。5曲目は静かな、そして盛り上がる場面もあるバラード。6-7曲目もなかなかスピーディーでスリリング。しっとりとした部分もあるスタンダードのバラードの8曲目。トニーのトリビュートに欠かせない11曲目はイェーイといいたくなる選曲。(06年6月7日発売)

The Impulse Years, 1973-1974/Keith Jarrett

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キース・ジャレットは、その演奏を聴いた時期によって、インパルスが好きと言う人と、ECMが好きと言う人とはっきり分かれているような気がします。私はリアルタイムに聴きはじめたのがECM時代(’80年代)なので、やっぱりソロ・ピアノとかスタンダーズ世代ですけれど、こういうある意味混沌としたようなサウンドも嫌いではありません。特にこのアルバムは未発表テイクも含めてBOXとして発売された5枚組。この他に’75-76年のBOXもあるのですが、そちらは外箱だけ国内で印刷、こちらはなぜか全部直輸入盤国内仕様となっています。延々聴き続けるのは体力を要しますが、資料としては本編では聴けないテイクは聴いておいても良いんではないかな、と思います。


The Impulse Years, 1973-1974/Keith Jarrett(P)(Impulse) - Recorded February 1973 - October 10, 1974. Dewey Redman(Ts), Sam Brown(B), Charlie Haden(B), Paul Motian(Ds), Guilherme Franco(Per), Danny Johnson(Per) - Disc 1"Fort Yawuh" 1. 1. (If The) Misfits (Wear It) 2. Fort Yawuh 3. De Drums 4. Still Life, Still Life 5. (If The) Misfits (Wear It) Disc 2 "Fort Yawuh" 1. Whistle Tune 2. Spken Introduction 3. Angles 4. Roads Travelled, Roads Veiled 5. De Drums 6. Melting The Ice Disc 3 "Tresure Island" 1. The Rich (And The Poor) 2. Blue Streak 3. Fullsuvollivus (Fools Of All Us) 4. Treasure Island 5. Introduction And Yaqui Indian Folk Song 6. Le Mistral 7. Angles (Without Edges) 8. Sister Fortune 9. Death And The Flower Disc 4 "Death And The Flower" 1. Death And The Flower 2. Prayer 3. Great Bird 4. Preyer Disc 5 "Backhand" 1. Inflight 2. Kuum 3. Vapallia 4. Backhand

5枚組CDのBOX。インパルスで録音されたキース・ジャレット・アメリカン・クァルテットの’73-74年の録音をまとめたもの。個々のアルバムとしても残されていますが、未発表曲やコンプリート・ヴァージョンが計12曲(未発表曲はDisc1の5曲目、Disc2の1-3、5-6曲目、Disc3の9曲目、Disc4の4曲目、Disc5の5曲目。コンプリート・ヴァージョンはDisc1の1-2曲目、Disc2の4曲目)あり、押さえておきたいCD。ただし、このグループの混沌とした加減がまた、5枚のCDに延々と繰り広げられています。ここでのほとんどの曲(Disc5の5曲目はポール・モチアン作)はキース・ジャレット作曲。コンパクトにアルバムにまとめる以前の、長い曲は10数分から20分以上にわたってこういう演奏が繰り広げられていたことが分かります。

2007/08/12

Slaughterhouse 3/Gary Willis, Llibert Fortuny, Kirk Covington

Slautgher
ゲイリー・ウィリス買い。グループ名からして冗談音楽みたいな感じがしたのですけれど、何たってトライバル・テックのベースとドラムスを含むトリオですからね。とりあえず聴いておかないと。さすがにこのメンバーが揃っただけのことはありますが、曲自体はあまり入念な打ち合わせがあったというよりも、せーので一気に仕上げて、多重録音?もやったという感じ。まあ、このメンバーなら即興だろうが何だろうが料理して見せますけれどもね。ジャケットや冗談ぽいグループ名で損をしてますが、お目当てのミュージシャンがいるならば聴いてみても損はないかも。多少荒っぽいところはありますけれどもね。


Slaughterhouse 3/Gary Willis(B), Llibert Fortuny(Sax, Reeds, Key), Kirk Covington(Ds)(Abstract Logix)(輸入盤) - Recorded July 11 and 12, 2005. - 1. Slaughterhouse 3 2. Life Story 3. Let's Go 4. Toxic 5. Booty Duty 6. Another Chance 7. Trapeze/Nobody's Friend 8. Stinky 9. Sleep Deprivation 10. Moof 11. Interactive Show

(07/08/11)全曲3人の合作。グループ名は邦題で「堵殺場(とさつじょう)トリオ」。サックス(多重録音?やシンセサイザーもあり)・トリオでのファンク。ただしグループ名とは印象は異なり、ややハードで自由なファンクの路線を行きます。この中ではグループ名の1曲目が一番ハードかなと思わせます。トライバル・テックでのベースとドラムなので、そこの複雑なビートの上に、少しまったりした浮遊感のあるサックス(シンセ)が絡むという構図が多め。少しミュートが効いた感じながらもバリバリと弾きこなすゲイリー・ウィリスのベースは相変わらず。ギターのように聴こえる部分があるけれど、クレジットを見るとシンセサイザーのようです。静かな場面も彼ら独特の雰囲気。11曲目後半はヴォイス(歌)入りの4ビートっぽいサウンド。

Tuki/Miki N'Doye

1971
今日のアルバム、いちおうジャズのカテゴリーには入れましたけれど、北欧のミュージシャンも入ってはいるものの、いわゆるジャズ的な要素はなく、基本的にはアフリカの民族音楽的な要素がかなり強いです。そこにパターン的にミニマル・ミュージックの要素が入っているのかな、と思いました。陽気なサウンドですが、反復が心地よく、一度は途中から聴きながら寝てしまったくらいです。ECMでは、過去もこういうアルバム、なかったわけではないですが、けっこう異色なアルバムです。


Tuki/Miki N'Doye(Karimba, Tamma, M'balax, Bongo, Vo)(ECM 1971)(輸入盤) - Recorded 2003-2005. Jon Balke(Key, Prepared P), Per Jorgensen(Tp, Vo), Helge-Andreas Norbakken(Per), Aulay Sosseh, Lie Jallow(Vo) - 1. Intro 2. Jahlena 3. Loharbye 4. Kokonum 5. Rubato 6. Dunya 7. Tuki 8. Kalimba 6 9. Tonya 10. Osa Yambe 11. Box 12. Me 13. Ending

(06/08/13)全曲Miki N'Doyeの作曲。明るいアフリカンな香りを漂わせながら、素朴でもミニマルな雰囲気のアルバム。北欧のミュージシャンも参加しているけれど、ここにあるのはアフリカの暑さで、それに彩りを添えるような演奏をしています。いろいろな楽器がありますが、カリンバの素朴な音程が懐かしさを呼びおこします。2曲目はおそらくカリンバにヴォーカルやパーカッション、キーポードが絡む構図で、ECMには珍しく温かみがあります。カリンバのパターンに合わせて他のソロ楽器やヴォーカルがメロディを奏でる4曲目、やや盛り上がりはあるものの、カリンバがミニマルミュージックのように刺さってくるタイトル曲の7曲目など。8-9曲目あたりのパーカッションも印象的です。一定のパターンで安心と眠気を誘います。

2007/08/11

Drumonk/Lorenzo Tucci

Drumonk
いつも追っかけミュージシャン関連買いをしている私にとって、あまりなじみのないプレイヤーなのですが、モンク特集だということ、まわりの人たちの評価が良かったこと、そしてピアノレス・トリオという編成も割と自分の好みだったことなどがあげられます。セロニアス・モンクの曲がほとんどを占めているので、おなじみのテーマばかり。個人的にはモンク本人の演奏よりも他の人がモンクの曲を取り上げているのが好きだったりします。このアルバムはドラマーのリーダー作で、彼が自己主張を十分していて飽きないし、珍しいトランペット・トリオですが自由度も高く、しかもメロディアスの方に振れているので、落ち着いて聴けました。ヘヴィー・ローテーションになりそう。


Drumonk/Lorenzo Tucci(Ds)(V.V.J.)(輸入盤) - Recorded November 9, 2006. Fabrizio Bosso(Tp, Flh, Electronics), Pietro Ciancaglini(B) - 1. Green Chimneys 2. Tea For Two 3. Hackensack 4. Rhythm-A-Ning 5. Evidence 6. Ask Me Now 7. Bemsha Swing 8. Straight No Chaser 9. Friday The 13th 10. Nutty

(07/08/11)2曲目のみスタンダードで、残りは全部セロニアス・モンクの曲。ドラマーがリーダーで、しかもピアノレスのトランペットトリオですが、これがなかなかいい。おなじみのメロディが連続することも飽きない理由ですが、変化に富んだドラミングがけっこう凝っていて存在感があり、これまた飽きさせません。テーマ周辺やアドリブは比較的メロディアスで、4ビートやラテン・ビートの部分も一部にあり、割と自由に展開していく場面があるという感じ。ピアノがなくても、モンクっぽさはけっこう出ていると思います。逆にスペースがあって自由に表現しています。2曲目はトランペットにエフェクターをかけてちょっとユーモラスに、そして突然の盛り上がり。でも最初の曲から最後までうまくつながっています。4曲目は8分の7拍子ラテン。

The Iron Stone/Robin Williamson

1969
ロビン・ウィリアムソンというとカントリー系のシンガーだったような記憶がありますがECMからこれでもう3作目。この3作の中でいちばんECMにはまり込んだ作風なのではないかな、と思います。本人もギターは使わず、バックのメンバーも、マット・マネリ、バール・フィリップス、アレ・メッレルと、ずいぶん過激な人たちを揃えたものですね(笑)。参加メンバーのインプロヴィゼーションでできあがった曲もあるのですが、いかにもフリーです、というような感じはほとんどないです。ただ、ゆったりと進むサウンドは多いにしても、異様な雰囲気が立ち上がるのは、やっぱりこのメンバーだからでしょうね。


The Iron Stone/Robin Williamson(Vo, Celtic Harp, Mohan Vina, Chinese Fl, Whistles, Tabwrdd Drum)(ECM 1969)(輸入盤) - Recorded September 2005. Mat Maneri(Voila, Hardanger Fiddle), Barre Phillips(B), Ale Moller(Mandola, Accordion, Clarino, Shawn, Natural Fl, Drone Fl, Whistles, Jaw Harps) - 1. The Climber 2. Sir Patrick Spens 3. Wyatt's Song Of Reproach 4. There Is A Music 5. Even Such Is Time 6. The Iron Stone 7. The Badger 8. Political Lies 9. The Yellow Snake 10. Loftus Jones 11. Baccus 12. The Praises Of The Mountain Hare 13. To God In God's Absence 14. Verses At Ellesmere 15. Henceforth

(06/11/23)Robin Williamsonの作曲とメンバーのインプロヴィゼーションが大半を占め、トラディショナルその他もあります。なかなか異色、というより過激なメンバーとの取り合わせ。ここでは大人しいですが。歌詞は本人作でなければ大昔の作者のものが目立ちます。ヴォーカルはほとんどは歌ですが、流れるようなバックのサウンドに語りで入る(1、7、12曲目)ことも。4、15曲目はその中間のパターンか。ヨーロッパの無国籍的なバックのサウンドが面白いのだけれど、ヴォーカルとの相性もなかなか素朴な味が出ていて面白い。やはりECM流になっています。また、ウィリアムソンの持ち味の明るいカントリーチックな、バックがちょっと個性的な曲もあります。反面、静かなフリージャズにヴォーカルが絡んでいるような曲も。

2007/08/10

Time Line/Ralph Towner

1968
今日はラルフ・タウナーの、オーバー・ダビングなしのギター・ソロのアルバムですけれど、ジョー・パスとかとは違ってジャズのイディオムでフレーズを弾く人ではなくて、どちらかというとクラシックに近い感触を持っているギタリスト。今回はメインがクラシック・ギターだし。なので、ジャズとして紹介してもいいのかどうか、迷うところです。演奏自体は落ち着いていて、技巧を駆使しているのだろうけれどあまりそういうところも見せつけず、けっこういい演奏を聴かせてくれています。ただ、ターゲット的にはいわゆるジャズファンよりは、ECM的なサウンドが好きな方、という気もしています。


Time Line/Ralph Towner(G)(ECM 1968) - Recorded September 2005. - 1. The Pendant 2. Oleander Etude 3. Always By Your Side 4. The Hollows 5. Anniversary Song 6. If 7-11. Five Glimpses 12. The Lizards Of Eraclea 13. Turning Of The Leaves 14. Come Rain Or Come Shine 15. Freeze Frame 16. My Man's Gone Now

6年ぶりのソロ・ギター・アルバムとのこと。14、16曲目のスタンダード以外はラルフ・タウナーの作曲。44分ほどのアルバムに16曲が凝縮されています。使用ギターはここでもクラシック・ギター(今回はこちらがメイン)と12弦・フォークギター。相変わらず幽玄な、そして落ち着いた世界が展開しています。1曲目などはクラシックの曲としてもいいくらいのサウンド。その後も様々に表情を変えながら、やはりクラシック・ギターの曲はクラシカルな少し淡彩色のサウンドでせまってきます。やはりこれは彼らしい独特なサウンドになっています。6曲目のようにある程度勢いがあっても端正さは変わりがない感じ。7-11曲目はやや抽象的な小品集の組曲。2曲のスタンダードもメロディが巧みに織り込まれた綾織り系サウンド。(06年4月19日発売)

2007/08/09

Thomas Larcher/Ixxu

1967
Thomas Larcherは、もうバリバリの現代音楽。果たして私がこういうジャンルを心地よく聴ける日が来るのだろうか。やっぱりジャズ耳ですね、私。


Thomas Larcher/Ixxu(ECM New Series 1967)(輸入盤) - Recorded July 2005. Rosamunde Quartett: Andreas Reiner(Vln), Simon Fordham(Vln), Helmut Nicolai(Viola), Anja Lechner(Cello), Andrea Lauren Brown(Soprano), Christoph Poppen(Vln), Thomas Demenga(Cello), Thomas Larcher(P) - Thomas Larcher: 1-3. Ixxu 4-9. My Illness Is The Medeicine I Need 10-12. Mumiem 13-16. Cold Farmer

(06/10/07)Thomas Larcherはピアノ奏者でもあり現代音楽家。4-9、10-12曲目で演奏しています。曲は’90年代から’00年前後のもの。感触的には寒色系の典型的な現代音楽の曲調で、メロディよりも感情が発露されるようなサウンド。ダイナミックレンジはけっこう広そう。静かな場面もありますが、やはり緊張感は漂ってくる感じ。ソプラノの入る4-9曲目も盛り上がる場面で緊張感があります。10-12曲目も難解さは続きます。

2007/08/08

The Source

1966 記憶違いかもしれないですが、以前のECMのグループで「Old And New Dreams」というのがあったのですが、管の楽器編成が多少違うにしても、何となく、自由なリズムフィギュアと空間の大きい管のスペースということで、似たようなイメージを持ちました。違うのは、もっと現代的で北欧的でもあるかな、と思える部分です。それと管がソロをバリバリ吹いていく曲が少なく、どちらかというと自由でありながらアンサンブルやハーモニーで聴かせているところに特色があります。そして自由なリズムと寄り添って、ゆったり進んでいく曲が多めです。ちょっと不思議なグループ。

 

The Source(ECM 1966)(輸入盤) - Recorded July 2005. Trygve Seim(Ts, Ss), Oyvind Braekke(Tb), Mats Eilertsen(B), Per Oddvar Johansen(Ds) - 1. Caballero 2. Un Fingo Andalou 3. Libanera 4. Prelude To A Boy 5. Tamboura Rasa 6. Mmball 7. Osterled 8. Life So Far 9. Tribute 10. Mail Me Or Leave Me 11. Alle Bla De Er 12. Water Glass Rhapsody 13. A Surrender Triptych

(06/08/12)13曲中9曲がOyvind Braekkeの作曲。3曲目以外は他のメンバーの作曲。ピアノレスなので2曲目のようにけっこうリズムや空間など自由な要素も。一定のリズムで淡々と映画的に進む1曲目、唯一Edward Vesalaの曲ですが自由にリズムが展開する奔放な3曲目、その後もミディアムだったりややゆったりしながら、ルーズで自由なリズムのベースとドラムス。ユニゾンだったりハーモニーだったり、ソロ(各ソロが目立たないのも特徴です)だったりする管が、寄り添いながら進んでいきます。ややモッタリ感はありますが、現代的で北欧的な感じもあります。その中でも8曲目はソロのやり取りで聴かせ、リズムもちょっと激しい感じ。メロディの訴求力が強めの9曲目、珍しくリズムがファンクっぽい感じの10、11曲目。

2007/08/07

Invisible Paths: First Scattering/Steve Coleman

Steveinvisi
サックスの全くのソロアルバムというのは、あまりありません。ソニー・ロリンズのライヴは割と有名ですが、あれは知っているメロディも織り込みながら、楽しませつつサックスのみを聴かせるという趣向でした。スティーヴ・コールマンのこのアルバムは、メロディ的には親しみにくい旋律転換法のフレーズの連続ということもあり、ていねいに吹いている分、聴く人にはサウンドの幅が狭く届くようなかっこうになってしまっているので、71分を聴きとおすのは、やはり一部の人たちだけかな、とも思ってみたり。サックスの演奏者としてはなかなかスゴいものを持っている彼ですけれど、これはこれでひとつの試みとしてはいいですが、やはりデュオ以上の演奏でお願いしたな、というのが正直なところです。


Invisible Paths: First Scattering/Steve Coleman(Tzadik)(輸入盤) - Recorded March 28 and April 10, 2007. - 1. Ascending Numeration: Reformed 2. Shift 3. Possession Of Images 4. Negative Secondary 5. The Witness 6. Invisible Paths 7. Fundamental Disturbance 1 8. Fecundation: 070118 9. Embodiment 10. Facing West 11. Clouds 12. Back At The Crib 13. Cardinal - Fixed - Mutable 14. Fundamental Distrurbance 2 15. Individualization 16. Fecundation: 070118 (Another View)

(07/08/07)全16曲スティーヴ・コールマンの作曲で、何と71分もの長さにわたり、全曲アルト・サックスのソロ。曲は速めの曲やゆったりめの曲などいろいろありますが、バップフレーズでは当然なくて、旋律転換法(歌いにくい無機的に近いメロディでフレーズを奏でていく奏法)のメロディの曲ばかりで、ていねいにフレーズを吹いていっています。咆哮とか、あまり奇抜なことをやっていないのが、安心できる部分でもあるし、人によってはソロなので、71分も聴く力が持続するかどうか心配な部分でもあるし。このレーベルにしては珍しく、ユダヤ音楽の影響はなく、いつもの彼らしいフレーズでマイペースで演奏しています。よく聴くと、よくアイデアが尽きないものだと思います。聴く人を選ぶサウンドですし、彼を追いかける人向けか。

株式会社サイビズの倒産

’00年から’04年にかけて19回、「月刊SOHOコンピューティング」(後に「SOHOドメイン」、さらに「ネットショップ&アフィリ」という誌名に変更)という雑誌に800-1000字ほどのコラムを書かせていただいたことがあります。この雑誌、この春に休刊になってしまったと思ったら、、(株)サイビズという会社が最近、倒産してしまったらしいですね。

ネットショップとかアフィリエイトとかを取り扱っている雑誌の会社ならば、もっと雑誌が売れていてもいいはずなんですが、雑誌業界もネットに押されて、苦境に立たされているんでしょうね。先日ここに書いた、「日経ベストPCデジタル」は、まだ会社としては余力を残しての休刊だったと思うのですが、(株)サイビズはギリギリまで運営を続けていて、倒産、ということになってしまったのでしょう。

自分がちょっと文章を書いていたので残念な気持ちもありますが、時代は大きく変わりつつある、ということなんでしょうね。もちろん、個々の関わっている人たちにしてみれば大打撃なのでしょうが。その後は原稿依頼などがあっても、そろそろ自分が仕事の最先端にいるわけではないので、数回断っています。

Gyorgy Kurtag/Kafna-Gragmente Op.24

1965
このレーベル、今はオーソドックスなクラシックも目立ってきましたけれど、元は現代音楽と古楽が多かったんですね。そして今日のは現代音楽になっています。このクルタークの現代音楽のは、やっぱり聴く人を選ぶ音楽かな、とは思いますが。


Gyorgy Kurtag/Kafna-Gragmente Op.24(ECM New Series 1965)(輸入盤) - Recorded September 2005. Juliane Banse(Soprano), Andras Keller(Vln) - Teil 1: 1. Die Guten Gehn Im Gleichen Schritt... 2. Wie Ein Weg Im Herbst 3. Verstecke 4. Ruhelos 5. Berceuse 1 6. Nimmermehr (Excommunicatio) 7. "Wenn Er Mich Immer Fragt" 8. Es Zupfte Mich Jemand Am Kleid 9. Die Weissnaherinnen 10. Szene Am Bahnhof 11. Sonntag, Den 19. Juli 1910 (Berceuse 2) 12. Meine Ohrmuschel... 13. Einmal Brach Ich Mir Das Bein 14. Umpanzert 15. Zwei Spazierstocke 16. Keine Ruckkehr 17. Stolz (1910/15. November, Zehn Uhr) 18. Traumend Hing Die Blume 19. Nichts Dergleichen Teil 2: 20. Der Wahre Weg Teil 3: 21. Haben? Sein? 22. Der Coitus Als Bestrafung 23. Meine Festung 24. Schmutzig Bin Ich, Milena... 25. Elendes Leben 26. Der Begrenzte Kreis 27. Ziel, Weg, Zogern 28. So Fest 29. Penetrant Judisch 30. Verstecke (Double) 31. Staunend Sahen Wir Das Grosse Pferd 32. Szene In Der Elektrischen Teil 4: 33. Zu Spat ( 22. Okutober 1913) 34. Eine Lange Geschichte 35. In Memoriam Robert Klein 36. Aus Einem Alten Notizbich 37. Leoparden 38. In Memorium Joannis Pilimszky 39. Wiederum, Wiederum 40. Es Blendete Uns Die Mongnacht...

(06/03/18)Gyorgy Kurtagは20世紀ハンガリー出身の作曲家。フランツ・カフカの「カフカ断章」に曲をつけたもので、全40曲でも60分弱。短いものは1分以下、長くて7分台の曲が並んでいます。まさにスペイシーで、そしてアヴァンギャルドな独特な雰囲気をあわせ持つ、不思議な世界が展開されています。静けさが基調の世界に、時にソプラノやヴァイオリンがあまり滑らかでないメロディとして浮かんでくる構図。まさに現代音楽的。 (06年7月26日発売)

2007/08/06

Piano Solo/Stefano Bollani

1964
ステファノ・ボラーニは他レーベルでの録音があって、ECMでしかもソロ・ピアノを、まさか出すとは思わなかったのですが、前半の方は見事にECMらしい耽美的な静けさをたたえるようなインプロヴィゼーションであり、メロディを奏でています。ただ、後半11-15曲目あたりは、レーベルカラーを生かしつつもちょっとジャジーな方向に走っていて、14曲目の「メイプル・リーフ・ラグ」に至っては陽気なラグタイム・ピアノというか、レーベルカラーにこれだけマッチしない曲も珍しいんじゃないかと思える選曲です。まあ、この選曲が通ってしまったのも、彼の個性なのかもしれませんが。


Piano Solo/Stefano Bollani(P)(ECM 1964) - Recorded August 2005. - 1. Antonia 2. Impro 1 3. Impro 2 4. On A Theme By Sergey Prokofiev 5. For All We Know 6. Promenade 7. Impro 3 8. A Media Luz 9. Impro 4 10. Buzzilare 11. Do You Know What It Means To Miss New Orleans 12. Como Fue 13. On The Street Where You Live 14. Maple Leaf Rag 15. Sarcasmi 16. Don't Talk

ステファノ・ボラーニのインプロヴィゼーションは4曲(2-3、7、9曲目)、作曲は3曲(6、10、15曲目)。いかにもECMらしい繊細で温度感の低いソロが多く展開。クラシック的な様相を示す曲も珍しくないです。「インプロ」の4曲は、このレーベルならではのフリーをやっているという感じですが、そこそこメロディらしさも出てくるので、割と自然に入ってきます。4曲目はクラシックのプロコフィエフにインスパイアされたというインプロヴィゼーションで、淡々と静かに進んでいきます。スタンダードやポップスも、優しさや哀愁を垣間見せながら、静かな世界、あるいは水面下を進んでいく雰囲気の曲もあり、自由な演奏の曲もあります。ジャジーで異色な11-13曲目も硬質な感じは少しあります。14曲のみ陽気。15曲目は盛り上がりも。(06年8月30日発売)

Fusin Raijin/Satoko Fujii Min-Yoh Ensemble

Satokofujin
藤井郷子の先月出た作品の3枚目で、これはカナダからの輸入盤。よくまあこれだけアイデアが尽きないものだと思います。ピアノ、トランペット、トロンボーン、アコーディオンという変則編成で、民謡をモチーフに取り上げつつもフリージャズの世界に引き込もうという企画、けっこう面白いです。6曲目はあまりフリー度も高くなく、しかもヴォーカルも入っているので、そのものの世界になりそうな雰囲気もあって目立ちました。ただ、やっぱり民謡とフリージャズを両端において、その中間点で演奏している時が一番面白いような気がします。とにかくアイデアがどんどんあふれてくるようで、またいろいろな彼女の企画を楽しみにしています。


Fusin Raijin/Satoko Fujii(P) Min-Yoh Ensemble(Victo)(輸入盤) - Recorded May 25, 2006. Natsuki Tamura(Tp), Curtis Hasselbring(Tb), Andrea Parkins(Accordion) - 1. Itsuki No Komoriuta 2. Champloo 3. Shimanto 4. Slowly And Slowly 5. Fujin Raijin 6. Kariboshi Kiriuta

(07/08/05)1、6曲目は日本民謡で、他は藤井郷子の作曲。民謡アンサンブルとは言っても、日本人が2人、外国人が2人なので、民謡をモチーフにしつつ、フリージャズの方向に向かっている感じです。ドラムレスの変則編成なので、雰囲気はなかなか出ています。テーマでは「五木の子守唄」のメロディーが出てくるのだけれども、フリージャズのリハーモナイズとアヴァンギャルドな展開の1曲目、沖縄民謡の音階を使っている明るい色彩の2曲目、流れるようなフリー民謡ではあるけれども哀愁と起伏がありつつ11分続く3曲目、ちょっと洗練されているフリーで、他の曲とは色彩感や肌合いが違う4曲目、小品ながらはっきりしたフレーズを繰り返し、盛り上がるタイトル曲の5曲目、ヴォーカルも入ってしっとりとした感じの6曲目。

2007/08/05

Giacinto Scelsi/Natura Renovatur

1963

Giacinto Scelsiの曲をチェロとオーケストラで。難解な演奏だと思いますが、こういう演奏をどこから知って、録音に結び付けるのかは興味のあるところです。チェロのソロとストリングスとの合奏が混在していますけど、やっぱり難しいのには違いないなあ、とは思います。こういうアルバムはヨーロッパだと需要があるのか、それとも冒険的な市場開拓なのかは興味のあるところです。

 

Giacinto Scelsi/Natura Renovatur(ECM New Series 1963)(輸入盤) - Recorded June 2005. Frances-Marie Uitti(Cello), Munchener Kammerorchester, Christoph Poppen(Cond) - 1. Ohoi 2. Ave Maria 3. Ahagamin 4-6. Ygghur 7. Natura Renovatur 8. Allelija

(06/08/12)Giacinto Scelsiは20世紀イタリアの現代音楽家。ここでは、2、4-6、8曲目がチェロのソロで、1、3、7曲目がストリングスの合奏。12音階主義でスタートした彼のこと、難解な部分もあるのでしょうが、ただひたすらに持続音の連なりとサウンドで時系列的に漂っていく、というイメージもオーケストラにあります。緊張感のかなりあるサウンド。チェロのソロは緊張感にしろ癒しにしろゆったりした感じ。メロディも非メロディも。

バッカス/藤井郷子クァルテット

Satokobacc
先月出た藤井郷子のアルバム3枚のうち2枚目。このメンバーでは’00年からアルバムを出していて、もう5枚目になります。エレクトリック・ベースとロック的なドラムスの手法が、ファンク的重量級サウンドを生んでいて、なおかつ各楽器のソロやデュオの場面もふんだんにあって、その緩急自在が面白いところ。全体的には外側に向かってエネルギーを発散させているようなサウンドで、難解なフリージャズの部分もあるにしても、けっこうスッキリと聴けてしまいます。ただ、ポップ的な聴きやすさとは対極に位置しているので、ちょっと聴く人を選ぶかもしれませんが。この楽曲の構築と自由のバランスがけっこういいんですよね。


バッカス/藤井郷子(P)クァルテット(Onoff)
Baccus/Satoko Fujii(P) Quartet(Onoff) - Recorded December 7, 2006. Natsuki Tamura(Tp), Takeharu Hayakawa(B), Tatsuya Yoshida(Ds) - 1. Sunset In Savannah 2. In The Town Called Empty 3. Natsu Mae 4. Flying Elephant 5. Bacchus 6. In The Town You Don't See On The Map 7. Waltz For Godzilla 8. Natu Mae (With Effect)

全曲藤井郷子の作曲。このメンバーでは5枚目で、相変わらずのフリージャズ入りファンクがカッコ良い。アップテンポの8分の6拍子を基調に4人でガンガンとせまって来て、ソロ・ピアノやベース・ソロがある1曲目、薄暮の中近東のような一部が5拍子基調のメリハリがついている2曲目、バリバリとフリーフォームで攻めまくっているキメもある3曲目(8曲目はエフェクトあり)、重量級でエキゾチックなメロディのテーマで、各ソロやデュオの部分もあって緩急自在に展開し、ドラマチックな13分もの4曲目、再びこれでもかと言わんばかりに攻撃的なフリーに突入するタイトル曲の5曲目、7拍子が基調での薄暗い雰囲気のあるファンクの6曲目、やはり重量級のテーマで時々ストップがありながらガンガン攻める部分もある7曲目。(07年7月25日発売)

2007/08/04

Radiance/Keith Jarrett

1960 キース・ジャレットのソロ作って、購買層はどうなのかなと、考えてみました。ジャズ・ファンだったら通常はスタンダーズのトリオの方がお目当てだろうし、ソロの方は、毎度そうですが、特に今回はジャズのフォーマットというのがほとんど出てきません。それでも来日公演の時は大きいホールが満席になるし、これはもう、とにかくキース・ジャレットのピアノのファンというのが広く存在するのではないかと思われます。即興演奏ながらも、現代音楽やクラシックに近いような気がします。メロディももちろんですが、時に情念の高まりがふつふつと音に変わっていくさまを見せつけられると、やっていることはけっこう難解なのだけれども、それがスーッと耳の中に溶け込んでしまう、不思議な感覚。ここまで来てしまうと、本当に唯一無二の世界ですね。売れているだろうなあ。

 

Radiance/Keith Jarrett(P)(ECM 1960/61) - Recorded October 27 and 30, 2002. - 1-13. Part 1 - 13 Osaka, October 27, 2002 14-17. Part 14-17 Tokyo, October 30, 2002

CD2枚組のソロ・ピアノでのライヴ。大阪公演全部(CD1枚目のパート1-9と2枚目のパート10-13)と、東京公演の一部(CD2枚目のパート14-17)を収録。各パートを短めにしているのは近年の傾向かもしれませんが、一連の長いドラマとして聴くことも可能。ますます内省的に抽象的になってきた部分もありますし、3、6、13、15-16曲目のようなゆったりとしたクラシック的な、あるいは8曲目など牧歌的な明るい曲も含まれています。1曲目から自己の内面との対峙がはっきりとしているように感じ、その静かな緊張感に心が締め付けられるような気分も少々。時に移ろいゆくメロディと伴奏のバランスの良さで、重く、そして時に軽く、心にせまってきます。非ジャズ的な局面で、これだけ聴かせるのも珍しい。(05年4月27日発売)

2007/08/03

Silvestrov/Part/Ustvolskaya Misterioso/Alexei Lubimov/Alexander Trostiansky/Kyrill Rybakov

1959
20世紀から21世紀にかけて作曲された現代音楽。ECM関係はジャズでもクラシックでも、既成の味付けを変えたり深めたりするよりは、新たな地平を切り開く局面の方が強いため、時に聴く人を選ぶアルバムを発表したりしています。まあ、現代音楽が好きな方には、これが当たり前なのかもしれませんが。ただ、今日の2枚のうち、「Misterioso」はスペイシーで、難解さも低めのため、それほど抵抗なく聴けてしまいました。


Silvestrov/Part/Ustvolskaya Misterioso/Alexei Lubimov(P)/Alexander Trostiansky(Vln)/Kyrill Rybakov(Cl, P)(ECM New Series 1959)(輸入盤) - Recorded May 2005. - Valentin Silvestrov: 1-3. Post Scriptum 4. Misterioso Arvo Part: 5. Spiegel Im Spiegel Galina Ustvolskaya 6-8. Trio 9. Sonata

(06/10/07)ウクライナ、エストニアはじめ旧ソ連の曲も集めたアルバム。曲はGalina Ustvolskayaのものが’50年前後で、他は新しい作曲です。トリオのものは6-8曲目のみで、デュオの組み合わせのものが多い。シルヴェストロフの1-3曲目はあまり難解ではないですが、4曲目は空間的な現代音楽。ペルトはスペイシーで明るく、素朴な色合いを生み出しています。Ustvolskayaはやや難解さはありながらも、浮遊感のあるメロディ。

2007/08/02

Luys De Narvaez/Musica Del Delphin/Pablo Marquez

1958
古楽って16世紀前半あたりだと、まだバロックと言ったかどうか(不勉強ですいません)。楽器も当然ギターの先祖のような楽器だったと思いますが、ここではギターでの演奏になっています。昔の音楽なので、聴きやすいですね。スペインの風土から来る、青空や哀愁がそれぞれの曲にちりばめられているようで、風景として印象に残って、何回も聴きたくなりますね。


Luys De Narvaez/Musica Del Delphin/Pablo Marquez(G)(ECM New Series 1958)(輸入盤) - Recorded April 2006. - 1. Ptimer Tono Por Ge Sol Re Ut 2. Cancion Del Emperador (Mille Regretz De Josquin) 3. Fantasia Del Quinto Tono 4. Segundo Tono 5. Diferencias Sobre Conde Claros 6. Tercero Tono 7. Fantasia Del Primer Tono 8. Baxa De Contrapunto 9. Quarto Tono 10. Diferencias Sobre El Himno O Gloriosa Domina 11. Quinto Tono De Consonancia 12. Je Veulx Laysser Melancolie De Richafort 13. Sesto Tono Sobre Fa Ut Mi Re 14. Sanctus Y Hosanna (Missa Faisant Regretz De Josquin) 15. Septimo Tono Sobre Ut Re Mi Fa Mi 16. Fantasia Del Quarto Tono 17. Octavo Tono

(06/07/01)Luys De Narvaezは16世紀スペインの作曲家。この時代特有の哀愁の漂う、そして時にスペインの青空のようなカラッとしたギターを聴くことができますが、元楽器はギターより古いものであったことが予想されます。1-3分ほどの曲が多く、10曲目が7分弱あって、全17曲を45分ほどで演奏していますが、この時代の音世界にひたるには、いい長さではないかな、と思わせます。特に、哀愁系の曲は深い味わいがあります。

2007/08/01

クロスワードパズル/ダブルデュオ

Doubleduo
藤井郷子田村夏樹関連で、3枚アルバムが最近出ています。これはその中の1枚。オランダでのフリー・インプロヴィゼーションのライヴ。ほとんどが非メロディ的な進行なので、聴く人を選ぶでしょうが、ピアノの相手はオランダの重鎮、ミシャ・メンゲルベルクなので、相手にとって不足はない、というか、かなりのインプロヴィゼーションが展開しています。文字通りクロスワードパズルのように縦と横を瞬間的に合わせ、完成させていく動き。2トランペット、2ピアノでバラバラにならずかみ合っていくサウンドが印象的です。ただし、本当に抽象画を見ているような感じなので、それを解釈するのは自分次第。ある意味解釈できるのかどうかも視野に入れて。


クロスワードパズル/ダブルデュオ(Libra)
Crossword Puzzle/Double Duo(Libra Rocords) - Recorded September 22, 2005. Angelo Verploegen(Tp), Misha Mengelbelg(P), Natsuki Tamura(Tp), Satoko Fujii(P) - 1. A Butterfly, Bee, Mantis, And Grasshopper 2. A Prescription

文字通り、トランペットとピアノのダブル・デュオのフリー・インプロヴィゼーション。2曲あって、1曲目が34分弱、2曲目が10分弱。静かな場面、盛り上がる場面など、ドラマチックに進行して行きますが、インプロヴィゼーションのシリアスさとしてはかなりハードなので、聴く人を選ぶかも。メロディと非メロディの間を行きつ戻りつしつつ、静寂の世界から轟音の世界まで幅広くせまってきます。非メロディの方がかなり強調されていますけれど、その音選びの繊細さと大胆さ、センスは見事かも。時にフリー・ジャズ的、時にクラシック的にも聴こえ、硬質な中にも変化を見ることができます。どちらがどのミュージシャンか、というのはサウンドの性格上、聴き分けるのは難しいですが、協調して共通のサウンドを創り上げようとしています。(07年7月25日発売)

The Spaces In Between/John Surman

1956

ジョン・サーマンのリーダー作。今回はベースとストリング・クァルテットとの演奏で。とうとうサーマンまでクラシック寄りの演奏を選択してしまったか、と思いましたが、彼の哀愁漂うホーンは、なかなかこの編成に合っていると思います。現に全曲彼の作曲ですし。なかなか味わいのある演奏になっていますが、やはりクラシック/現代音楽色の強めな部分もあるストリングス・アレンジでありますね。でもこの中で吹かれる、バリトン・サックスやバス・クラリネットはなかなか雰囲気が出ていていいんじゃないでしょうか。ボーダーレスにとどまらない、不思議な安ど感のあるサウンドが響き渡ります。

 

The Spaces In Between/John Surman(Ss, Bs, Bcl)(ECM 1956)(輸入盤) - Recorded February 2006. Chris Lawrence(B), Trans4mation: Rita Manning(Vln), Patrick Kiernan(Vln), Bill Hawkes(Viola), Nick Cooper(Cello) - 1. Moonlighter 2. You Never Know 3. Wayfarers All 4. Now And Again 5. Winter Wish 6. The Spaces In Between 7. Now See! 8. Mimosa 9. Hubbub 10. Where Fortune Smiles 11. Leaving Harrow

(07/06/03)全曲John Surmanの作曲。今回はベースとストリング・クァルテットとの共演。ベースはジャズ畑の人らしく、ピチカートでラインを弾いていきますが、ストリング・クァルテットは室内楽・現代音楽的な味付け。ゆったりとした感じで、温度感も低めの演奏が続いていき、そこにソプラノサックス、バリトン・サックス、バス・クラリネットが状況に応じて加わっていくサウンド。なかなかに個性的で、やはりワンマン的な演奏ですが、味わいとミステリアスな雰囲気が残ります。全体的にはクラシック・現代音楽系のサウンドの方が勝っています。ヨーロッパ特有のやや暗いエキゾチックさが出ているホーンとそれを取り巻くストリングス。タイトル曲の6曲目はなぜかヴァイオリンのソロ。7曲目はリズミカルで明るい感じなので少々異色かも。

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