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2006年9月の記事

2006/09/30

ラッハ・ドッホ・マール/山中千尋

Chihirolach
私のアルバムコメントって長さを決めてあって、1枚あたり6-8曲だとコメントしやすいのですが、あまり多くの曲だと抜粋という手を使います。ただ、今回12曲、詰め込むのが少々大変。通り一遍の簡単な説明だけで既定の長さに行ってしまうので、どうしようか迷いましたが、曲の変化に合わせて全曲掲載することに。3曲目がローランド・カークの作曲とか、入れたかったんですけれどもねえ。50分強で12曲、これまた時間的にも詰め込んでありますが、アイデア的には変化に富んでいて、凝縮されていてかえって良かったです。そして共演歴のある気心の知れたベースとドラムス。そのままピアノを替えればブラッド・メルドー・トリオになりますが、音楽性はピアノが替わるだけでかなり違ったものになりますね。とにかく飽きないアルバムでした。DVDはたった4分(CD7曲目)ですが、ピアノを重点的にとらえています。

ラッハ・ドッホ・マール/山中千尋(P)(Verve)
Lach Doch Mal/Chihiro Yamanaka(P)(Verve) - Recorded June 14 and 15, 2006. Larry Grenadier(B), Jeff Ballard(Ds), John Carlini(G on 1, 5, Banjo on 3) - 1. Quand Biron Voulut Danser 2. Sabot 3. Serenade To A Cuckoo 4. RTG 5. The Dolphin 6. Night Loop 7. One Step Up 8. Lach Doch Mal 9. Liebesleid 10. Mode To John 11. What A Diff'rence A Day Made 12. That's All

ラリー・グレナディア(B)、ジェフ・バラード(Ds)とのトリオプラス、ジョー・カーリーニ(G、Banjo on 1, 3, 5)。山中千尋作は12曲中4曲(2、6-8曲目)。慣れたメンバーとのトリオでのセッション。トラディショナルの雰囲気を感じさせないメロディがきれいなラテン風の1曲目、リズミカルな渋いテーマでソロはけっこうイケる2曲目、ミディアムでの哀愁メロディがなかなかの3曲目、ジェリ・アレン作のスピーディでスリリングなピアノの4曲目、中間色的なボッサが心地良く響く5曲目、アップテンポでこれでもかとせまり来る6曲目、メカニカルなテーマと変拍子でエレピが絡む7曲目、アップテンポのソロのラグタイム・ピアノの小品でタイトル曲の8曲目、クライスラーの曲を8分の7拍子でこなす9曲目、マッコイ・タイナー作をバリバリと弾く10曲目、エレピも入れて変幻自在のテンポとアレンジをこなす11曲目、女性らしいスタンダードの12曲目。(06年9月13日発売)

Caoine-Biber/Hartke/Reger/Rochberg/Bach/Michelle Makarski

1587

バロック音楽と現代音楽が例によってカップリングされたNew SeriesのMichelle Makarskiによるヴァイオリンソロのアルバム。彼のソロはNew Seriesでは初めてではなかったかと思いますが、ソロで、しかもNew Seriesお得意の手法ということで、出す条件として、カップリングというのはあったのではないかと思います。現代音楽の方はそんなに難解でないものから、やはり難解だと思えるものまで揃っています。この後、ある時期を境にこういうアルバムは少なくなるのですが、それまではトーマス・デメンガに限らず、普通に行われていました。

 

Caoine-Biber/Hartke/Reger/Rochberg/Bach/Michelle Makarski(Vln)(ECM New Series 1587)(輸入盤) - Recorded June 1995. - Heinrich Ignaz Franz Biber: 1. Passacaglia In G Minor Stephen Hartke: 2. Caoine Max Reger: 3. Chaconne From Sonata In A Minor Op.91 George Rochberg: 4-14. Caprice Variations Johann Sebastian Bach: Partita Nr.1 In B Minor BWV1002

(04/04/11)有名なバッハを含め、17世紀の作曲家から20世紀の現代音楽家までの、さまざまな曲を集めたヴァイオリンのソロのアルバム。Heinrich Ignaz Franz Biberとバッハはやはりバロック音楽ですが、タイトル曲の現代音楽家Stephen Hartkeの作品も、引っかかりのあるフレーズですが、まあ聴きやすい仕上がりになっています。3曲目は哀愁しっとり系。George Rochbergの作品はやや難解な現代音楽らしい仕上がりです。

2006/09/29

ブラッグタウン/ブランフォード・マルサリス

Braggtown
ブランフォード・マルサリスの新譜です。今はユニヴァーサル・ミュージックから出てるからいいけれど、東芝EMI時代はCCCDとの戦いでしたね。CCCDのため、欲しいCDも買わなかったことがありました。さて、今回の作品、個々の曲としては極めて完成度が高くて、つい聴き込んでしまいました。変拍子が多かったり、あるいは拍子がなかったり、モーダルというよりはややフリーに近かったりと、好みの点ではいろいろあるでしょうけれど。ただ、元気な曲と静かな曲の落差が激しく、続けて聴くと不自然な波があるのがちょっと気になります。通常ですとアルバム内で感じる落差はそんなにはないんですけれども。当然に水準以上だとは思うのですが、やっぱり聴く人を選ぶアルバムかな、と思います。


ブラッグタウン/ブランフォード・マルサリス(Ts、Ss)(Marsalis Music)
Braggtown/Branford Marsalis(Ts, Ss)(Marsalis Music) - Recorded March 13-16, 2006. Joey Calderazzo(P), Eric Revis(B), Jeff "Tain" Watts(Ds) - 1. Jack Baker 2. Hope 3. Fate 4. Blakzilla 5. O Solitude 6. Sir Roderick, The Aloof 7. Black Elk Speaks 8. Laughin' & Talkin' With Higg

ジョーイ・カルデラッツォ(P)、エリック・レヴィス(B)、ジェフ・”テイン”・ワッツ(Ds)とのクァルテット。ブランフォード・マルサリスの作曲は8曲中3曲(1、3、6曲目)で、5曲目以外はメンバーの作曲。爆発しそうな曲からクラシック(5曲目)やバラードなど静かな曲まで守備範囲は広い。変拍子で思いっきりモーダルに攻めまくっている激しい1曲目、非常に繊細で美しいメロディをもつ、盛り上がりの潮が満ちては引いていくような2曲目、そしてこれまたバラードがしっとりと続く3曲目、ゴジラをモチーフに、やはり変拍子でパワフルに吹きまくり、弾きまくり、叩きまくる4曲目、ヘンリー・パーセル作の、この編成でもバロック音楽ができてしまう5曲目、流れるように進んでいく、静かでメロディのきれいなバラードの6曲目、ちょっとややこしいテーマで、変幻自在な演奏が続く14分台の7曲目、不思議なビートの上をソロが飛ぶ8曲目。(06年9月12日発売)

Meeting Point/Egberto Gismonti

1586 今日のアルバム、国内盤で出ていたのですが、店頭で見つからず、輸入盤を購入しました。後日、あるお店でクラシックの現代音楽のコーナーで発見、なるほどなあ、と思ったものです。そして、このアルバムにも紙カバーが付いています。そろそろ少しずつ紙カバー付きのジャケットに移行していく時期でもあります。ECMであってNew Seriesではないけれども、実質オーケストラとの共演の現代音楽ということで、このブログでのジャンルもそういうことにしておきました。確かに2曲ほど、過去のアルバムでの再演曲があったのですが、やっぱりオーケストラと一緒となると印象が違ってきますね。

 

Meeting Point/Egberto Gismonti(P)(ECM 1586) - Recorded June 1995. Lithuanian State Symphony Orchestra, Gintaras Rinkevicius(Cond) - 1. Strawa No Sertao - Zabumba 2. Strawa No Serato - Maxixe 3. Musica Para Cordas 4. Frevo 5. A Pedrinha Cai 6. Eterna 7. Musica De Sobrevivencia

作曲は全曲エグベルト・ジスモンチ。ECMからの発売ですが、クラシックや現代音楽の雰囲気が濃く、New Seriesでも良かったのかな、と思います。正規の教育を受けているとのことで、曲も本格的。ブックレットにも一部オーケストラの楽譜が載っています。3、7曲目はアレンジを変えての再演曲。クラシックの香りで緩急自在な展開を示す、わずか各2分強の組曲になっている1-2曲目、比較的分かりやすいメロディで、ちょっと哀愁も含んだまろやかな、そして綾織り的なサウンドもある13分台の現代音楽の3曲目、ピアノがカラフルに舞い飛び、そこにオーケストラが絡む4曲目。やはり組曲になっているような、ピアノが活躍する急速調の5曲目と、ゆったりとした6曲目。かつてのアルバムタイトル曲の凝縮版(?)の7曲目。

2006/09/28

Visible World/Jan Garbarek

1585 ヤン・ガルバレクはECMの看板のアーティストの1人ですけれど、やっぱりアルバムを出すたびに独自路線を歩んでいきます。これもジャズだろうか、という人はたぶんいると思いますよ。ジャジーなビートはなく、マヌ・カッチェやマリリン・マズールが参加して、彼らのビートに乗って(参加していない曲もありますが)、ひたすらメロディを奏で、時にミステリアスな路線に入っていく、という75分間です。ただ、それでもこの人のファンが少なくはないのは、シャープな音色の強度のある(というよりは印象の深い)メロディを奏でているサックスにあると思うからです。何曲かはおそらく耳について離れないぐらいのメロディを耳にするでしょう。

 

Visible World/Jan Garbarek(Ss, Ts, Key, Per, Maraaker, Cl)(ECM 1585) - Recorded June 1995. Rainer Bruninghaus(P, Synth), Eberhard Weber(B), Marilyn Mazur(Per, Ds), Manu Katche(Ds), Trilok Gurtu(Tabla), Mari Boine(Vo) - 1. Red Wind 2. The Creek 3. The Survivor 4. The Healing Smoke 5. Visible World 6. Desolate Mountains 1 7. Desolate Mountains 2 8. Visible World 9. Giulietta 10. Desolate Mountains 3 11. Pygmy Lullaby 12. The Quest 13. The Arrow 14. The Scythe 15. Evening Land

11曲目のトラディショナルを除き、ヤン・ガルバレクの作曲ないしは共作。「トゥエルヴ・ムーン」とだいたい同じメンバーですが、今回は彼の多重録音(ではないものもあります)に共演者(曲によって参加者や人数が変化)が音を重ねているようです。多くの曲は日本人の心の琴線に触れる(特に2-3、12曲目か)、素朴ではっきりとしたサックスのメロディと響きがかなり印象的。1曲目は多重録音の美しい哀愁のメロディ。3曲目の哀愁とその迫力あるサウンドも見事。タイトル曲の5、8曲目はスペイシーでミステリアス。同じようなな方面の曲は6曲目、静かな折衷路線は7、9曲目。トラディショナルの11曲目も、素朴でもメロディが強い感じ。エキゾチックな14曲目。唯一ヴォーカルが参加している民族的な路線の12分台の15曲目。

Mo'Bop 3/渡辺香津美

Mobop3
渡辺香津美のMo'Bopシリーズの3枚目。ちょっと前作、前々作に比べて選曲やサウンドが地味になったかなあ、という印象もありますが、個々の演奏を聴いてみると、やっぱりこのメンバーだもの、スゴい演奏が展開しています。ただ、こういうバンドって、1作目より2作目、2作目より3作目を期待してしまうってこと、ありますよね。その分、3人のコラボレーションの進化や、実際はハードに攻めているんだろうけれども、気分的にはリラックスしたやり取りのように聴こえてしまうこともあったりします。個人的にはエグベルト・ジスモンチの曲をこういう風に料理するかあ、という7曲目が逆に爽快で面白かったでした。もちろんロック的な再演曲の9曲目もいい感じ。


Mo'Bop 3/渡辺香津美(G)(ewe)
Mo'Bop 3/Kazumi Watanabe(G)(ewe) - Recorded May 2006. Richard Bona(B), Horacio "El Negro" Hernandez(Ds), Guest: Cyro Baptista(Per on 1-2, 7, 9) - 1. Emboss 2. Somewhere In Time 3. Tiger Beam 4. Lawns 5. Dragon's Secret 6. Good Fellows 7. Infancia 8. Stolen Moments 9. Manhattan Flu Dance

リチャード・ボナ(B)、オラシオ・”エル・ネグロ”・エルナンデス(Ds)とのトリオで、シロ・バプティスタが1-2、7、9曲目に参加。渡辺香津美作曲は4曲(1、3、5、9曲目)。派手さやインパクトこそ少し薄れてきたものの、マイペースなところが目立ってきて、それはそれで楽しめます。ラテンのりのメロディがはっきりとしている小気味良い1曲目、小刻みでのりの良いリズムの上を滑るように進むギターという感じの2曲目、丁々発止のリズムの上をギターが縦横無尽に駆け巡る3曲目、カーラ・ブレイ作のメロディアスなしっとりしたバラードの4曲目、ラテンのりでキメも多く、リズムに比べメロディが淡々としている感じの5曲目、ミディアムでちょっと弾むような楽しさのある6曲目、何とエグベルト・ジスモンチの曲をアップテンポで彼ら流に料理する7曲目、オリヴァー・ネルソン作をミディアムのファンクで演奏する8曲目、ヘヴィーでロックのサウンドのような9曲目。(06年9月6日発売)

2006/09/27

Window Steps/Pierre Favre

1584 このあたりに発売された(?)国内盤で2-3種類ですが、予告や広告には出たものの、実際には店頭で発見できなくて輸入盤を購入したものもあります。このアルバムもそのひとつ。発売枚数が少なくなったのか、それとも予告だけで実際には発売されなかったのかは謎。ただ、この時期以降、輸入盤でしか入手できないECM盤(国内盤にならないもの)が少し増えた気がしています。国内メーカーの方で売れるものの絞込みをかけたのでしょうか。ここのピエール・ファヴル、パーカッショニストとして個性的なサウンドを聴かせる場面もあれば、パーカッションは奥に引っ込んで、作曲で聴かせる部分もあります。1曲目あたり、なかなかいいな、と思いました。

 

Window Steps/Pierre Favre(Per)(ECM 1584) - Recorded June 1995. Kenny Wheeler(Tp, Flh), Roberto Ottaviano(Ss), David Darling(Cello), Steve Swallow(B) - 1. Snow 2. Cold Noise 3. Lea 4. Girimella 5. En Passant 6. Aguilar 7. Passage

ピエール・ファヴルの作曲は1-4曲目で、5-6曲目が参加者のフリー・インプロヴィゼーション。出るところではメロディアスなパーカッションでひときわ個性を際立たせています。曲により参加メンバーが変化します。タイトルどおり「雪」を表わす冬の哀しみのメロディでせまってくる、叙情的な1曲目、民族的でパーカッシヴなテーマかと思ったら、ベースやパーカッションがソロをとっていく2曲目、しっとり感の高いメロディアスなバラードが印象に残る3曲目、静かな出だしからリズミカルなベースになり他の楽器が絡んでいく4曲目、4ビート的に浮遊感のある小品のインプロヴィゼーションの5曲目、スペイシーでどんよりとした雲が広がるような6曲目、デヴィッド・ダーリング作のやはりゆったりとスペイシーに進んでいく7曲目。

Klavier Feuer/ヴォルフガング・ダウナー・トリオ

Wolfgang 澤野工房は旧譜をたまに出します。これは幻級の作品のようですが、かなりポピュラリティーの高いサウンドのようですね。まあ、変に頭でっかちなアルバムよりは、こういった明るいサウンドで有名曲も多く、ノリの良いアルバムの方に人気が集まるのでしょうけれど。エバーハルト・ウェーバーやピエール・ファヴルといった、後年ECMで作品を録音するミュージシャンがどんな音を出すかな、というのも楽しみのひとつでしたが、意外に普通のジャズメンの音でした。当時の制約があったとは言え、全34分で12曲というのはちょっと詰め込みすぎかな、とも思います。こういうアルバムでも1曲5-6分は聴いていたいものですもんね。曲で楽しめますけれど。

 

Klavier Feuer/ヴォルフガング・ダウナー(P)・トリオ(澤野工房)
Klavier Feuer/Wolfgang Dauner(P) Trio(Atelier Sawano AS060) - Recorded March 1967. Eberhard Weber(B), Pierre Favre(Ds) - 1. What Now You Love 2. These Boots Are Made For Walking 3. A Man And A Woman 4. Merry-Go-Round 5. Yesterday 6. The Shadow Of Your Smile 7. Michelle 8. Noa Noa 9. Watermelon Man 10. Girl From Ipanema 11. A Hard Day's Night 12. Typically English

ヴォルフガング・ダウナー作は8曲目のみで、うまく彼ら流にアレンジされているビートルズの曲が3曲(5、7、11曲目)、ボサノヴァやスタンダード、映画音楽もありのオンパレード。4ビート(ワルツだと3ビート?)の曲も。メンバーを見ると後のECM系のドラムス、ベースなのですが、ポップスをやっているように攻めていて、1曲目から陽気なポップスノリで、何だこの陽気さは、とビックリします。わずか34分に2-3分台の曲が12曲の収録。ただ、時々ピアノのフレーズにはさりげなく硬派な味わいを残しています。当時の流行が分かるような曲目。「男と女」もアップテンポのテーマが5拍子が基調で軽快な3曲目、ちょっとヘビーなサウンドの4曲目、爽やかなアップテンポのラテンノリの8曲目。ポピュラリティあふれるアルバム。(06年9月1日発売)

 

2006/09/26

Psalms Of Repentance/Alfred Schnittke

1583

Alfred Schnittkeのアルバム。中世ロシア正教に関する物語を元に作曲とのことですが、宗教的な静けさ、深淵さもありますけど、やはり現代音楽的なサウンドになっているように感じます。反響音的には教会で録音したようなエコーがかかってはいますけど、これを出すというのは、ヨーロッパ的にはカソリックとロシア正教との対立面などもあって、どうなのよ、とも思いますが、意外に芸術の世界では融和しあっているのかもしれません。New Seriesのメインのターゲットはやはりヨーロッパだと思いますので。

 

Psalms Of Repentance/Alfred Schnittke(ECM New Series 1583) - Recorded February, 1996. Swedish Radio Choir, Tonu Kaljuste(Cond) - 1. 1 2. 2 3. 3 4. 4 5. 5 6. 6 7. 7 8. 8 9. 9 10. 10 11. 11 12. 12

邦題「回心の詩篇」。シュニトケは20世紀ロシアの現代音楽家。各曲にロシア語のサブタイトルがありましたが、タイプ方法が不明のため割愛。中世ロシア正教を巡る物語をもとに作曲したとのこと。歌詞は当然ながらロシア語。曲の雰囲気は中世的ではなく、確かに宗教的な深遠な響きをもつものの、メロディやハーモニーの進行が複雑で現代音楽的。浮遊感のある寒色系のメロディは研ぎ澄まされていて、全体で包み込んできます。(99年9月8日発売)

Critical Mass/Dave Holland Quintet

Davecritic
デイヴ・ホランドの、ECM独立後の初のクインテット作品(ビッグ・バンド作品は昨年あり)。やっぱりこういう変拍子サウンド、最近は珍しくなくなりましたけれど、なかなか出す人がいないなあ、と思います。技術的に厄介だということもありますが、聴く人がカウントすら難しいような拍子を楽々とこなしていくようなミュージシャンってなかなかいないですよね。ドラムスが前クインテット作から入れ替わりましたけれど、今回のネイト・スミスもなかなかのドラマーです。ややこしいリズムなのに難なくこなしています。まあ、曲は名曲的なメロディアスさというわけではないですが、昔M-BASE関係の変拍子ファンクが好きだった身にとっては、やっぱりこたえられませんね(笑)。


Critical Mass/Dave Holland(B) Quintet(Dare2 Records)(輸入盤) - Recorded December 2005. Chris Potter(Ts, Ss), Robin Eubanks(Tb), Steve Nelson(Vib), Nate Smith(Ds) - 1. The Eyes Have It 2. Easy Did It 3. Vicissitudes 4. The Leak 5. Secret Garden 6. Lucky Seven 7. Full Circle 8. Amator Silenti

(06/09/23)Dave Holland作は、1-2、5-6曲目で、他の曲はメンバー作曲。相変わらず複雑な変拍子の曲のオンパレード。変拍子的ラテンノリというか、それを涼しげな顔をして皆で演奏していく1曲目、ミディアムの変拍子ファンク的な渋めのフレーズが続いて次第に盛り上がっていく2曲目、クリス・ポッター作の基本的に3拍子系でややアグレッシヴなアドリブも聴ける3曲目、ネイト・スミス作のミディアムでやや浮遊感のあるファンク・リズムと渋めのサウンドで彩っていく4曲目、エキゾチックな香りで無国籍風なサウンドの5曲目、細かいリズムでノリ良く攻めていく6曲目、ロビン・ユーバンクス作のちょっとひねくれていてリズムが細かい7曲目、スティーヴ・ネルソン作のバラードからフリーになったりと変幻自在の8曲目。

2006/09/25

Zigzag/Egberto Gismonti

1582 このエグベルト・ジスモンチも、通常のジャズのイメージで語ると、やっぱりジャズではない、ということになるのでしょうけれど、書き譜の部分とインプロヴィゼーションの部分があるところをみれば、広い意味でのジャズの範疇には入ってくるのではないかと思います。彼はギターとピアノを使い分けていますが、もう一人のNando Carneiroというギタリストも、ジスモンチに似たタイプの演奏をする人で、アルペジオその他のフレーズの洪水現象が2倍になって楽しめる、というオマケつきでもあります。現代音楽や中南米の音楽の影響を受けている彼の音楽を、小編成なのでストレートに聴くことができます。

 

Zigzag/Egberto Gismonti(G, P)(ECM 1582) -Recorded April 1995. Nando Carneiro(G, Synth), Zeca Assumpacao(B) - 1. Zigzag 2. Mestico & Caboclo 3. Orixas 4. Carta De Amor 5. Um Anjo 6. Forrobodo

全曲エグベルト・ジスモンチの作曲。不思議なもので、ギターの彼は、メロディーよりもアルペジオの洪水で迫ってくる印象です。ピアノのときもそのような印象があるので、小人数(トリオ)編成のこのアルバムは、なかなか渋い部類のアルバムです。カラーがドラマチックに変わっていく、優しい音の洪水とでも言うべき11分台のタイトル曲の1曲目、しっとりした哀愁や情熱などががやや現代音楽的なフレーズの間から感じられる、変化していく15分台の2曲目、落ち着いた、のどかで素朴、広大な風景が広がる3曲目、原初的なサンバを想像するような、土着的な感じもある4曲目、ピアノでしっとりとしたバラードを優しく奏でていく5曲目、やはりピアノのスピーディでスリリングなフレーズが続く、基調としてはやや明るめな6曲目。

Bill Frisell, Ron Carter, Paul Motian

Billronpaul
ビル・フリゼールポール・モチアンは、以前長らくジョー・ロバーノ(Ts)とトリオを組んでいたので、その音はだいたい想像がつきますが、そこに正統派のロン・カーター(私はあまりこの人、得意ではありませんが)が加わることによって、どうなるかが一番楽しみなところでした。やっぱりベースは安定した演奏で、聴きやすくなっていますが、基本的なペースはビル・フリゼールによる、といったところでしょうか。まあ、ギター・トリオなのでそうならざるを得ないのですが。ビル・フリのファンの方にはけっこう受け入れられると思いますけれど、オーソドックスなジャズのスリルを求めている人には、どうかなあ、と思える1枚ではありますね。


Bill Frisell(G), Ron Carter(B), Paul Motian(Ds)(Nonesuch)(輸入盤) - Recorded February 14 and 15, 2005. - 1. Eighty-One 2. You Are My Sunshine 3. Worse And Worse 4. Raise Four 5. Pretty Polly 6. On The Street Where You Live 7. Monroe 8. Introduction 9. Misterioso 10. I'm So Lonesome, I Could Cry

(06/09/23)Bill Frisell作は3、7曲目、Paul Motian作は8曲目。異端児2人と正統派(ロン・カーター)の組み合わせが面白い。ロン・カーターのマイルスとの共作1曲目からして、異様なヘタウマ的な雰囲気が充満してタダモノではない演奏をうかがわせます。明るいはずの曲が異様に浮遊感とスペイシーにあふれる2曲目、ちょっと暗めで哀愁を感じるようなギターの3曲目、セロニアス・モンクの曲をギターでモンク的に料理しているような4曲目、トラディショナルを空間的でやや重めに料理する5曲目、軽快なメロディとともに明るく進んでいく6曲目、やはりのどかなカントリー的な7曲目、哀しみのあるメロディを持ったワルツの8曲目、陽気にせまってくるやはりモンク作の9曲目、ハンク・ウィリアムス作をのどかに演奏する10曲目。

2006/09/24

MA/Heinz Reber

1581

ハインツ・レイバーの日本人または韓国人に演奏してもらうための曲を作っていて、実際に演奏してもらったアルバム。確かに「間」の思想を表現するとなると、そういうことになるのでしょうが、よくこういうニッチな曲を拾ってきて、アルバムにしたと思います。しかも、これは確か、日本盤でも出ていたので、それを買った記憶があります。邦題がちゃんとついてますもんね。西洋からすると東洋のこういう間の思想的なものには興味があるかもしれないですが、聴いた限りでは実験作的な意味合いを持つのかな、という気もしています。

 

MA/Heinz Reber(ECM New Seires 1581) - Recorded June 1994. Kimiko Hagiwara(Soprano), Dhyung Kim(Baritone), Junko Kuribayashi(P) - Two Songs 1. School Of Vienna Langsamer Gleitflug Uber Die Erinnerungslandschaft 2. School Of Athens - School Of No Konzertante Fassung Der Gleichnamigen Oper Nach "Antigone" Von Sophokles

(02/08/11)邦題「間 MA 2つの歌」。Heinz Reberは20世紀ドイツの現代音楽家。演奏者は日本または韓国人で、まさに間の思想を演奏で表わしているとのこと。東洋人が演奏をすることではじめて意味がある歌曲となるらしいのですが、なるほど、特に能楽派を意識した2曲目において、その進行における空間表現が日本的に感じられます。歌詞に日本語が聞える事もあり、その先鋭的な作風から、少々聴く人を選ぶのでは。

 

Metheny Mehldau/Pat Metheny/Brad Mehldau

Methenymehld
パット・メセニーブラッド・メルドーのデュオ作品(2曲のみクァルテット)が出ました。評価は良い悪いと分かれているようですが、私は地味だけれど良いと思います。テクの限りを尽くした丁々発止のやり取りを期待するとちょっと肩すかしで、肩の力を抜いて、自然体で2人のやり取りを聴ける、こういうスタンスならば満足いくのかなと思っています。曲によっては変拍子で、これまた2人の得意技なので、ほんとに呼吸をするように曲は流れていくんだけれど、普通に聴いていると何拍子か分からない、という現象が起こります。超絶技巧ではないのですが、お互いの流れを瞬時に読み取る、この2人でなければ表現できない世界が、確かにそこに広がっています。


Metheny Mehldau/Pat Metheny(G)/Brad Mehldau(G)(Nonesuch)(輸入盤) - Recorded December 2005. Larry Grebadier(B on 4, 7), Jeff Ballard(Ds on 4, 7) - 1. Unrequited 2. Ahmid-6 3. Summer Day 4. Ring Of Life 5. Legend 6. Find Me In Your Dreams 7. Say The Brother's Name 8. Bachelors III 9. Annie's Bittersweet Cake 10. Make Peace

(06/09/23)Brad Mehldau作が3作(1、5、9曲目)で、他の7曲はPat Metheny作。4、7曲目にはドラムス、ベース参加。メセニーの方が主流か。地味だけれども変拍子の曲もあり、さりげなくスゴいことをやっている印象。しっとりとしつつ不思議なリズム感と共に流れていく1曲目、ややテンポが速くなって2人のスリリングなやり取りが聴ける2曲目、2人の演奏が絡み合い、浮遊感と淡い季節感を伴って進む3曲目、リズム隊参加で変拍子が小気味良く進む4曲目、沈みつつも流暢なフレーズで進む5曲目、ゆっくりと進む静かな切ないバラードの6曲目、ラテンのリズムでノリ良く進む7曲目、8分の6拍子でちょっとジャジーかなとも思える8曲目、綾織り系の絡み合いで進んでいく9曲目、爽やかな香りもあり盛り上がる10曲目。

2006/09/23

Keith Jarrett At The Blue Note

1575 今日はCD6枚組のライヴです。しかも、セットごとに演奏曲目が違います。これがビル・エヴァンスのBOXセットだったら、セットごとに違う曲の方が少なくて、それでも彼の演奏を追い求めて聴いてしまう、ということになってしまうのですが。それでもさすがキース・ジャレット。このトリオはどんな演奏でもアルバムにできてしまう、ということを証明してしまいました。私はアルバムコメントの長さをそろえてしまうクセがあるので、CD6枚もあると内容まで踏み込めませんでしたけれど、BOXセットで敬遠される傾向はあるにしても、けっこういいBOXセットのアルバムだと思います。よく出せたなあ、という実感。

 

Keith Jarrett(P) At The Blue Note(ECM 1575-80) - Gary Peacock(B), Jack DeJohnette(Ds) - Disc1 Friday June 3, 1994. 1. In Your Own Sweet Way 2. How Long Has This Been Going On 3. While We're Young 4. Partners 5. No Lonely Nights 6. Now's The Times 7. Lament Disc2 Friday June 3, 1994. 1. I'm Old Fashioned 2. Everything Happens To Me 3. If I Were A Bell 4. In The Wee Small Hours Of The Morning 5. Oleo 6. Alone Together 7. Skylark 8. Things Ain't What They Used To Be Disc3 June 4, 1994. 1. Autumn Leaves 2. Days Of Wine And Roses 3. Bop-Be 4. You Don't Know What Love Is 5. Muezzin 6. What I Fall In Love Disc 4, 1994. 1. How Deep Is The Ocean 2. Close Your Eyes 3. Imagination 4. I'll Close My Eyes 5. I Fall In Love Too Easily 6. The Fire Within 7. Things Ain't What They Used To Be Disc 5 June 5, 1994. 1. On Green Dolphin Street 2. My Romance 3. Don't Ever Leave Me 4. You'd Be So Nice To Come Home To 5. La Vaise Bleue 6. No Lonely Nights 7. Straight, No Chaser Disc6 June 5, 1994. 1. Time After Time 2. For heaven's Sake 3. Partners 4. Desert Sun 5. How About You?

何とCD6枚組。キース・ジャレットのブルーノートでの3日間のライヴをそのままアルバムにしてしまいました。驚くのは、セットごとに違う曲目を演奏している事です。重なっている曲があまりないのは驚き。ピアノが自然発生的にはじまって、トリオで絡んで曲になるスタイルは、いつもと同じ。スタンダードの曲はもちろんいい演奏ですが、引き出しの多さとコンビネーションの良さを感じさせるBOXセット。オリジナルはCD1枚目4曲目後半、5曲目、CD3枚目3曲目、4曲目後半、CD4枚目5曲目後半、CD5枚目6曲目、CD6枚目3曲目後半、4曲目。このうちダブっているのはCD1枚目4曲目後半とCD6枚目3曲目後半の、前半が「パートナーズ」(チャーリー・パーカー作)だけ。オリジナルとフリー・インプロヴィゼーションとがあり。

(注)日本と米国では上記の3枚目のみの1枚での発売がありました。

2006/09/22

In The Moment/Gateway

1574 今日は先日もやった同メンバーでの「ホームカミング」のフリー・インプロヴィゼーション版。ただ、曲の完成度は高く、2枚聴き通しても違和感はありません。3人ならではの特徴あるジャズが展開されていて、ベテランなだけにどんなことをやっていても安心感はあります。特に4曲目で、ジョン・アバークロンビーが、まるでロックでのソロのような、ディストローションの効いたソロをやる場面、かなり冒険的だと思うのですが、それすら全体の中の自由な秩序の中にハマっているというか何と言うか。間は長かったけれど、このメンバーではこのアルバムで4枚目なんですね。やっぱりお互いを分かっているからこそのサウンドですね。

 

In The Moment/Gateway(ECM 1574) - Recorded December 1994. John Abercrombie(G), Dave Holland(B), Jack DeJohnette(Ds, P) - 1. In The Moment 2. The Enchanted Forest 3. Cinucen 4. Shrubberies 5. Soft

全曲フリー・インプロヴィゼーションによる演奏。同時に録音したアルバムの「ホームカミング」の方は、それぞれのメンバーによるオリジナル演奏。 演奏の密度が高く、両者の区別はあまり感じられないような気もします。エキゾチックなパーカッション(ドラムス?)にのって、3者共にエキゾチックなワンコードの演奏が繰り広げられるタイトル曲の1曲目、ベースのアルコで深遠にはじまって、そのまま空間的に3人が絡んでくるベースのピチカートもある奥の深い2曲目、7拍子系のやはりエキゾチックさのあるギターが動きまわる3曲目、14分にもわたって語り合いながらドラマチックな盛り上がりも、ギターの切れ込みの深さもある4曲目、ベースのアルコで静かな出だしと、ドラムスをピアノに持ち替えた静かな哀愁の語らいの5曲目。

Out Of The Dark/Andy Fusco Quintet

1171
Criss Crossレーベル順番聴き5日目。またこれで一段落。このレーベルのアルバムを順番に聴いていると、知らなかったミュージシャンのリーダー作にぶつかることも少なくありません。アンディ・フスコって誰だろう、という感じですね。ただ、いわゆる名盤級のアルバムは少ないにしても、どのアルバムもそれなりに楽しめて聴けてしまうところが、このレーベルのいいところ。このアルバム、なぜかWalt Weiskopfの曲をタイトル曲の1曲目に持ってきて、アップテンポでこれでもか、という感じで攻めてきているのですが、メロディアスな吹き方も出来る人。割と饒舌なタイプかな、という感じもするのですが。


Out Of The Dark/Andy Fusco(As) Quintet(Criss Cross 1171)(輸入盤) - Recorded December 10, 1998. Joe Magnarelli(Tp), Joel Weiskopf(P), Peter Washington(B), Billy Drummond(Ds) - 1. Out Of The Dark 2. Song For Andy 3. It's You Or No One 4. Epitaph For Sal Amico 5. Lament 6. Pritzin' 7. You've Changed 8. 2286 Seventh Avenue 9. You Don't Know What Love Is

(06/09/18)Andy Fuscoの作曲は6曲目のみで、メンバーの作曲とスタンダードやジャズメン・オリジナルの曲と半々。1曲目のタイトル曲は、超アップテンポでアグレッシヴ、チャレンジングな現代的な曲。テーマは流れるような、アドリブはミディアム・ファーストの4ビートの2曲目、サックス・トリオで明るいメロディを次々と繰り出すアップテンポの3曲目、ゆったりとメロウなメロディが流れていくバラードの4曲目、J.J.ジョンソン作の哀愁のあるボッサが心地良い5曲目、飛び飛びのメロディでユーモラスな雰囲気もある短調のブルースの6曲目、メロディを大切に朗々と唄うメランコリックなバラードの7曲目、ワルツでほのぼのから盛り上がりを見せる8曲目、テーマでカウンターメロディが加わるのが新鮮な、ややアップテンポの9曲目。

2006/09/21

Remembering Tomorrow/Steve Kuhn

1573 スティーヴ・キューンの久しぶりのECMでの作品。初期の頃の作品はまだ廃盤(未CD化)のものがあるので、できれはCD化してもらいたいものです。ここでは過去のECMで録音した曲もけっこう取り上げられていて、しかも雰囲気も変わっている曲が多いので、そういう意味では楽しみでもあります。キューンはあくまでも耽美的でソフト、ベースもそれに寄り添っているのに、ドラムスのジョーイ・バロンが一人、曲調に似合わず、あるいは曲調に合わせて独特なパルスを送り込んで、そこが単なる美しいアルバムに終わらなかった要因ではないかな、と思います。昔何度も聴きかえしたアルバムのひとつ。

 

Remembering Tomorrow/Steve Kuhn(P)(ECM 1573) - Recorded March 1995. David Finck(B), Joey Baron(Ds) - 1. The Rain Forest 2. Oceans In The Sky 3. Lullaby 4. Trance 5. Life's Backward Glance 6. All The Rest Is The Same 7. Emmanuel 8. Remembering Tomorrow 9. The Feeling Within 10. Bittersweet Passages 11. Silver

スティーヴ・キューンが十数年ぶりにECMに戻ってきた作品。7曲目を除き彼の作曲。約半数の曲が過去ECMで彼が録音した曲。研ぎ澄まされた耽美的なピアノが心地良い。ドラムスがややハードかも。まさに「雨の森」を表わすような情景的なバラードの1曲目、ここでは比較的抑えた美しさが垣間見えるやや浮遊感のある2曲目、しっとりと静かに包み込むワルツの3曲目、ゆったりと美しいピアノが続く4曲目、ミステリアスな静けさのある5曲目、情景的な変化を感じ取ることができるボッサ的な6曲目、唯一映画音楽をしっとりと演奏する7曲目、淡く温かいけれども中盤盛り上がるタイトル曲の8曲目、ゆったりと優しい響きのバラードの9曲目、メロディアスながら速いパッセージの10曲目、温かい静けさのサウンドの11曲目。

A World For Her/David Hazeltine Trio/Quartet

1170
Criss Crossレーベル順番聴き4日目。デヴィッド・ヘイゼルタインも、編成で言えばピアノ・トリオの方がおなじみの感じもあるけれど、ここではジャヴォン・ジャクソンのサックスが主に加わっています。サックスはメカニカルというよりは、メロディアスと旋律転換法の間を行くような感じで、時々調子はずれな音使いをしている感じもありますが、逆にそこが彼の個性にもなっていると思います。このレーベルにしては珍しく、録音を2回に分けたり6曲目のみにヴァイブラホンを入れたりしていますが、まあ、アルバムとしてはまとまりのある方なんじゃないでしょうか。もちろん、リーダーのヘイゼルタインのピアノはけっこういいです。


A World For Her/David Hazeltine(P) Trio/Quartet(Criss Cross 1170)(輸入盤) - Recorded May 30 and December 19, 1998. Javon Jackson(Ts), Steve Nelson(Vib on 6), Peter Washington(B), Louis Hayes(Ds), Joe Farnsworth(Ds on 2, 4, 6) - 1. My Foolish Heart 2. This One's For Bud 3. A World For Her 4. Moment's Notice 5. Soul Eyes 6. Old Devil Moon 7. What'll I Do 8. Bitter Sweet

(06/09/18)全8曲中2曲(2-3曲目)がDavid Hazeltineの作曲。2、4、6曲目のみ12月の録音で、2、4曲目がピアノ・トリオです。繊細な曲をオーソドックスなジャズのスタイルでちょっと骨太に料理する1曲目、バド・パウエルに敬意を表している明るいコード進行にコロコロとフレーズが乗っているアップテンポの2曲目、メロディアスでちょっと乾いた感じもあるサウンドと、速いフレーズもあるけれどゆったりしたボッサの3曲目、ジョン・コルトレーン作をアップテンポでスリリングに弾きまくる4曲目、マル・ウォルドロン作を出だしはしっとりと、途中から4ビートの5曲目、ヴァイブラホンのクァルテットで適度にノリの良い6曲目、スタンダードのテーマアレンジが面白い明るい7曲目、アップテンポでのユニゾンのテーマが印象的な8曲目。

2006/09/20

Dream Of The Elders/Dave Holland Quartet

1572

デイヴ・ホランドの久しぶりの新作。メンバーがそう入れ替えになっていて、M-BASEのミュージシャンとの蜜月的なアルバムは前作まで。今回はヴァイブラフォンを起用して、少しソフトな感じのサウンドにはなってます。ただ、ピアノは相変わらず入ってないので、ソフトな音色のヴァイブラフォンだと、まだピアノレス的な雰囲気もありますね。変拍子も入っているのですが、ちょっと何拍子か数えられない部分もあって、そこはホランドのペースで進んでいると思います。そしてこのレーベルにカサンドラ・ウィルソンが客演(4曲目のみ)しているのも、当時の彼女の知名度を考えると、以外かもしれません、

 

Dream Of The Elders/Dave Holland Quartet(B)(ECM 1572) - Recorded March 1995. Steve Nelson(Vib), Eric Person(As, Ss), Gene Jackson(Ds), Cassandra Wilson(Vo) - 1. The Winding Way 2. Lazy Snake 3. Claressence 4. Equality 5. Ebb & Flo 6. Dream Of The Elders 7. Second Thoughts 8. Equality

6年ぶりのECM作で、メンバーを一新。変拍子のオンパレードですが、サウンドはよりオーソドックスになってきた感じがします。冷めた感じはヴァイブラホンの影響でしょうか。1曲目はちょっと沈んだメロディアスな6拍子の曲。2曲目も12分の曲で、タイトル通りヘビがのたくっているような雰囲気。3曲目はちょっと変拍子が入ったノリの良い曲。カサンドラ・ ウィルソンが4曲目に参加。この曲だけが異様にダークなサウンドに仕上がってしまうのは、やはり彼女の魔力でしょう。クールにジャズしていますが後半盛り上がる変拍子の5曲目、ちょっと冷めていてゆっくりとした変拍子の6曲目、一転アップテンポになる7曲目。8曲目は4曲目のインストルメンタル・ヴァージョンになっています。比較的淡々と流れていきます。

Anytown/Walt Weiskopf Quintet

1169
Criss Crossレーベル順番聴き3日目。今日はレーベルおなじみのウォルト・ワイスコフのリーダー作ですが、サイドに、このレーベルでここだけしか参加していないジョー・ロック(Vib)と、ちょっと珍しいリニー・ロスネス(P)が目をひきます。サックスでオレがオレがという感じでバリバリとメカニカルに吹きまくるのは彼の特徴ですけれど、特に1、8曲目にその特徴が強くあらわれていて、他のメンバーも頑張ってしまうものだから、けっこうハードな曲に仕上がっています。他の曲もサックスは、バラードを除けばとにかく吹きまくる、という印象が強いので、まあ、曲もフレーズもあまりメロディアスというわけではないんですけど、なぜかストレス発散にはなってしまうという(笑)。


Anytown/Walt Weiskopf(Ts) Quintet(Criss Cross 1169)(輸入盤) - Recorded December 17, 1998. Joe Locke(Vib), Renee Rosnes(P), Doug Weiss(B), Tony Reedus(Ds) - 1. Anytown 2. Scottish Folk Song 3. Blues In The Day 4. Adrienne 5. Love For Sale 6. King Midas 7. Grand Delusion 8. Breakdown

(06/09/17)5曲目以外はWalt Weiskopfの作曲。このレーベルにしては珍しいメンバーかも。目まぐるしいメカニカルなフレーズでガンガン突き進んでいく、けっこうスリリングな1曲目、オリジナルだけれどもスコットランドの民謡のようなサウンドの8分の6拍子の、意外にメロディアスなサウンドの2曲目、トリッキーなテーマだけれどアドリブの部分は4ビートで、前半サックスが縦横無尽に吹きまくってブルース色がない3曲目、浮遊感がありながらゆったりとしたメロディもあるバラードの4曲目、唯一スタンダードでも8分の6拍子に改変されている彼のペースの5曲目、長い音符のテーマの後に4ビートで自由に吹きまくっている6曲目、淡色系のモーダルさで語りかける7曲目、1曲目に対応してか、やはり目まぐるしい曲調の8曲目。

2006/09/19

The Maze/David Kikoski Quartet

1168
Criss Crossレーベル順番聴き2日目。デヴィッド・キコスキーのリーダー作というと、今までピアノ・トリオのアルバムしか聴いたことがなかったような気がするのですが、本作はクァルテット編成。個性的な人たちの集まりで、メンバー的に見ても面白いかもしれません。そして全曲自作曲というところも、勝負をしているな、という感じ。メインストリームのジャズもあるけれど、それを少々ハズしたところにも焦点を持ってきて、なかなか個性的なサウンドにはなっています。ただ、これを面白いと思って聴くか、オリジナルばかりなのでつまらないと思うかは論点の分かれるところかもしれませんね。曲ごとの変化には富んでいるのだけれど。


The Maze/David Kikoski(P) Quartet(Criss Cross 1168)(輸入盤) - Recorded June 8, 1998. Seamus Blake(Ts), Scott Colley(B), Jeff 'Tain' Watts(Ds) - 1. Rvival 2. Puddles Of Memory 3. Strength For Change 4. Disentanglement 5. Shame 6. The Maze

(06/09/17)全曲David Kikoskiの作曲。メンバー的にもなかなかの組み合わせ。曲ごとのバラエティもあります。1小節少ないなど、構成は少々変わっているけれど、マイナーなアップテンポでバリバリと進んでいく感じはジャズそのものの1曲目、3連5拍子系と思ったら3連4拍子系もあるような複雑なアルペジオや旋律、リズムを持っている、静かな場面もある2曲目、哀愁感覚の強い、静かな雰囲気でせまってくるバラードの、端正なピアノが印象深い3曲目、小刻みなベース、ドラムスのリズムの上をホーンやピアノが自在に舞っている感じのややモーダルな4曲目、淡色系のゆったりしたボッサですがソロは盛り上がる5曲目、空間が広くて自由奔放なソロが多く、バリバリ感は伝わってくる、アップテンポでのタイトル曲の6曲目。

J.S. Bach/B.A. Zimmermann/Thomas Demenga

1571

トーマス・デメンガの、恒例バッハと現代音楽のカップリングしたアルバム。今回はヴァイオリンとヴィオラにそれぞれ奏者を持ってきて、最初から最後まで無伴奏のソナタが続いているところ。中盤以降はバッハではなくベルント・アロイス・ツィンマーマンというドイツの20世紀現代音楽家の曲になっています。デメンガのアルバム、ある時期まではこのようにバッハの曲とカップリングしているものばかりなので、後から気が付いたのですが、いろいろなアルバムを通して、それもテーマのひとつだったのでした。New Seriesの目指すところと一致していたのだと思います。

 

J.S. Bach/B.A. Zimmermann/Thomas Demenga(Cello)(ECM New Series 1571) - Recorded February and July, 1995. - Suite Nr.2 D-moll Fur Violoncello Solo BWV 1008/Johann Sebastian Bach, Thomas Demenga(Cello) 1. Prelude 2. Allemande 3. Courante 4. Sarabande 5. Menuet 1 & 2 6. Gigue Sonate Fur Violone Solo/Bernd Alois Zimmermann, Thomas Zehetmair(Vln) 7. Praludium 8. Rhapsodie 9. Toccata 10. Sonate Fur Viola Solo, Christoph Schiller(Viola) Sonate Fur Cello Solo, Thomas Demenga(Cello) 11. Rappresentazione 12. Faze 13. Tropi 14. Spazi 15. Versetto

(02/08/10)邦題「無伴奏チェロ・ソナタ他」。頭にバッハの無伴奏チェロ組曲を持ってきて、中盤戦から後は 20世紀西ドイツの現代音楽家ベルント・アロイス・ツィンマーマンの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ、無伴奏ヴィオラ・ソナタ、無伴奏チェロ・ソナタと続きます。バッハの方は素直で聴きやすいですが、ツィンマーマンの方は現代音楽なので、それなりに抽象的なメロディやフレーズで、難しい感触。 不思議なカップリングです。

2006/09/18

Ballads And Blues/Rodney Whitaker Quintet

1167
Criss Crossレーベル順番聴き、再び1日目。もう’98年録音のあたりに来ていまして、レーベルのアルバム(廃盤を除く)を全部聴くまでにあと60枚。何とかゆっくりでも最後まで行きたいと思っています。今日紹介するロドニー・ウィテカーのアルバム、他のサイトでも良いアルバムだと書いていらしたのを読んだことがあって、やっぱりブルースとバラードっていいねえ、と思わせる内容。何たってメンバーが良いですからね。ピアノとヴァイブラホンの組み合わせって音がぶつかりやすいんですが、ハードなサウンドの時はどちらかがソロを弾いている時はどちらかが休んでいる、といった気の使いようで、割と自然に入ってきます。


Ballads And Blues/Rodney Whitaker(B) Quintet(Criss Cross 1167)(輸入盤) - Recorded December 13, 1998. Ron Blake(Ts, Ss), Wycliff Gordon(Tb on 7, 9), Stefon Harris(Vib), Eric Reed(P), Carl Allen(Ds) - 1. Whims Of Chambers 2. Alone With Just My Dreams 3. Ease It 4. The Way Always Said It Should Be 5. The Hand Of Love 6. Wise Young Man 7. Centerpiece 8. For Rockelle 9. Big Foot

(06/09/17)Rodney Whitaker作は8曲目のみで、ポール・チェンバース作が3曲(1、3、5曲目)。1曲目がブルースさっそくブルースですが、現代的に洗練されているというイメージがあります。ジョージ・デュヴィヴィエ作のホンワカと温かいメロディとサウンドに包まれるややスローな2曲目、アップテンポでテーマが複雑な、ハードで現代的なブルースの3曲目、ポップスをベースのアルコではじまり、しっとりと進んでいく4曲目、テーマがラテン的で明るいノリの、アップテンポでゴキゲンな5曲目、ゆったりとした、都会の夜を連想させるバラードの6曲目、トロンボーンも加わって少しコテコテのミディアム・ブルースの7曲目、おっとりとしたやや湿り気のあるメロディが印象的な9曲目、チャーリー・バーカー作のブルース・タッチの9曲目。

Ulysses' Gaze/Eleni Karaindrou

1570

エレニ・カラインドルーの「ユリシーズの瞳」(テオ・アンゲロプロス監督)という映画のオリジナルサウンドトラック。哀愁を帯びた、いわゆる「いつもの」カラインドルー節は健在で、いくつも聴いていると、それぞれの違いを語るのもけっこう大変なんですが、それでも彼女の曲が好きなのは、やはりその暗さとメロディがはっきりしていて、それがまたその哀しみを誘うからなんだろうなあ、と思ってます。映画の方は観たことがないけれども、観なくても音楽で満足してしまうところが、彼女の曲にはあります。なかなかいい味を出しています。

 

Ulysses' Gaze/Eleni Karaindrou(ECM New Series 1570) - Recorded December, 1994. Kim Kashkashian(Viola), Vangelis Christpoulos(Oboe), Andreas Tsekouras(Accordion), Soctratis Anthis(Tp), Vangelis Skouras(French Horn), Christos Sfetsas(Cello), Georgia Voulvi(Vo), String Orchestra, Lefteris Chalkiadakis(Cond) - 1. Ulysses' Theme 2. Litany Valiation 1 3. Ulysses' Theme Valiation 1 4. Woman's Theme 5. Ulysses' Theme Valiation 2 6. Ulysses' Theme Valiation 3 7. The River 8. Ulysses' Theme 9. Ulysses' Theme, Litany 10. Ulysses' Gaze - Woman's Theme - Ulysses' Theme - Lento - Largo - Dance 11. Byzantine Psalm 12. Ulysses' Theme Valiation 4 13. Ulysses' Theme Valiation 5 14. Ulysses' Theme Valiation 6 15. Ulysses Theme, Lento, Largo 16. Litany Valiation 2 17. Ulysses' Theme Valiation 7

(02/07/07)邦題「ユリシーズの瞳」オリジナルサウンドトラック。11曲目のみトラディショナルで、他は全てオリジナル。Eleni Karaindrouの特徴でもありますが、ユリシーズのテーマがヴァリエーションを変えて何度も登場し、静かな、暗い色調で目の前にせまってきます。マイナー調の持続音の上をゆったりと哀愁あるメロディーが動いていく、という曲もあって、それが深く沈んだ色合いをもたせているのでしょう。10曲目は17分台の組曲。

2006/09/17

Alexandr Mosolov/Herbert Henck

1569

Alexandr MosolovをHerbert Henck(ドイツの現代音楽のピアニスト)が演奏しています。そんなに難解ではないのですが、やはり、現代音楽だなあ、という雰囲気をあちこちに漂わせているピアノですねえ。やはり取り上げる必然性はあったのかもしれませんが、聴いていて、意外にすんなりと入ってくるのは、1920年代の作曲だからかもしれません。ジャズだったら黎明期ですもんね。それでもごつごつした感じとか、ある意味複雑なサウンドやフレーズはあちこちにありますけれども。

 

Alexandr Mosolov/Herbert Henck(P)(ECM New Series 1569)(輸入盤) - Recorded March 1995. - 1-2. Sonata For Piano No.2 In B minor Op.4 4-5. Deux Nocturnes Op.15 6-9. Sonata For Piano No.5 D Minor Op.12

(03/07/13)20世紀のロシアの作曲家Alexandr Mosolovのピアノ作品集。どの曲も作曲が1920年代ということで、最近の現代音楽ほどには難解ではありませんが、分かりやすいというほどでもありません。温度感の低さや、時折り激しいところはあっても思索的な感じがすることがECM的なのでは、と思います。前後がピアノ・ソナタで壮大な部分もある曲想、中間部の夜想曲の小品でも、やっぱり少々ものものしい印象です。

2006/09/16

The Natural Moment/Christopher Holliday

Christopher
ブラッド・メルドー参加作で、おそらく一番早い録音と思われます。この頃のメルドーはまだ個性があまり出てなくて、いわゆるバップ・ピアニストと一線を画すというところまではいっていないと思います。ここではやはりリーダーのクリストファー・ホリデイに目が(耳が)いってしまい、それほどに目立つアルト・サックスです。メロディアスなところは朗々と唄い、アップテンポの曲では非常に饒舌になり、シャープに吹ききっていくという、若いミュージシャンのいいところと、ただ若いだけではここまで吹けないな、と思うところと両方。いずれにしても彼のサックス、けっこうインパクトが強かったでした。


The Natural Moment/Christopher Holliday(As)(Novus)(輸入盤・中古) - Recorded January 21 and 22, 1991. Brad Mehldau(P), John Webber(B), Ron Savage(Ds) - 1. Scorpio Rising 2. Had To Be Brad 3. All New Meaning 4. Point Of Delirium 5. Every Time We Say Goodbye 6. Johnny Red 7. Aftergrow 8. Idleism 9. The Natural Moment

(06/09/12)全9曲中Christopher Holliday作は5曲(2-4、8-9曲目)。アルトサックスですがモーダルな印象の曲も。そして饒舌なメロディ。モーダルでアップテンポに攻めているなかなかシャープな感じのウォルター・デイヴィス・Jr作の1曲目、目まぐるしいテーマとアップテンポでのアドリブの2曲目、出だしがピアノとのデュオで、少しミステリアスなバラードを奏でる小品の3曲目、複雑なリズムとメロディのテーマを持つ、変化に富んだスリリングな4曲目、朗々と明るくスタンダードを歌い上げていくややスローな5曲目、John Webber作のミディアムで渋い4ビートの6曲目、優しげでゆったりとしつ自己主張するバラードの7曲目、乾いた哀愁を感じさせるバラードの8曲目、ややアップテンポで浮遊感がありながら突き進んでいく9曲目。

Caris Mere/Giya Kancheli

1568

ギヤ・カンチェリは20-21世紀のジョージアの現代音楽家。その特徴は寒色系のサウンドで、静かな場面を主体にしていて、時折りダイナミックな場面が顔をのぞかせるということですが、ここでは作品集らしく、3曲それぞれ違った時期の録音になってます。編成もいろいろなんですが、何と3曲目にヤン・ガルバレクが参加しています。現代音楽でも、記譜されているメロディなのか、それともある程度はアドリブで演奏しているのかは分かりませんが、聴いた限りにおいてはマイペースを保っていると思います。こういう組み合わせがいかにもECM的ですね。

 

Caris Mere/Giya Kancheli(ECM New Series 1568)(輸入盤) - Recorded April 1994 - January 1995. Eduard Brunner(Cl), Maacha Deubner(Soprano), Stuttgarter Kammerochester, Dennis Russel Davis(Cond), Kim Kashkashian(Viola), Jan Garbarek(Ss), Vasiko Tevdorashvili(Voice) - 1. Mdday Prayers 2. Caris Mere 3. Night Prayers

(04/03/01)現代音楽家Giya Kancheliの作品集。1曲目はクラリネット、ソプラノとオーケストラ、2曲目はソプラノとヴィオラ、3曲目はソプラノ・サックス(何とヤン・ガルバレクが参加)とオーケストラの作品。オーケストラ作品では静かな場面を主体に、ダイナミックな場面との差が広いのは相変わらず。デュオの作品もやはり静かで暗めな浮遊感を伴います。3曲目は現代音楽を演奏していても、いつものガルバレクですが、かなり内省的。

2006/09/15

Double Concerto/5th Symphony/Terje Rypdal

1567テリエ・リピダルのオーケストラの音楽で、1曲目はギター参加で、2曲目は作曲家に徹しているというアルバム。これは過去にもこういうことがあったので驚きはしませんけど、けっこうクラシック、ないしはボーダーレス方面に興味があったんだなあ、と思います。今になってみると、セールス的な面とか、中古店の販売価格とかでは、少々苦戦している感じもありますが、ECMだったら、こういった方面なら好きな方向でやらせてくれるからいいなあ、と思います。特にギターが全面的に参加している1曲目は割と今でも好きだったりします。

 

Double Concerto/5th Symphony/Terje Rypdal(G)(ECM 1567) - Recorded June and August 1998. Ronni Le Tekro(G), Normunds Sne(Cond) and Riga Festival Orchestra - 1-4. Double Concerto (1-4) 5-8. 5th Symphony (1-4)

このアルバムの2曲ともテリエ・リピダルの作曲なので、これだけで驚きといえば驚き。1曲目はオーケストラと、元TNT(ハード・ロック・バンド?)のロニール・テクロ(G)も参加した壮大な?コンチェルト。場面によっては美しいメロディの、また場面によっては壮絶なディストローションの効いた2人のエレキギターがオーケストラと同化し、時には激しく対立していて、不思議なサウンドの調和を生み出しています。スケールの大きいゆったりとしたプログレとでも言えそうな雰囲気ですが、当然の事ながらクラシック色はけっこう強め。2曲目は作曲家に徹していてギターでの参加はありませんが、こちらの方は完全にクラシックの作品かも。 それはそれで完成度は高いです。そのサウンドは複雑な色合いを持っています。(00年6月1日発売)

2006/09/14

Wolfgang Amadeus Mozart/Piano Concertos K.467, 488 & 595, etc./Keith Jarrett, Dennis Russell Davies, Stuttgarter Kammerorchester

1565

キース・ジャレットのモーツァルトのピアノ協奏曲などの演奏を、交響楽団と。キースが単独でクラシックを演奏するのは多かったですが、アルバム全体まるまるモーツァルトというのも、なかなか本格的だなあ、と思います。モーツァルトは、フレーズがきらびやかに感じるので、難易度が高めかなとも思いますけど、そういうことをあまり気にせずに、聴けてしまいます。この時期、クラシックにもかなり力を入れていたので、どんどん発売される彼のNew Seriesにも少々戸惑いを覚えてしまいましたけど、今聴き直すと、けっこういいんじゃないか、とも思えるようになりました。

 

Wolfgang Amadeus Mozart/Piano Concertos K.467, 488 & 595, etc./Keith Jarrett(P), Dennis Russell Davies(Cond),Stuttgarter Kammerorchester(ECM New Series 1565/66) - Recorded November 1994 and January 1995. - 1-3. Concerto For Piano And Orchestra No.23 In A Major, K488 4-6. Concerto For Piano And Orchestra No.27 In B Flat Major, K595 7. Masonic Funeral Music In C Minor, K477(479a) 8-10. Concerto For Piano And Orchestra No.21 In C Major, K467 11-14. Symphony No. 40 In G Minor, K550

モーツァルトは18世紀オーストリアの有名な作曲家。キース・ジャレットの演奏も、正攻法のクラシックでとうとうモーツァルトのピアノ協奏曲や交響曲が出てきてしまいました。もちろんシュトゥットガルト室内管弦楽団(デニス・ラッセル・デイヴィス指揮)との演奏で、当然ながら本格的です。このあたりから、正統派のクラシックがECMで増えてくるようになったのでは。クラシック専門の方には異論もあるのかもですけど、正統派に聴こえます。

2006/09/13

Robyn Schulkowsky/Nils Petter Molvaer/Hastening Westward

1564

Robyn SchulkowskyとNils Petter Molvaer(この時期よく登場しますね)との共作的なアルバムですが、何とこれがNew Seriesで出ています。ということは記譜されているのかと思うも、特にトランペットはフリー・インプロヴィゼーションにしか聴こえないような音の出し方をしています。しかも、このアルバムを知っている人はおそらくそんなに多くないだろうと思いますし、地味なんだけどこういうのがありますよ的なNew Seriesのアルバムになりますね。まあ、ストリーミングにもありますので、聴いてみてから判断されてもいいのではないかと思います。

 

Robyn Schulkowsky(Per)/Nils Petter Molvaer(Tp)/Hastening Westward(ECM New Series 1564)(輸入盤) - Recorded January 1995. - 1-3. Pier And Ocean 4-10. Hastening Westward

(04/02/23)2人もしくはRobyn Schulkowsky(3、5、8曲目のソロ曲)による作曲ですが、ジャズ的ではないにしてもフリー・インプロヴィゼーションととらえた方がいい世界が広がります。パーカッションはデュオの時は時間軸に沿って増幅と縮小を繰り返していている場面が多いです(6曲目は元気)。でもソロ曲の方は空間に斬り込んでいく部分も。トランペットも自由に飛翔しますがスペイシー。レーベルの中のボーダーラインにある作品。

2006/09/12

Lost And Found/Ralph Towner

1563 ECMのアルバムでは珍しくないことなのですが、ラルフ・タウナー名義のリーダー作なのに、彼が参加していない曲があったりします。例えばマーク・ジョンソンのベース・ソロが2曲はさまっているとか。また、4人が一緒に演奏している曲は全15曲中たった3曲だけで、あとは、ソロ、デュオ、トリオのフォーマット。何だかもったいないような気もしますね。まあ、それがECM流なのでしょうけれど。このアルバム、当初国内盤で発売予定が出ていたのですが、見つからず、輸入盤で入手。ところがだいぶ後になってから、国内盤も発売されています。今はそういうコダワリはなくなりましたが、’90年代後半のあたりまでは、なるべく国内盤でそろえたい、なんてことを思っていた時代でもありました。

 

Lost And Found/Ralph Towner(G)(ECM 1563) - Recorded May 1995. Denney Goodhew(Ss, Ts, Bcl), Marc Johnson(B), Jon Christensen(Ds) - 1. Harbinger 2. Trill Ride 3. Elan Vital 4. Summer's End 5. Col Lengo 6. Soft Landing 7. Flying Cows 8. Mon Enfant 9. A Breath Away 10. Scremshaw 11. Midnight Blue... Red Shift 12. Moonless 13. Sco Cone 14. Tattler 15. Taxi's Waiting

ラルフ・タウナーの作曲は全15曲中7曲。他にメンバーの作曲や共演のフリー・インプロヴィゼーションもあります。ソロからクァルテットまでさまざまな編成で、比較的短い作品が連なっている印象。ギターが無階調でアグレッシヴな部分もありますが、ベース、サックス、ドラムが渋くからんでいきます(クァルテットは3、7、15曲目)。7曲目はジャズ的な4ビートが基調。もちろんいつものソロ・ギター (1、8-10、14曲目)もあります。8曲目は作曲者不詳。5、13曲目はベース・ソロ。4、11曲目のサックスは印象的なメロディを奏でています。ベースとギターのフリー・インプロヴィゼーション(2曲目)は時にアグレッシヴなアプローチ。12曲目は曲としてのまとまりも。ドラムレスのトリオでの6曲目は、ECM的なサウンドのフリーです。

2006/09/11

Homecoming/Gateway

1562 久しぶりに大物のトリオの登場。17年ぶりだそうですが、ジョン・アバークロンビー、デイヴ・ホランド、ジャック・ディジョネットのトリオはなかなかスゴいですね。ECMでもやはり好きなようにやらせてくれるのかどうか、4ビートの部分は少ないにしても、思いっきり彼ら流のジャズしている感じがしていて、けっこうイケます。もう1枚、同時に録音したアルバムで「In The Moment」というのが後日出てくると思いますが、そちらの方は全曲フリー・インプロヴィゼーション。こういうメンバーでやっていると、何をやらせてもスゴい、ということになってくるのでしょうね。

 

Homecoming/Gateway(ECM 1562) - Recorded December 1994. John Abercrombie(G), Dave Holland(B), Jack DeJohnette(Ds, P) - 1. Homecoming 2. Waltz New 3. Modern Times 4. Calypso Falto 5. Short Cut 6. How's Never 7. In Your Arms 8. 7th D 9. Oneness

3人が曲を持ち寄って17年ぶりのこのメンバーによる録音です。デイヴ・ホランドが4曲(1、3、6-7曲目)、ジョン・アバークロンビーが3曲(2、4-5曲目)、ジャック・ディジョネットが2曲(8-9曲目)作曲。けっこう自由なフォーマットで、濃密な演奏。再演ながらリズミカルで勢いもあってメロディアスでもある1曲目、深い哀愁の色を持っているワルツの2曲目、5拍子系サンバとでも言うべきノリの良い3曲目、タイトルどおりに明るいカリプソが熱帯を感じる4曲目、明るいメロディでウキウキするようなリズムの5曲目、変拍子ロック的な展開がカッコよさをもたらす6曲目、しっとりと静かなバラードを聴かせる7曲目、浮遊感があるテーマながらジャジーなノリもある8曲目、ディジョネットがピアノに持ち替えて叙情的な哀愁を示す9曲目。

2006/09/10

Young At Heart/Jesse Davis

Kesseyoung
ブラッド・メルドーの参加作。このCDは2年ほど前に集めていた時は入手が難しかったのが、今回Amazonのマーケットプレイスを見ていたら、偶然安い価格の未開封の中古を発見。即購入しました。出品者は日本の業者。アメリカの業者は廃盤になるとすぐに従来の倍ぐらいに値段を吊り上げるので、あまり好きではありません。ここではリーダーのジェシ・デイヴィスより当然ながらブラッド・メルドーとピーター・バーンスタイン目当てなんですが、リーダーも割と良いアルトだな、と思いました。メルドーは初期の頃なのであまり目立ったピアノの奏法はありませんが、それでも3、10曲目のソロのあたり、彼らしい突き抜けたソロを聴かせてくれます。


Young At Heart/Jesse Davis(As)(Concord)(輸入盤・中古) - Recorded March 23 and 24, 1993. Peter Bernstein(G), Brad Mehldau(P), Dwayne Burno(B), Leon Parker(Ds), with Ted Klum(As on 8) - 1. East Of The Sun 2. Brother Roj 3. I Love Paris 4. Ask Me Now 5. Georgiana 6. Waltz For Andre 7. Little Flowers 8. On For Cannon 9. Tipsy Fine And Dady

(06/09/08)Jesse Davisの作曲は全10曲中6曲(2、5-9曲目)。なかなか興味深いメンバーの参加です。アップテンポの4ビートでメロディアスかつ流暢にアルト・サックスが飛び回る1曲目、ワルツのブルース進行とでも言うべき、ここでもサックスがアドリブに活躍する2曲目、哀愁のスタンダードのテーマを8ビート、アドリブ部分が4ビート感覚の3曲目、セロニアス・モンク作をちょっとモッタリしたバラードの4曲目、サウンドが明るく、サックスもバリバリ吹いている5曲目、ワルツだけどもちょっと沈みがちで浮遊感のある6曲目、どっしりとしつつ優しげな表情もある7曲目、この曲のみ2アルトでミディアムに渋くせまる8曲目、やはり少しフワフワした感じのあるブルースの9曲目、おもいっきりアップテンポで攻めまくっている10曲目。

Khomsa/Anouar Brahem

1561 今日のメンバー、チュニジアのウード(ギターに似た楽器)奏者のアヌアル・ブラヒムのリーダー作ですけれど、曲のみ提供して、本人は参加していないものもあります。また、豪華なゲストが総出演ということもないようで、ソロやデュオの曲もあったり、さまざま。ただ、その作曲は沈んだ哀愁とでも言うのか、割と統一されたサウンドカラーがあって、メンバーが曲によって違っていても、不思議な統一感があったりします。

 

Khomsa/Anouar Brahem(Oud)(ECM 1561) - Recorded September 1994. Richard Galliano(Accordion), Francois Countuier(P, Synth), Jean Marc Larche(Ss), Bechief Selmi(Vln), Palle Danielsson(B), Jon Christensen(Ds) - 1. Comme Un Depart 2. L'infini Jour 3. Souffle En Vent De Sable 4. Regard De Mouette 5. Sur' L'infini Bleu 6. Claquent Les Voiles 7. Vague 8. E La Nave Va 9. Ain Ghazel 10. Khomsa 11. Seule 12. Nouvelle Vague 13. En Robe D'olivier 14. Des Rayons Et Des Ombres 15. Un Sentier D'aliance 16. Comme Un Absence

ウードあり、アコーディオンあり、ヴァイオリンありと、中近東とフレンチと北欧のごった煮的アルバム。ほとんどの曲を書いている作曲家としてのアヌアル・ブラヒムが焦点で、ソロやデュオの曲も多く、彼の曲を他のミュージシャンが演奏をしているものもあります。1曲目はリシャール・ガリアーノの曲で哀愁と綾織り系の変化に富んだアコーディオンが特徴。3、14曲目は参加メンバーのフリー・インプロヴィゼーションで、特に3曲目は10分台もの曲。アヴァンギャルドな部分も。個人的には2、13曲目のようなウードのソロが中近東的哀愁があって好み。5曲目はアコーディオンとの、6曲目はベースとのデュオなどいろいろなフォーマットです。比較的大編成で彼の音世界を作るタイトル曲の10曲目。沈んだ哀愁はだいたいの曲に。

2006/09/09

Khmer/Nils Petter Molvaer

1560 手直ししていって国内盤で初の紙カバー付きのCD。ただ、ECMは番号順に発売していっているわけではないので、これからもカバーのあるのとないのとが、当分続くことになります。買った当初はこの打ち込みサウンドというのかドラムンベースというのか、あまり良く分かりませんでしたが、今聴くとけっこういいじゃありませんか。その方面では話題になったとも聞いています。やっぱりマイルス・デイヴィスを意識しているんだろうな、とは思いつつ、出てくるサウンドは独自のものに感じられます。そのうちニルス・ペッター・モルヴェルは移籍してしまいますが、それも何となく分かるようなサウンドです。

 

Khmer/Nils Petter Molvaer(Tp, G, Per, Samples)(ECM1560) - Recorded 1996-1997. Eivind Aarset(G, etc.), Morten Molster(G), Roger Ludvigsen(G, Per, etc.), Rune Arnesen(Ds), Ulf W. O. Holand(Samples), Reidar Skar(Sound Treatment) - 1. Khmer 2. Tlon 3. Access/Song Of Sand 1 4. On Stream 5. Platonic Years 6. Phum 7. Song Of Sand 2 8. Exit

全曲ニルス・ペッター・モルヴェルの作曲(サンプル除く)。何となく晩年のマイルス・デイヴィスを思わせる打込みサウンドとその中を漂うトランペット。カッコいい。ECMとしては異色かもしれませんし、ポップ性もある程度あります。帯のジャンルは 「dub/アブストラクト」。エキゾチックな雰囲気のトランペットとサウンドで異国の地へ誘うタイトル曲の1曲目、打ち込み性の強いビートに乗ってその上を哀愁漂うトランペットが舞う2曲目、ミディアムでギターの演奏もハマッている重めの3曲目、民族的なリズムをバックに淡々と吹く4曲目、哀しみのメロディと定型ビートが印象的な5曲目、静かな中をメロディがゆったりと動く6曲目、サウンド的には3曲目の続きをいくやはり重めの7曲目、静かですがやはりエキゾチックに終わる8曲目。

2006/09/08

Small Labyrinths/Marilyn Mazur's Future Song

1559マリリン・マズ―ルのリーダー作。フューチャー・ソングというのはグループ名だと思います。作曲とは言うものの、大まかに決めたものをその曲に参加している全員が自由に演奏しているという雰囲気があります。パーカッションがリーダーなので、どうしても打楽器が目立つようになってますけど、参加ミュージシャンもニルス・ペッター・モルヴェルやEivind Aarsetなど、個性的なメンバーがそろっています。さすがに12曲もあるので、全曲の感想は書けませんでしたけど、少々地味な印象はあるものの、個性的なアルバムのひとつだと思います。

 

Small Labyrinths/Marilyn Mazur's(Per) Future Song(ECM 1559)(輸入盤) - Recorded August 1994. Aina Kemanis(Voice), Hans Ulrik(Sax), Nils Petter Molvaer(Tp), Eivind Aarset(G), Elvira Plenar(P), Klavs Hovman(B), Audun Kleive(Ds) - 1. A World Of Gates 2. Drum Tunnel 3. The Electric Cave 4. The Dreamcatcher 5. Visions In The Wood 6. Back to Dreamfog Mountain 7. Creature Talk 8. See There 9. Valley Of Fragments 10. Enchanted Place 11. Castle Of Air 12. The Holey

(03/09/28)Marilyn Mazurの作曲が6曲、数名での作曲が4曲、グループ名義が2曲。小品はフリー・インプロヴィゼーションの曲が多いようです。出だしの2曲は、抑制の効いたパーカッシヴなサウンド。ところが、ギターとトランペットが加わる小品の3曲目は暴力的な雰囲気。曲としてまとまっていて哀愁と浮遊感が漂い、ヴォイスが心地良く感じる4曲目、かなり自由なファンクの要素を持って、さまざまなパートが舞っている5曲目、繰り返し包み込むようなフレーズにのるヴォイスの6曲目、ゆったりとヴォイスが入ってくるややしっとり系の8曲目、多国籍的なエキゾチックさがありながら流れ、後半フリーに盛り上がる10曲目、パーカッションをバックに淡々と歌い上げる11曲目、スローテンポながらもハードなサウンドの12曲目。

2006/09/07

リターン・トゥ・フォーエヴァー~ライヴ・イン・モルデ/チック・コリア・アンド・トロンハイム・ジャズ・オーケストラ

Chickmolde チック・コリアのノルウェーで’00年に録音されたライヴで、今までネット販売しかされてなかったもの。なかなか海外のサイトに注文する度胸がないので、国内盤の発売は助かります。いわゆるジャズとしてのビッグ・バンド色は薄く、クラシックやアヴァンギャルド系も意識したアンサンブルかなと思いました。オーソドックスなビッグ・バンドも良いけれど、私が好きなのは、ギル・エヴァンス、藤井郷子、マリア・シュナイダーなど正統派からはちょっと距離を置いたビッグ・バンドなので、このアルバム、聴いていて満足感たっぷりです。ホーンの半端ではない追従能力もその素晴らしいサウンドにあらわれていると思います。そしてチックの有名曲のオンパレード。いいですねえ。

 

リターン・トゥ・フォーエヴァー~ライヴ・イン・モルデ/チック・コリア(P、Key)・アンド・トロンハイム・ジャズ・オーケストラ(Mnj)
Live In Molde/Chick Corea(P, Key) And Trondheim Jazz Orchestra(Mnj) - Recorded July 18, 2000. Frode Nymo(As), Tor Yttredal(Ss, As), Atle Nymo(Ts), Kjetil Moster(Ts), John Pal Inderberg(Bs), Toreir Andresen(Tp), Mathias Eick(Tp), Tore Johansen(Tp), Oyvind Baraekke(Tb), Inge H. Mortensen(Horn), Oystein Baadsvik(Tuba), Hans Chr. Frones(G), Steiner Rakenes(B), Hakon Mjaset Johansen(Ds), Erland Skomsvoll(Cond, Arr) - 1. Crustal Silence 2. Windows 3. Matrix 4. Duende 5. Armando's Rhumba 6. Return To Forever 7. Bud Powell 8. Spain

ノルウェーでのライヴ。全曲チック・コリアの作曲をジャズのビッグバンドでのアレンジ。ちょっとクラシック的というかアヴァンギャルドというか、個性的なのが面白い。譜面に書かれた部分も多そう。ピアノ度もけっこう高いです。有名な曲を徐々にドラマチックに盛り上げていくのが印象的な1曲目、非ジャズっぽい綾織り系のホーン・アンサンブルが耳に心地良い2曲目、あの有名な曲をアヴァンギャルドに料理してもシャープさは保たれている3曲目、哀愁を含みつつ盛り上がるクラシック的なアンサンブルでもある4曲目、哀愁とラテン色満載でノリ良く突き進んでいく5曲目、この曲のみエレピで、静かにはじまりホーンが加わり盛り上がる6曲目、アルバム中一番ジャズっぽい7曲目、問答無用の有名曲をアレンジした8曲目。(06年8月30日発売)

 

Dancing With Nature Spirits/Jack DeJohnette

1558

ジャック・ディジョネットのリーダー作。ここでECMに帰ってくるまで、Somethin' Elseなどいくつかのレーベルにレコーディングをして、アルバムが残っています。自分から帰ってきたのか、マンフレート・アイヒャーの声がかかったのかは分かりませんが。珍しくディジョネットのアルバムに、マイケル・ケインというM-BASE出身のピアニストが参加していて、ピアニストを他の人に任せる数少ないアルバムにもなりました。あとはホーンが1人と、少人数でのECMらしいサウンドのアルバムに仕上がってます。民族音楽的とか、フリー・インプロヴィゼーションとか、彼らしいアルバムに仕上がっています。

 

Dancing With Nature Spirits/Jack DeJohnette(Ds, Per)(ECM 1558) - Recorded May 1995. Michael Cain(P, Key), Steve Gorn(Bansuri-fl, Ss, Cl) - 1. Dancing With Nature Spirits 2. Anatolia 3. Healing Song For Mother Earth 4. Emanations 5. Time Warps

ジャック・ディジョネット が久々にECMに戻ってきました。ここでは合作(フリー・インプロヴィゼーション)または参加メンバーに作曲を任せています。いきなり最初から民族音楽ともフリー・インプロヴィゼーションともとれる曲。スペイシーな中に土着的なフルートの音がゆったりと鳴り響 き、ピアノも民族的なエキゾチックさをたたえつつ少ない音数から、3人で盛り上がっていく20分台のタイトル曲の1曲目、スティーヴ・ゴーン作の、エスニックかつ幽玄に音が漂っていく12分台の2曲目、タイトルのようにヒーリングと、緊張感を感じる部分もあって後半盛り上がる22分台の3曲目、浮遊感がありつつもはっきりしたメロディのテーマを持つ4曲目、唯一ポップな(?)テーマやメロディの、爽やかさを少し感じつつ進んでいく5曲目。

2006/09/06

All My Relations/Charles Lloyd

1557 チャールス・ロイドもECMの中では(おそらく)本人の好きなようにサウンド作りをやらせてもらっているのだと思いますが、それは純粋な4ビートのジャズではなくて、もっとスピリチュアルな方向のジャズに流れていっているのかな、と思います。ジョン・コルトレーンのある面に近いものがあると思いますが、ロイドの場合は、同じスピリチュアルでも、もっと端正で、そしてレーベルカラーのせいか、中間色から寒色系あたりのサウンドになっているのではないでしょうか。’89年から何年にもわたり、何枚もECMからアルバムを出しているので、やはり彼の表したいところをECMはうまく押さえているのでしょう。

 

All My Relations/Charles Lloyd(Sax, Fl, Oboe)(ECM 1557) - Recorded July 1994. Bobo Stenson(P), Anders Jormin(B), Billy Hart(Ds) - 1. Piercing The Veil 2. Little Peace 3. Thelonious Theonlyus 4. Cape To Cairo Suite (Hommage To Mandela) 5. Evanstide, Where Lotus Bloom 6. All My Relations 7. Hymne To The Mother 8. Milarepa

全曲チャールス・ロイドの作曲。ECMの中では、普通のジャズに近い部類かも。純粋ではないにしても4ビートの部分もあって、ああジャズだと思う、ホーンが活躍するテンポの良い曲の1曲目、フルートでスピリチュアルな曲の雰囲気を表わしている2曲目、セロニアス・モンク風味のある曲調が楽しい、ややアップテンポのラテンノリで明るめな3曲目、ベース・ソロではじまり、スピリチュアルかと思ったら途中で優雅なサウンドがドラマチックに展開していく15分台の4曲目、前半はピアノでしっとりから盛り上がり、後半はサックスで変化に富む5曲目、ドラムスと明るめのサックスの長いデュオではじまり4人になるタイトル曲の6曲目、温かみのある大地のようなサウンドのバラードの7曲目、エキゾチックな2分弱のソロの8曲目。

「ロイヤル・ダン」~幻想のギター・トリビュート

Royaldan
スティーリー・ダンというのはロック・ポップスとしての曲の完成度もそうですけれど、ジャズ・フュージョン畑のミュージシャンも起用しています。そういうわけで両方のファンの人って多いんじゃないかと思います。残念ながら私はスティーリー・ダンのアルバムを持っていませんが、そのうち聴いてみたいと思ってます。そんな中で、スティーリー・ダンへのトリビュートの、このギタリストが1曲に1人ずつ登場するシリーズがまた登場。これで何枚目になったのか分かりませんが、けっこう出てますね。私も全部追いかけているわけではないですけど。バックのミュージシャンも良いし、ロック、ジャズ・フュージョン畑のギタリストが次から次へと出てきて、曲も良いので、何回聴いても飽きません。


「ロイヤル・ダン」~幻想のギター・トリビュート(Seven Seas)
The Royal Dan - A Tribute(Seven Seas) - Released 2006, Robben Ford(G on 1), Steve Morse(G on 2), Jay Graydon(G on 3), Al Di Meola(G on 4), Steve Lukather(G on 5), Jeff Richeman(G on 6, Rhythm G), Mike Stern(G on 7), Jimmy Herring(G 0n 8), Frank Gambale(G on 9), Elliot Randall(G on 10), Vinnie Colaiuta(Ds), Jimmy Haslip(B), Peter Wolf(Key), Ernie Watts(Sax) - 1. Peg 2. Bodhisattva 3. Home At Last 4. Aja 5. Pretzel Logic 6. Josie 7. Dirty Work 8. The Fez 9. FM 10. Hey Nineteen

バックでヴィニー・カリウタ(Ds)、ジミー・ハスリップ(B)、ピーター・ウルフ(Key)、アーニー・ワッツ(Sax)、ジェフ・リッチマン(Rhythm G)。ギタリスト達によるスティーリー・ダンのトリビュートアルバム。ギタリストはロベン・フォード、スティーヴ・モーズ、ジェイ・クレイトン、アル・ディ・メオラ、スティーヴ・ルカサー、ジェフ・リッチマン、マイク・スターン、ジミー・ヘリング、フランク・ギャンバレ、エリオット・ランドールと豪華です。ジャズ、ロック両方からのギタリスト出演と、もともとスティーリー・ダンの曲がいいだけに、ギターでも曲でも聴けるカッコ良い内容になっています。バックはフュージョン畑の人。この中でも私がミュージシャンとして追いかけている4曲目(アル・ディ・メオラ)と7曲目(マイク・スターン)について。出だしはリズムで聴かせてアコースティック・ギターで渋くせまる、サックスも効いている4曲目、メロディアスな、ちょっと柔らかいサウンドで盛り上がりもある7曲目。(06年8月23日発売)

2006/09/05

探求~デュオ/ジェシ・ヴァン・ルーラー

Jessepersuit
ジェシ・ヴァン・ルーラーは国内盤で出たときからだいだい追いかけています。前々からタダモノではない、と思っていましたが、このアルバムもピアノとのデュオで、ハンパじゃないコラボレーションを聴かせてくれます。考えてみれば、私の好きなギタリストってフュージョンやファンク系が多く、オーソドックスなジャズのギタリスト(現役)では、パット・マルティーノとジェシ・ヴァン・ルーラーぐらい。次点ではまだ名前はあがってきますけれども。繊細にはじまってだんだん盛り上がってくる、あるいは2人のやり取りが微妙かつ過激になってくるので、曲の印象はだいたい最初と途中とでは違うものが多いです。ただ、最近のピアノとギターのデュオでは、このアルバム、かなり上位にあるんではないでしょうか。黙って聴け、と言えればいいんですけれども(笑)。


探求~デュオ/ジェシ・ヴァン・ルーラー(G)(55 Records)
In Pursuit/Jesse Van Ruller(G)(55 Records) - Recorded May 6 and June 1, 2006. Bert Vab Den Brink(P) - 1. Here Comes The Sun 2. Estate 3. Love For Sale 4. I Hear A Rhapsody 5. High, Higher, Her 6. Amsterdam 7. Good Bait 8. Quiet Now 9. Stablemates

ベルツ・ヴァン・デン・ブリンク(P)とのデュオ。洋題は「In Pursuit」。8-9曲目のみライヴ。ピアニストは盲目とのこと。ジェシ・ヴァン・ルーラーの曲は3曲。(1、5-6曲目。)息の合ったデュオのプレイを聴かせてくれます。明るめでしっとりとした質感を持った、それでも2人のフレーズ全開のワルツの1曲目、有名な曲を味わいのあるバラードで演奏している2曲目、ぶっ飛んでいるような2人のやり取りでも安定して聴ける3曲目、明るいジャズメン・オリジナルですがスリリングなやり取りが聴ける4曲目、繊細なメロディを持ちつつデュオで丁々発止のやり取りが時々感じられる5曲目、8分の5拍子で淡い哀愁も入ったバランス感覚のある6曲目、ちょっとユーモラスな進行でもある7曲目、静かに淡々と語り合っている8曲目、静かにはじまってけっこう盛り上がっていく9曲目。まあ、とにかくスゴい。(8月23日発売)

(追記)9月20日。6曲目は8分の6拍子ではなくて基本は8分の5拍子という指摘があり、確かめたらそのとおりでした。訂正しました。

Cerco Un Paese Innocente/Michael Mantler

1556

マイケル・マントラ―のリーダー作。彼がECMで割と早い時期からアルバムを出すに至ったのは、こういうアルバムをいろいろと作ってみたかったからではないかと思います。(注)ヨーロッパに生活拠点を変えたからだそうです。 これだけの編成を集められるレーベルは、ECMの他に当時はそうなかったと思います。しかも、平時はジャズ畑の人がボーダーレスなクラシック畑的な音楽を作れるというのは、もうここしかないでしょう、ということで。かといって、ヴォーカルや、ジャズ系のドラムス、エレキギターなども登場するので、結局は場面に応じたごった煮的な音楽ということになるのでしょうが。

 

Cerco Un Paese Innocente/Michael Mantler(Tp)(ECM 1556) - Recorded January 1994. Mona Larsen(Voice), Bjarne Roupe(G), Marianne Sorensen(Vln), Mette Winter(Viola), Gunner Lychou(Viola), Helle Sorensen(Cello), Kim Kristensen(P), The Danish Radio Band: Ole Kock Hansen(Cond), Jan Kohlin(Tp, Flh), Benny Rosenfeld(Tp, Flh), Palle Bolvig(Tp, Flh), Henrik Bolberg Pedersen(Tp, Flh), Lars Togeby(Tp, Flh), Vincent Nilsson(Tb), Steen Hansen(Tb), Kjeld Ipsen(Tb), Giordano Bellincampi(Btb), Axel Windfeld(Btb, Tuba), Jan Zum Vohrde(Fl, Afl, Ss), Michael Hove(Fl, Cl, Ss), Uffe Markussen(Cl, Bcl, Fl), Bob Rockwell(Cl, Ss), Flemming Madsen(Cl, Bcl, Fl), Nikolaj Bentzon(Synth), Thomas Ovesen(B), Jonas Johansen(Ds), Ethan Weisgard(Per) - 1-5. Part 1 6-11. Part 2 12-15. Part 3 16-19. Part 4

(99/10/25)ジャケットに書いてありますが、日本語だと「無邪気(無垢な?)国を求める」というタイトルらしい。イタリアの詩人Giuseppe Ungarettiの詩にマイケル・マントラーが曲をつけてレコーディングしたもののようです。かなり大がかりなメンバーで、クラシックとも思えるようなバックのサウンドに、ヨーロッパ特有のエキゾチックなメロディをもったヴォーカルがかぶさります。 曲の構成は4つのパートに分かれていて、インタールードもあったりと、クラシック的。とはいうもののドラムやエレキギターなども入っているので、場面によってはインプロヴィゼーションに聞こえる場面も。アルバムを通したサウンドカラーとしては、まさにジャケット写真のようなどんよりと曇った山岳地帯のようなイメージが全体を支配しています。

2006/09/04

フー・レット・ザ・キャッツ・アウト/マイク・スターン

Mikewho
マイク・スターンのリーダー作が久しぶりに出ました。レーベルを移籍しての第1弾で、何と、4ビートとフュージョン(ファンク)取り混ぜて、曲によって有名なミュージシャンをとっかえひっかえ使っている、というかなり贅沢なアルバムです。曲もいつものマイク・スターン節もありますが、幅が広がったような感じ。一発でこのアルバムが好きになってしまいました。今回は1度で聴かないで、まず、メンバーのクレジットを隠して通して聴いて、次にアルバムコメントを書きながら、何曲目のミュージシャンは誰と誰で、と一粒で二度おいしい聴き方をしました。さすがにブラインドではあまり分かりませんでしたが(笑)。オーソドックスなギターよりはフュージョン(ファンク)系のギターが好きな私、このアルバムは愛聴盤になりそうです。


フー・レット・ザ・キャッツ・アウト/マイク・スターン(G)(Heads Up)
Who Let The Cats Out?/Mike Stren(G)(Heads Up) - Recorded January 2006. Jime Beard(P, Key), Richard Bona(B, Vo on 3-5, 10), Chris Min Doky(B on 1, 6, 9), Bob Franceschini(Sax on 1-4, 9-11), Roy Hargrove(Tp on 2, 9), Anthony Jackson(B on 11), Bob Malach(Sax on 7)、Gregoire Maret(Harmonica on 5, 8), Meshell Ndegeocello(B on 2, 8), Kim Thompson(Ds on 1-2, 4, 6-7, 9-10), Dave Weckl(Ds on 3, 5, 8, 11), Victor Wooten(B on 7) - 1. Tumble Home 2. KT 3. Good Question 4. Language 5. We're With You 6. Leni Goes Shopping 7. Roll With It 8. Texas 9. Who Let The Cats Out? 10. All You Need 11. Blue Runway

移籍第1弾で全曲マイク・スターン作曲。4ビートとフュージョンが適度にあって、かなり豪華な顔ぶれ。ファンクではじまり、途中4ビートに展開していく1曲目、ちょっとゆったり渋めから盛り上がる2曲目、アフリカ的陽性のノリの上を活発に動く4ビートも有りのフュージョンの3曲目、ヴォイス入りでメロディが美しく、後半盛り上がる4曲目、アコースティック・ギターで心が落ち着くような5曲目、ファンクと本格的4ビートをクァルテットで演奏している6曲目、タイトなファンクで聴いていて気持ちよい7曲目、ミディアムで黒い雰囲気もある渋めの8曲目、目まぐるしくメカニカルなテーマがカッコいい、スピーディーな4ビートのタイトル曲の9曲目、メロディアスでハッピーな感じの10曲目、ちょっと哀愁を感じる渋めのファンクの11曲目。(06年8月16日発売)

Sandor Veress/Passacaglia Concertante/Songs Of The Seasons/Musica Concertance

1555

Sandor Veressの曲のアルバム。ハンガリーとは言うものの、現代音楽的な要素の強いもので、そこに民族的な要素が少し垣間見える、という感じが近いかな。3種類の曲はそれぞれいろいろな編成で演奏していますが、個人的には合唱曲が良かったかな、とも思います。ここでもハインツ・ホリガーのオーボエと指揮が出てきますが、この時期、彼の露出度も高めだったと思います。ただ3つの曲ともに、演奏するバックが違うというのも豪華で、こういうアルバムを作っているECMはもはやインディペンデント・レーベルとしてはけっこう大きくなったんだなあとも思います。

 

Sandor Veress/Passacaglia Concertante/Songs Of The Seasons/Musica Concertance(ECM New Series 1555)(輸入盤) - Recorded February 1993. Camerata Bern, Heinz Holliger(Oboe, Cond), LondonVoices, Terry Edwards(Cond) - 1-4. Passacaglia Concertante 5-11. Songs Of The Seasons 12-14. Musica Concertance

(04/02/22)Sandor Veressは20世紀ハンガリーの現代音楽家。1-4曲目がオーボエとストリング・オーケストラの、5-11曲目が混声合唱団の、12-14曲目が12人のストリングスの曲。ハンガリーの哀愁というよりは、やはり現代音楽的な複雑さと陰影のある曲、というイメージが強いです。合唱曲は、新しめの味付けではありますが、寒色系の奥深いようなメロディと響きが印象に残ります。ラストのストリングス曲はより現代的。

2006/09/03

If Mountains Could Sing/Terje Rypdal

1554 今日はECMではおなじみのテリエ・リピダルのアルバム。ストリングスに3人も何曲かで使用していますが、基本的には北欧プログレッシヴ・ロックという雰囲気です。彼は作曲家としてもクラシックの作品を書いたりもしてますので、クラシック的な部分もあればロック的な部分もあるということで、いろいろな側面を持った曲ばかり。一番印象が強いのは、メロディが強い1曲目かな。ただ、どの曲も、たとえインプロヴィゼーションの要素があったにしても、サウンド的にはジャズという枠にはハマらないんじゃないかとは思います。そういう意味では、北欧音楽(ロック)やECMのファン向け、と思います。

 

If Mountains Could Sing/Terje Rypdal(G)(ECM 1554) - Recorded January and June 1994. Bjorn Kjellemyr(B), Audun Kleive(Ds), Terje Tonnesen(Vln), Lars Anders(Viola), Oystein Birkeland(Cello), Christian Eggen(Cond) - 1. The Return Of Per Ulv 2. It's In The Air 3. But On The Other Hand 4. If Mountains Could Sing 5. Private Eye 6. Foran Peisen 7. Dancing Without Reindeers 8. One For The Roadrunner 9. Blue Angel 10. Genie 11. Lonesome Guitar

全曲テリエ・リピダルの作曲。3-5、7、9曲目がストリングス入りの曲。フュージョン、クラシック、そして、プログレッシヴ・ロックと思えるような場面もありますが、全体のサウンドはやっぱりECM的かも。フュージョン的な、メロディの印象が強い1曲目、ゆったりした中にギターが雄叫びを上げる2曲目、現代音楽かと思ったら重いゆったりとしたロックになる3曲目、北欧の風が吹いてくるようなタイトル曲の4曲目、クラシックの味付けもあるプログレ風の5曲目、繊細で静かに語りかけてくるような6曲目、ビートが効いていてノリもけっこう良い7曲目、ヘヴィーで自在なロックの印象の8曲目、包み込むような優しさのあるサウンドの9曲目、自由なビートのドラムスの上を舞うベースの10曲目、哀愁のギターがスローで漂う11曲目。

When We Were There/藤井郷子4

Satokowhen
藤井郷子の、このメンバーのクァルテットとしては2枚目。田村夏樹以外の3人は8枚目の顔合わせだそうです。スタジオ録音で、今回は3-5分程度の短めの曲が多いのが特徴です。彼女の音楽はフリー・ジャズの位置付けになるんだろうけれど、構築された部分も多いので、アルバムをこれだけ多く出していながら、どのアルバムも個性的で、それが飽きなくて追いかける要因になっているのかな、と思います。今、日本で一番引き出しを多く持っているフリー系のミュージシャンではないでしょうか。フリーというと避けて通る人が多いですが、ここではジム・ブラックのタイトではっきりしたロック的とも言えるドラムスがスパイスになっています。


When We Were There/藤井郷子(P)4(P.J.L.)
When We Were There/Satoko Fujii(P) Four(P.J.L.) - Recorded September 12, 2005. Natsuki Tamura(Tp), Mark Dresser(B), Jim Black(Ds) - 1. Sandstorm 2. Runaway Radio 3. When We Were There 4. In Your Dream 5. A Path Through The Garden 6. Nourishment 7. Nocturne 8. The Line Of The Heart 9. An Excursion 10. Inori 11. A Diversion

全曲が藤井郷子作曲。ラストが15分台の他は短めな曲が多く、曲数が多いのが今回の特徴。タイトルどおり激しいフリーの嵐が吹き荒れている2分半ほどの1曲目、静寂から鳥などの鳴き声が聞えて、徐々に盛り上がる2曲目、8分の7拍子ラテンと思うとフォーマットを少し崩していくタイトル曲の3曲目、うめき、つぶやき系の静かな場面もある4曲目、メロディに美しい場面もある、起伏のあるややフリーの5曲目、ドラムスがドシャメシャと活躍するリズミカルな6曲目、静かな伴奏の上をゆったりとベースとトランペットが舞う7曲目、静寂の中からフレーズが浮かび上がってやや盛り上がり進む8曲目、変拍子系の美しいテーマとつんざくソロもある9曲目、しっとりゆったりと進む10曲目、ストーリーがありダイナミックな11曲目。(06年8月9日発売)

2006/09/02

Nordic Quartet/John Surman/Karin Krog/Terje Rypdal/Vigleik Straas

1553 タイトルは「ノルディック・クァルテット」ですが、ジョン・サーマンだけはイギリス人。またクァルテットの演奏は全9曲中4曲で、他はトリオかデュオです。タイトルとしてはどうかな、とも思うのですが、まあ、それはそれとして。楽器編成がこれまた変則的なこともあり、北欧の香りも強く、なかなかエキゾチックな気分にさせてくれることは確かです。カーリン・クローグがこういう前衛的な歌い方をする場面は他のアルバムでもあったので、あまり驚くことではありませんけれど、やっぱりサウンドからして聴く人を選ぶアルバムになってしまうんだろうなあ、と思います。

 

Nordic Quartet/John Surman(Ss, Bs, Acl, Bcl)/Karin Krog(Voice)/Terje Rypdal(G)/Vigleik Straas(P)(ECM 1553) - Recorded Autumn 1994. - 1. Traces 2. Unwritten Letter 3. Offshore Piper 4. Gone To The Dogs 5. Double Tripper 6. Ved Sorevatn 7. Watching Shadows 8. The Illusion 9. Wild Bird

メンバーの単独作品、ないしはカーリン・クローグとの共作。ドラムスもベースもない渋い取り合わせ。ヴォーカルのカーリン・クローグは、前衛的な事にも手を出していて、このぐらいならば驚かないかも。クァルテットは1、4、6、9曲目のみ。つぶやくように語り、ギターや他の楽器がそれに絡んでくる1曲目、歌とバス・クラリネットのデュオで漂っていく2曲目、ホーンとギターがゆったり寄り添う3曲目、ヴォーカル以外のトリオで、ややハードながら明るめの4曲目、ギターとバリトン・サックスでロック的なやり取りの5曲目、情景描写のようなドラマチックな世界が広がる6曲目、静かながらも映画音楽のような淡いメロディの7曲目、ソプラノ・サックスとピアノでしっとりとした8曲目、エキゾチックな淡々としたヴォーカルを聴ける9曲目。

Beautiful Friendship/Joe Farnsworth Sextet

1166
Criss Crossレーベル順番聴き5日目。今日は現在のところジョー・ファーンズワースのこのレーベル唯一のリーダー作です。作曲も1曲だけで、他のリーダー作にしても良かったのではないかな、と思います。例えば、シダー・ウォルトンは曲を2曲提供していますし。ということで、メンバー全体のトータルアルバムと考えることにします。だいたいの曲のサウンドカラーは似ているのですが、特に3曲目だけは異質です。ベースが入ることもあるものの、テナー・サックスとドラムスの一騎打ちで、モーダルでフリー一歩手前のやりたい放題、という感じの曲。ドラマーに焦点をあてているのでこういう曲もあってもいいかな、と思いますが、全体のバランスとしては崩れますね。


Beautiful Friendship/Joe Farnsworth(Ds) Sextet(Criss Cross 1166)(輸入盤) - Recorded December 11, 1998. Cedar Walton(P), Eddie Henderson(Tp, Flh), Eric Alexander(Ts), Steve Davis(Tb), Nat Reeves(B) - 1. Eddie's Mood 2. Beautiful Friendship 3. Joobie 4. Lament 5. I'm Not So Sure 6. Something In Common 7. I See You, Brother 8. Melancholee 9. Joe's Tempo

(06/08/27)Joe Farnsworthの作曲は7曲目のみで、他のメンバーの曲が5曲。現代ハードバップ色が強い曲が目立ちますが、他の方向の曲も。地に足をつけて一歩一歩踏み出していくようなミディアムのハードバップの1曲目、明るい曲調とクローズド・ハーモニーのテーマのホーンが印象的なスタンダードのタイトル曲の2曲目、サックスとドラムスではじまって、ピアノレス・トリオでアップテンポのモーダルな3曲目、J.J.ジョンソン作のじっくりと聴かせる哀愁のバラードの4曲目、8ビートのジャズ・ロック的なノリの5曲目、明るい曲調でややアップテンポの6曲目、テーマのメロディが美しい8分の6拍子の、アドリブはジャズする7曲目、リー・モーガン作のちょっと静かなバラードの8曲目、アップテンポでカッコ良いハードバップの9曲目。

2006/09/01

Music For Grown-Ups/Ralph Lalama Quartet

1165
Criss Crossレーベル順番聴き4日目。ラルフ・ララマはけっこう上手いテナー・サックスの人だと思うのですが、日本では名前のせいか風貌のせいか、知名度は今ひとつみたいですね。残念ながら現時点では彼のリーダー作はこのレーベルではこのアルバムで終わりなのですが、ここまでの4作全部がワン・ホーン・クァルテットなんですね。やはり自信と実力のほどのあらわれではないかと思います。他のサックスよりは硬質な音でメカニカルでもなく、あまり音の範囲が高音すぎない(もちろん高音でバリバリ吹きまくることもありますが)というところも個性になっているのでは、と思います。ここに登場のリチャード・ワイアンズもいぶし銀的なミュージシャンですね。


Music For Grown-Ups/Ralph Lalama(Ts) Quartet(Criss Cross 1165)(輸入盤) - Recorded December 18, 1998. Richard Wyands(P), Peter Washington(B), Kenny Washington(Ds) - 1. I've Never Been In Love Before 2. Metro-North 3. Lullaby Of The Leaves 4. Bacha Feelin' 5. Blue Gardenia 6. Nonchalant 7. Newk It! 8. Scoops

(06/08/27)全8曲中Ralph Lalama作は3曲(2、6-7曲目)。相変わらずワン・ホーンで実力のほどを見せています。あまり高音に傾く事もなくメロディを丁寧に追います。ちょっと流暢でメロディアスなミディアムのスタンダードを聴かせる1曲目、アップテンポでメカニカルなテーマを持っていてリズムが時々3連に変わる面白いリズムフィギュアを持った2曲目、哀愁のテーマやソロをムード音楽にせずにうまく方向付けしているミディアムの3曲目、シャープな曲でアップテンポのかっこ良さのある4曲目、ソフト&メロウでしっとりとメロディアスなバラードの5曲目、ちょっと変わった浮遊感のあるコード進行のボッサの6曲目、サックスがアップテンポでゴリゴリとせまってくる7曲目、ソニー・ロリンズ作の明るめなジャズらしい雰囲気の8曲目。

Ou Bien De Debarquement Desastreux/Heiner Goebbels

1552

ハイナー・ゲッペルスのアルバム。詩の朗読がメインで、そこに生演奏やサンプリングがいろいろと入り、録音当時の’94年の技術がなければ、できなかったような内容です。ただ、これが面白いかというと、ある意味バックの生演奏については面白いけど、何をしゃべっているのか分からないナレーションは、言葉を解さない日本人にとっては、ちょっと忍耐を擁する場かな、とも思います。全世界にレーベルの方向が向いているけど、ある意味こういった詩の朗読にも力を入れているアルバムも出している(中にはナレーションだけのアルバムもありましたし)のも、ECMの特徴ですね。

 

Ou Bien De Debarquement Desastreux/Heiner Goebbels(Sampling, Prog)(ECM 1552)(輸入盤) - Recorded June 1994. Andre Wilms(Voice), Sira Djebate(Vo), Boubakar Djebate(Kora. Vo), Yves Robert(Tb), Alexandre Meyer(G, Table-G, Daxophon), Xavier Garcia(Key), Moussa Sissoko(Djembe(22)) - 1. Longtemps Il Crut Encore 2. Samedi, 28. juin 3. Les Premiers Jours 4. Jeudi, 3. Juillet 5. Longtemps, Longtemps, Longtemps 6. Vendredi, 4 Juillet 7. Samedi, 5. Juillet 8. Comme Le Vent Augmentait 9. Mardi, 8. Juillet 10. Cette Foret 11. Vendredi, 25. Juillet 1890 12. Il Eut Du mal 13. Mardi, 29 14. Fili 15. S'adapter Et Ne Pas S'adapter 16. 3. Aout 1890 17. 9 Heures Apres 18. Dangoma 19. Il Comprit 20. Mort Aux Meres 21. Koulamja 22. Haches, Couteaux, Tentacules 23. 7. Aout 1940 - Apres-Midi 24. Le Soir 25. Manilo 26. 8. Aout 1940 27. 13 Aout 1940 - Matin 28. 20. Aout 1940 29. Sunyatta 30. Dans Le Silence Blanc 31. Fin Du Bois Du Pins

(03/09/28)Joseph Conrad、Heiner MullerとFrancis Ponge作の3人の詩の朗読で、3人の詩の順番は分散されています。落ち着いた男声のナレーションと、アフリカっぽい女声ヴォーカルが時々入れ替わって登場します。ナレーションの時は生演奏と、時にサンプリングの伴奏が交じり合い、そこにヴォイスが乗っかっているという構図。ヴォーカルやアフリカ楽器のDjembe、Koraなどのサウンドがやっぱりアフリカっぽかったりするところもあって、ほのぼのする場面もありますけれど、ギターやトロンボーンはアヴァンギャルド路線まっただ中のフレーズを、時々思い出したようにロックっぽく撒き散らしています。その折衷感覚は、ある種のエキゾチックな香り。13曲目はかなり盛り上がる演奏で、22曲目もパーカッシヴで印象的。

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