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2005年11月の記事

2005/11/30

Full Range/Eric Alexander Sextet

1098
Criss Crossレーベル順番聴き5日目。今をときめくエリック・アレキサンダーですが、この時から光っていますね。シャープな音色、ややメカニカルなフレーズで、バラードなどでも速いフレーズを織り込んだりしていながらも、歌心は忘れていない、という感じで、こういうタイプはマイケル・ブレッカーと並んで個人的には好きなタイプです。このアルバムでは出演者の6人ともがいいメンバーですし、好演しています。ただ、それでもこのレーベル、圧倒的な名盤との比較で考えると、良いアルバムでもその次点ぐらいから。B級盤が多い、というのもほめ言葉だと思って、聴いています。けっこうこれは良いほうなんですけれど。


Full Range/Eric Alexander(Ts) Sextet(Criss Cross 1098)(輸入盤) - Recorded January 3, 1994. John Swana(Tp), Peter Bernstein(G), Kenny Barron(P), Peter Washinton(B), Carl Allen(Ds) - 1. To The Chief 2. The LInk 3. Darn That Dream 4. Number Three 5. People Will Say We're In Love 6. Song Of Her 7. Night Mist Blues 8. A Beautiful Friendship

(05/11/23)Eric Alexander作は全8曲中3曲(1-2、4曲目)。やっぱり後に大物になってくる雰囲気はある演奏か。ややメカニカルかなという印象も。懐かしい印象もあって、アップテンポながら個々のソロが光っている1曲目、一転モーダルな進行ですが勢いのあるアップテンポの12分台の2曲目、ややゆったりとしたバラードで、サックスのワン・ホーンが優しさを見せながら時おり速いフレーズを奏でる3曲目、ハードバップそのものの雰囲気のミディアムの4曲目、速いフレーズがスリリングでメロディアスなスタンダードの5曲目、時に速いながらもしっとりとしたフレーズのサウンドのバラードを聴かせてくれる6曲目、ややスローで落ち着いた渋めのブルースの7曲目、スタンダードを10分にわたって明るく料理している8曲目。

Later That Evening/Eberhard Weber

1231

エバーハルト・ウェーバーのリーダー作。ここでもビル・フリゼール参加のクレジットがありますが、彼はECMでは万能選手になりゆくところだと思います。他にもライル・メイズも出ていて存在感のあるシンセサイザーだし、なかなか興味深いメンバーですね。リーダーを含めて個性的な音のミュージシャンが多く、アルバムとしても完成度が高いのではないかと思えます。やっぱりエバーハルトは、リーダーとしての素質を大いに持っていたんですね。それが証拠に(’23年)、中古盤の流通価格が高めなのは人気があるようです。あえて収録曲を4曲にして長めの曲が多いのも、このメンバーを使ってドラマチックな曲に仕立てたかったんだろうなあと。

 

Later That Evening/Eberhard Weber(B)(ECM 1231)(輸入盤) - Recorded March 1982. Paul McCandless(Ss, Oboe, English Horn, Bcl), Bill Frisell(G), Lyle Mays(P), Michael DiPasqua(Ds, Per) - 1. Maurizius 2. Death In The Carawash 3. Often In The Open 4. Later That Evening

(99/05/02)4曲ともエバーハルト・ウェーバーのオリジナル。個性的なミュージシャンの集まりです。楽器の音そのものが個性的(特にギター、ベース)なのですが、このメンバーならではのドラマチックな曲が展開されています。特にライル・メイズがパット・メセニー・グループ以外で演奏することは珍しいので、その奏法も含めて貴重かも。ゆったりとしたホーンのメロディが印象的で、叙情的に曲が流れていく1曲目、よりスペイシーで時間の流れがゆっくりしている前半から、次第に盛り上がっていく16分台もの2曲目、フリー・インプロヴィゼーションのような出だしから、時々ベースのメロディと交錯する変化と自由度の高い11分台の3曲目、淡々とベースで情景が綴られていくタイトル曲の4曲目、と続きます。

 

2005/11/29

You Know What I Mean/Ralph Lalama Quartet

1097
Criss Crossレーベル順番聴き4日目。最近Criss Crossが流行っているんじゃないか、というご意見を複数いただきましたが、私が個人的にコンプリート目指して聴いてホームページにアップしているだけで、市場規模としてはECMの10分の1から20分の1ではないか、という気もしています(笑)。でも、私が取り上げることで、少しでも流行ってくれたらうれしいな、とは思いますが。今日のラルフ・ララマ、名前は知らない人が多いでしょうがこのレーベルでのリーダー作はこれで3枚目、しかもワン・ホーン・クァルテットでの作品は2枚目と、その実力は評価されています。今風というよりは、アップテンポでもバラードでも、とにかくメロディアスにサックスを吹く人です。


You Know What I Mean/Ralph Lalama(Ts) Quartet(Criss Cross 1097)(輸入盤) - Recorded December 26, 1993. George Cables(P), Dennis Irwin(B), Leroy Williams(Ds) - 1. Lester Left Town 2. This Love Of Mine 3. Falypso Calypso 4. These Foolish Things 5. You Know What I Mean 6. Love Letters 7. Will You Still Be Mine 8. Take The Coltrane

(05/11/23)Ralph Lalama作は全8曲中2曲(3、5曲目)でスタンダードやジャズメン・オリジナルが中心。相変わらずメロディアスなサックスを吹く人。ウェイン・ショーター作でもやっぱりメロディアスに攻めていくアップテンポの1曲目、甘い感じのするミディアムの曲展開をしていく、職人芸を聴かせる2曲目、ゴキゲンなカリプソのリズムの曲で、熱帯の島にいるような3曲目、ムードのあるサックスが語りかけてくるバラードの4曲目、マイナー系でメロディが飛び回る印象のややアップテンポのタイトル曲の5曲目、ミディアムのスタンダードながら、流暢なサックスの語り口の6曲目、ピアノレス・トリオで、ややアップテンポになっても饒舌で軽妙な感じのするサックスの7曲目、デューク・エリントン作で個性的なテーマと速いソロの8曲目。

El Corazon/Don Cherry/Ed Blackwell

1230

ドン・チェリーとエド・ブラックウェルのデュオ。気ままに色々楽器を使って録音していくというのは、ECMでは他でもあるし、たまにはこういうアルバムが出てきてもいいんじゃないか、というタイミングで出てきますね。たぶん、テープを回しっぱなしにして、そこから良いテイクを取り出していく、という作業なんじゃないかと思いますけど。どちらもいろいろ楽器を変えてみたりして、楽しんで録音している姿が目に浮かびます。そういうアルバムなだけに、聴く人を選ぶ可能性はありますけど、このような奔放な演奏だったら、1度は聴いてみてもいいんじゃないかな、と思います。秘蔵のテープはまだありそうな気もしてますし。

 

El Corazon/Don Cherry(Pocket Tp, P, Melodica, Org, etc)/Ed Blackwell(Ds, Wood Ds, Cowbell)(ECM 1230)(輸入盤) - Recorded February 1982. - 1. Murton/Bemsha Swing/Solidarity/Arabian Nightingale 2. Roland Alphonso 3. Makondi 4. Street Dancing 5. Short Stuff/El Colazon/Rhythm For Runner 6. Near-in 7. Voice Of The Silence

(03/01/12)2人で、あるいは1人で気の向くまま流れる方向に楽しんでいる雰囲気の演奏。1曲目は15分台の4曲メドレーですが、4曲はそれぞれが独立している感じ。その中のパート2ではドン・チェリーがピアノを弾いてモンクの「ベムシャ・スウィング」を唐突にやったりしています。パート3、パート4は哀愁のあふれる音作り。ピアノになったりトランペットになったり忙しい。メロディカで素朴に奏でられる2曲目、打楽器のみでアフリカンな味わいの3曲目、ドラムスを中心にしたマーチ的なリズムの4曲目、打楽器のみではじまり、哀愁のメロディのピアノ、トランペットのタイトル曲を経て、ドラムソロにいく5曲目、アフリカンなパーカッションの素朴でリズミカルな6曲目、トランペットのみで淡々とメロディを奏でている7曲目。

 

2005/11/28

Concerts(Bregenz)/Keith Jarrett

1227

キース・ジャレットのソロ作品。後年、ブレゲンツとミュンヘンがLP時代と同じ仕様で合わさったアルバムが出てきます(ECM1227-29)が、一説にはキースはミュンヘンの録音をあまり好きではなかったという噂もあります。当初はこのアルバムで満足していたものの、やはり両方合わさった完全版での録音が出たときはうれしかったでした。番号は同じですが、いったんECMのアルバムコメントが’06年に追いついた後の’13年に完全盤が出たので、記載箇所は離れてしまっています。無の状態から即興でメロディを紡ぎあげていく長編のドラマを彼はずっと続けてきていますが、アルバムになったものはどれも水準以上になっていると思います。

 

Concerts(Bregenz)/Keith Jarrett(P)(ECM 1227) - Recorded May 28, 1981. - 1. Part 1 2. Part 2 3. Untitled 4. Heartland

LP時代は3枚組でしたが、CD化に際し、ミュンヘン公演をカットしてCD1枚だけでの発売。これは少々残念かも。このコンサートもおなじみの完全即興演奏になっています。パート1ではキース・ジャレットのステップの音も聞こえるリズミカルなフォーク調の前半から、比較的静かな中間部を経て短調のまま伴奏のインプロヴィゼーション的盛り上がりを見せます。そのままパート2へ突入し、現代音楽(クラシック)的な味わいから、しっとりした優しいメロディの演奏へと続きます。3曲目「アンタイトルド」は短調の一発モノのインプロヴィゼーションで後半長調になる部分も。哀愁度はけっこう高めかも。そして4曲目の牧歌的な親しみやすいメロディを持つ 、まるで作曲されていたかのような「ハートランド」がなかなか良い感じです。(01年8月22日発売)

 

Step Lively/Steve Wilson Quintet

1096
Criss Crossレーベル順番聴き3日目。スティーヴ・ウィルソンのリーダー作としてはこのレーベルでの3枚目ですが、ますますわが道を行く路線になっています。比較的サウンドスペースをとっていて、その中をソロ楽器が泳ぎまわる、といった雰囲気の曲が多いのも、各メンバーを信頼しているからでしょうし、彼自身も吹っ切れたようなフレーズを飛ばしています。相棒にギターを入れたのもマンネリを防ぐ意味では良かったのでしょうし、Freddie Bryantというギタリスト、ほとんど知りませんでしたが、現代ジャズ、といった感じのギターを弾く人なので、これまた私的には好みです。ただ、全体的にちょっとマニアックかな、という印象も少々。


Step Lively/Steve Wilson(As, Ss) Quintet(Criss Cross 1096)(輸入盤) - Recorded December 19, 1993. Freddie Bryant(G), Cyrus Chestnut(P), Dennis Irwin(B), Gregory Hutchinson(Ds), Daniel G. Sadownick(Per on 1, 4-5) - 1. The Epicurean 2. For Stan 3. Step Lively 4. I Love It When You Dance That Way 5. Love Reborn 6. The Gospel Truth 7. Be One 8. 'S Wonderful

(05/11/23)全8曲中2曲(1、3曲目)がSteve Wilson作曲。今回はワン・ホーンで今っぽいジャズのギターとの共演、パーカッションも3曲で参加。都会的なフレーズながらちょっと気だるい感じのミディアムのラテンの雰囲気の1曲目、ジョアン・ブラッキーン作のミステリアスさを持つちょっと盛り上がる面もあるバラードの2曲目、ややアップテンポで飛び跳ねるようなテーマと続く自由なスペースでの個性的なアドリブが面白いタイトル曲の3曲目、アップテンポでしかもフレーズも濃い、ラテンタッチの4曲目、何とジョージ・デューク作を割とあっさりと仕上げている5曲目、ギタリスト作で、テンポも変化してかなり自由に演奏している6曲目、ちょっと浮遊感もあるゆったりしたバラードの7曲目、スタンダードをアップテンポで料理する8曲目。

2005/11/27

Paths, Prints/Jan Garbarek

1223ヤン・ガルバレクのリーダー作。おなじみのエバーハルト・ウェーバーとヨン・クリステンセンに、ビル・フリゼールが加わっていて、そのギターでの音の広がりでサウンドがかなり影響を受けていることが分かります。フリゼールは万能の選手ですね。この包み込むような、浮遊するギターが、印象深くせまってきます。それでいて、全体のサウンドものバランスも崩すことなく、まるで4人が以前から共演していたような、練れた雰囲気もあり、さすが、このメンバーだと思いました。それに、このアルバムも全曲ガルバレク作曲なんですよね。それでも4人の音楽として聴こえるのは、やはり人選の妙かな、と思いましたです。

 

Paths, Prints/Jan Garbarek(Ts, Ss, Wood Fl, Per)(ECM 1223)(輸入盤) - Recorded December 1981. Bill Frisell(G), Eberhard Weber(B), Jon Christensen(Ds, Per) - 1. The Path 2. Footprints 3. Kite Dance 4. To B.E. 5. The Move 6. Arc 7. Considering The Snail 8. Still

(99/05/02)全曲ヤン・ガルバレクの作曲。彼のサックスなどの存在感がある一方で、参加している他のメンバーも個性がけっこうあります。ゆったりした曲調のものが多い感じ。1曲目の何気ない音の連なりでも聴く人を説得してしまいます。パーカッションがエキゾチックな味を醸し出している10分台の2曲目、メロディアスでノリの良い3曲目、スペイシーな、サックスとギターで包みこんでいるような4曲目、不思議な浮遊感のあるテーマで、途中ビートがありながらも浮遊感は持続する5曲目、ゆっくりとしたサックスのメロディに他の音がさりげなく絡む6曲目、エキゾチックなサックスという点ではここでも印象的な7曲目、牧歌的で空間的にも広がりをみせている8曲目。こういう世界があってもいいかも。

 

In From The Cold/Jonny King Quintet

1093
Criss Crossレーベル順番聴き2日目。ジョニー・キングという名前、はじめて聞くのですが、このレーベルにもリーダー作はこれだけ、サイド参加作品なし。Amazonなどで調べてみても、数が少ない上に、どうも同姓同名の別なミュージシャンっぽいような気もする。このアルバム、フロントの2管がちょっと名の知れた2人なので、それで買ってみる人はいるんではないかと思います。オリジナルは8曲中7曲あって、意欲的なところを見せています。ただ、現代風に凝っている(それは英文ライナーでの曲の解説でも分かる)のだけれども、彼ならではの曲なり演奏で強くアピールするものは、今ひとつなのかな、という気もしています。いえ、決して内容が良くないわけではなくて、演奏はわりと良いのですが。


In From The Cold/Jonny King(P) Quintet(Criss Cross 1093)(輸入盤) - Recorded January 2, 1994. Mark Turner(Ts), Vincent Herring(As, Ss), Ira Coleman(B), Billy Drummond(Ds) - 1. El Jefe 2. Fire And Brimstone 3. In From The Cold 4. The Giant And The Dwarf 5. Sweet And Lovely 6. Conundrum 7. One Step Ahead 8. Blues For The Confused

(05/11/19)Jonny Kingの作曲は全8曲中7曲(5曲目を除く)。フロントの2人が興味深い顔ぶれ。ちょっとボッサの香りのする多少浮遊感もある中間色系の1曲目、ちょっとトリッキーなテーマのリズムとメロディで意表をつく、ソロの部分はオーソドックスな感じの2曲目、不思議なビート感覚(5拍子系の変拍子?)で、レゲエのようなリズムにもとれるミディアムテンポのタイトル曲の3曲目、やはりテーマ部のリズムがちょっと変化のあるアップテンポの4曲目、唯一のスタンダードで、ピアノトリオでメロディアスにソツなくこなす5曲目、しっとり系で今風の淡いサウンドのバラードながらピアノの主張がある6曲目、ノリの良いラテン系のリズムでありながらちょっと温度感が低い7曲目、現代風アプローチでブルースらしからぬ8曲目。

2005/11/26

Psalm/Paul Motian

1222

ポール・モチアンのリーダー作。このアルバムでは後にトリオを組むビル・フリゼールとジョー・ロヴァーノが加わった、クァルテットの編成で、次のステップへ行くための過渡期のようなアルバムになっています。特にフリゼールのギターは、全体のサウンドに大きく影響を与え、今までのアプローチとは違ったサウンドをもたらしています。それにしてもモチアンは作曲が得意ですね。まあ、あまり目立つ曲ではないですけど、ECM的になかなかマッチしている曲を書いています。それでも2曲目はハードなジャズという感じではありますが、ビートは8ビートになってますね。このアルバムではいろいろな曲があって、興味深いです。

 

Psalm/Paul Motian(Ds)(ECM 1222) - Recorded December 1981. Bill Frisell(G), Ed Schuller(B), Joe Lovano(Ts), Billy Drewes(Ts, As) - 1. Psalm 2. White Magic 3. Boomerang 4. Fantasm 5. Mandeville 6. Second Hand 7. Etude 8. Yahllah

全曲ポール・モチアンの作曲。ビル・フリゼールとジョー・ロバーノが参加した最初のアルバムで、それ以前のサウンドとこの3人でのサウンドが混在している感じ。やはりギターのサウンドには、当時から独特のものがありました。 タイトル曲の1曲目は、スペイシーに包みこむギターが荘厳な雰囲気を醸し出しています。けっこうハードに切り込んできて、切れ味抜群にジャズしている2曲目、ジャズとしてはドッシリとした感じでやや浮遊感風味の3曲目、 個々の楽器がそれぞれの場面で語りかけてくる4曲目、南から風が吹いてくるようなゴキゲンなカリプソの5曲目、テーマはあるものの、自由に展開していく6曲目、ギターだけで哀愁の世界を奏でる7曲目、ギターが幻想的な風景を演出していく8曲目。

 

Saxophone Mosaic/Gary Smulyan Nonet

1092
Criss Crossレーベル順番聴き1日目。今日はこのレーベル初の9人編成のアルバム。アレンジャーも何とボブ・ベルデンがついています。やっぱりレーベルの最初の頃ってお金がないので、少人数の編成で録音期間も1日、というパターンが多いのですが、ここでも録音はわずか1日でやっています。それでいて、ここまでアレンジがビシッときまっているのは、個々のミュージシャンの譜面を読める能力がスゴいからなのか、予習をけっこうやってきたからなのか(笑)。このレーベル、’93年の12月は毎日のように相当数のレコーディングをやっているんですね。まあ、スゴ腕のミュージシャンが揃っているからなんでしょうけれど。やっつけ仕事とは思えないアレンジにソロです。それにメインはGary Smulyanで、バリトンサックスをバリバリと吹きまくっています。


Saxophone Mosaic/Gary Smulyan(Bs) Nonet(Criss Cross 1092)(輸入盤) - Recorded December 22, 1993. Dick Oatts(As, Ss, Fl), Billy Drews(As, Cl, Fl), Ralph Lalama(Ts, Cl, Fl), Richie Perry(Ts), Scott Robinson(Bs, Bcl), Mike LeDonne(P), Dennis Irwin(B), Kenny Washington(Ds), Bob Belden(Arr, Cond) - 1. Apache Dance 2. Olivia's Arrival 3. Speculation 4. The Wind 5. Smoke Signal 6. Stockholm Sweetnin' 7. Springsville 8. Fingers

(05/11/19)Gary Smulyan作は2曲目のみで、ジャズメン・オリジナルが多い。レーベル初のノネット編成。ボブ・ベルデンのしっかりしたアレンジでホーンのアンサンブルの厚みがいい。9曲目のみサド・ジョーンズアレンジ。重厚なアンサンブルのテーマの後、アップテンポでバリバリと吹きまくっている迫力のある1曲目、ミディアムでわりと温かい感じの音楽が伝わってくる2曲目、ホレス・シルヴァー作のなかなかノリの良いテーマとアドリブを聴かせる3曲目、ちょっと渋めでしっとりしたバラードの4曲目、ジジ・グライス作の基本的にアップテンポで、ノリでせまる5曲目、クィンシー・ジョーンズ作のメロディアスな6曲目、ややアップテンポで洗練されたアンサンブルが良い7曲目、ややアンサンブルカラーが異なるアップテンポの8曲目。

2005/11/25

Ondas/Mike Nock

1220

マイク・ノックがECMに唯一残したリーダー作。このアルバムは内容が良いし、好みだったんで何度も聴きました。メンバーもエディ・ゴメスとヨン・クリステンセンで申し分なしのピアノ・トリオです。このアルバム、今では入手が難しくなっているのかどうか分かりませんけど、私にとって一度は聴いておきたいアルバムの中の1枚でした。その割には他レーベルから出ていたノックのアルバム、ほとんど持ってなかったような気もしますが(汗)。彼の演奏は、少なくともここでは、静かに輝いていると思います。ジャケットのイメージ通りの音というか、メロディが美しい、というだけで聴いてみたくなりませんか?

 

Ondas/Mike Nock(P)(ECM 1220)(輸入盤) - Recorded November 1981. Eddie Gomez(B), Jon Christensen(Ds) - 1. Forgotten Love 2. Ondas 3. Visionary 4. Land Of The Long White Cloud 5. Doors

(02/05/05)マイク・ノックがECMに残したアルバムで、全曲彼のオリジナルです。哀愁をたたえた非常に美しいメロディのピアノが特徴。1曲目は静かにスタートして、その哀愁系の旋律がゆっくりと心の中に入りこんでくる、ゆったりとした15分台の曲です。切ないメロディか優しく語りかけてくるタイトル曲の2曲目も、そのメロディの片鱗とピアノの伴奏の部分のバランスが心地良い。これは名曲でしょうね。タイトル通りに視覚的に映像が浮かんでくるような3曲目は、やはり旋律で聴かせるドラマチックな11分台の曲。しっとりと優しく歌い上げてくる叙情的なバラードの4曲目、このアルバムの中としてはややスリルがあって、最もジャズらしい展開をしている5曲目。ECMピアノのアルバムとしては聴いておきたい。

 

2005/11/24

Cycles/David Darling

1219

デヴィッド・ダーリングのリーダー作。なかなか素晴らしいメンバーに囲まれて、メロディもいい曲が多いし、なかなかロマンチックな(というと語弊があるかな)雰囲気を味あわせてくれます。Oscar Castro-Nevesというギタリストはブラジルでは有名なボサノヴァのギタリスト。ここに趣旨に沿ったスティーヴ・キューンの叙情的なピアノが加わると、もう最強と言っていいのではないかと思えてきます。曲ごとに参加者が交替しますけど、どの曲もいい感じで聴けて、変化もある程度ありますし。ECMというレーベルが好きなら、一度は聴いてみてもいいんじゃないかと思えるアルバム。エキゾチックさもきょくによってそれなりにあります。

 

Cycles/David Darling(Cello)(ECM 1219)(輸入盤) - Recorded November 1981. Collin Walcott(Sitar, Tabla, Per), Steve Kuhn(P), Jan Garbarek(Ts, Ss), Arild Andersen(B), Oscar Castro-Neves(G) - 1. Cycle Song 2. Cycle One: Namaste 3. Fly 4. Ode 5. Cycle Two: Trio 6. Cycle Three: Quintet And Coda 7. Jessica's Synwheel

(03/01/12)今見るとけっこうスゴいメンバーです。叙情的な方向に引っ張っていく感じのサウンド。1曲目は味わい深くて切なげなピアノのメロディが印象的な、優しい曲。2、5-6曲目は参加メンバーによるフリー・インプロヴィゼーションで、2曲目がダーリング/ウォルコット/ガルバレクでの哀しみを帯びたエキゾチックなサックス、5曲目がダーリング/キューン/ウォルコットでのパーカッションの上をゆったりと語りかけてくるフレーズ、6曲目がガルバレクを除いたメンバーでの後半盛り上がっていき最後に静かになる演奏です。硬質の冷たさを持つ、静かに進んでいく3曲目、映画音楽のような、さらに深いメロディアスな哀愁路線でせまってくる4曲目、聴き手に静かに寄り添うようにメロディが展開していく7曲目。

 

2005/11/23

Northern Song/Steve Tibbetts

1218

スティーヴ・ティベッツのリーダー作。彼とステファン・ミクスに関しては、勝手に(というと語弊があるか)一人多重録音でアルバムの音楽制作をして、出来上がるとECMからアルバムが発売されるという、ずっと昔から好きにやらせてもらっているミュージシャンのようで、それだけレーベルに合っているからなのかもしれません。このアルバムもギターを中心にいくつかの楽器などを使って、独自のミステリアスな世界へ連れて行ってくれます。地味といえば地味なのですが、継続して長い間アルバムを出せるのは、例えばヨーロッパなどで強力なファン層がいるのではないかと思うのですが。日本ではあまり話題になりませんし。どうでしょうか。

 

Northern Song/Steve Tibbetts(G, Kalimba, Tape Loop)(ECM 1218)(輸入盤) - Recorded October 26-28, 1981. Marc Anderson(Per) - 1. The Big Wind 2. Form 3. Walking 4. Aerial View 5. Nine Doors/Breathing Space

(00/07/23)全曲Steve Tibbettsのオリジナル。アコースティック・ギターがメインでパーカッションがスパイスの、ゆったりした空間的なアルバム。1曲目はややエスニックの香りがしつつ、多少山はありますが、淡々と進んでいきます。シンプルなテーマから訥々と語りかけてくる2曲目、フレーズの繰り返しが印象的な、牧歌的という感じの3曲目、繰り返されるリズムの上を淡々と乗っかっていくギターの4曲目。5曲目は22分ほどの大作。空間的で、ややドラマチックでありながらあっさりした組曲というイメージ。全体的に淡々としたイメージで、もう少しメリハリがあっても良いのかな、という気もしますが、まあ、これがECM的なところなのかも しれません。シンプルなので何気なく心に入り込んできます。

 

2005/11/22

Offramp/Pat Metheny Group

1216

パット・メセニーのリーダー作。このあたり、有名すぎてあまり説明を加えても、とは思うのですが、メンバーチェンジがあった後のグループも、異国情緒感が増した感じもあって好きです。エレキ・ベースからアコースティック・ベースになっただけでも全体の印象は違うし、そこにナナ・ヴァスコンセロスの参加ですからね。確か5曲目だけ過激な曲だったので度肝を抜かれましたが、他の曲はメロディアスだし親しみやすく、当時はけっこう何度も聴いたものでした。ECMのメセニーのストリーミング配信が全部ハイレゾになった時もうれしかったですね。もう何度もその時も聴きました。そう言えば、最近、ハイレゾ配信が少しずつ増えているような、、、。

 

Offramp/Pat Metheny Group(G)(ECM 1216) - Recorded October 1981. Lyle Mays(P), Steve Rodby(B), Dan Gottlieb(Ds), Nana Casconcelos(Per) - 1. Barcarole 2. Are You Going With Me? 3. Au Lait 4. Eighteen 5. Offramp 6. James 7. The Bat Part 2

基本的にはパット・メセニーとライル・メイズの共作。ナナ・ヴァスコンセロス参加の影響なのか、ベースがメンバーチェンジしたせいなのか、グループのサウンドには変化が。効果的にギター・シンセサイザーを使用して、ゆったりとはじまりインプロヴィゼーションも見せて彼の世界を表現している1曲目、渋めのメロディが淡々と続いていって、ギターシンセのソロが心の中に入り込んでくる2曲目、浮遊感の漂う出だしから、ほのかな温かみのあるメロディが静かに紡ぎ出されていく3曲目、ロック・ビートを基調に印象のある旋律を挟みながら元気のある4曲目、過激で起伏のあるインプロヴィゼーションのタイトル曲の5曲目、すんなり頭に入ってくるメロディの、爽やかな6曲目、映画音楽あるいは穏やかな海の風景のような7曲目。(02年9月19日発売)

 

2005/11/21

Tehillim/Steve Reich

1215

スティーヴ・ライヒのアルバムで、ECMとしては3作目で一段落。1曲目の出だしなどは、アフリカの曲を聴いているような錯覚に陥ってしまい、おまけにその反復が心地よく響いて発展していきますね。こういう音楽だとボーダーレスな感覚で聴けるような気がしてます。ここまできても、まだNew Seriesとしては当初扱われていなくて、購入する人も迷った(そんなところはないか、ライヒ有名だったから)可能性もありますね。ヴォイスの使い方とか、あまり現代音楽とかクラシックらしくなくて、聴く人はあまり気にしなかったのかも知れないし。ミニマル・ミュージック、特に好きとかないですが、聴いていて脳が麻痺していくような感覚は好きです。

 

Tehillim/Steve Reich(Per)(ECM (New Series) 1215)(輸入盤) - Recorded October 1981. Pamela Wood(High Soprano), Cheryl Bensman(Lyric Soprano), Rebecca Armstrong(Lyric Soprano), Jay Clayton(Alto), Bob Becker(Per), Russ Hartenberger(Per), Garry Kvisted(Per), Gary Schall(Per), Glen Velez(Per), Virgil Blackwell(Cl, Fl), Mort Silver(Cl, Piccolo), Vivian Burdick(Oboe), Ellen Bardekoff(English Horn), Edmund Niemann(Org), Nurit Tilles(Org), Shen Guibbory(Vln), Robert Chausow(Vln), Ruth Siegler(Viola), Chris Finckel(Cello), Lewis Paer(B) - 1. Parts 1 & 2 2. Parts 3 & 4

(03/01/08)スティーヴ・ライヒらしいと言えば言える曲。ある時は表情を変えながら反復していき、ある時はドラマチックに展開するように聞こえるヴォイス(ヴォーカル)を中心に、パーカッションや電子オルガンも使用して、ワールド・ミュージックっぽいサウンドを発しています。クラシック色は薄く、ジャスにまではいかないにしても、記譜されたECMでのインプロヴィゼーション、とでもいう雰囲気。明るめのサウンドカラーを持っています。

 

2005/11/20

Poison/Joachim Kuhn

Joachimpoison
5年ほど前まではジャズは国内盤を中心に買っていましたが、それは輸入盤の情報があまり入ってこなかったからで、今みたいにネット通販が発達してくると、輸入盤しかないものも多く、当然のことながら輸入盤の購入比率が高くなります。このヨアヒム・キューンも、最近は輸入盤しか出ないものも多く、しばらくチェックしないでいたら、その間にけっこう出てるんですね。今回、彼のアルバムを5枚まとめ買いしましたけれど、他はまた来月あたりに紹介しようかと思ってます。テーマはテーマではっきりしているけれど、アドリブに入ると、いきなりジャーマン・スープレックスをかけたようにフリー、あるいはフリーに近いところに強引に持っていく、という曲があるのも彼の特徴で、そのフレーズのスゴいこと。それによく他のメンバーがついていくなあと感心してしまいます。


Poison/Joachim Kuhn(P, As)(In+Out Records)(輸入盤) - Recorded December 10 and 11, 2004. Jean-Paul Celea(B), Wolfgang Reiginger(Ds, Electronics) - 1. Purple Haze 2. Lucy In The Sky With Diamonds 3. Angel Dust 4, Cocaine 5. Hohenrausch 6. Griserie 7. Sister Morphine 8. The Man With The Golden Arm 9. Mushrooms 10. Tequila 11. Withe Widow

(05/11/13)ヨアヒム・キューン作は全11曲中4曲(5-6、9、11曲目)。他はロックやポップチューンが多いです。ジミ・ヘンドリックス作のテーマは重量級で、アドリブはフリーに近い形の1曲目、テーマでは原曲のメロディが浮かび上がってくる、あとはフリーのビートルズ作の2曲目、ちょっと懐かしいメロディが印象的な3曲目、重いリズムの上を自由に舞い飛ぶピアノの4曲目、プログレ風な展開を示し、サックスも登場する5曲目、スペイシーで自由なバラードの6曲目、ローリング・ストーンズの何と12分にもなるやや静かな7曲目、サックスでややゆったりした曲を奏でる8曲目、ソロ・ピアノのややアップテンポで哀愁感の強い9曲目、ポップチューンにしては重い4ビートの10曲目、キメの多いスリリングなフレーズも多い11曲目。

Axum/James Newton

1214

ジェームス・ニュートンのソロ・アルバム。多重録音のところもありますけど、フルートだけでアルバムを作ってしまったのは画期的ではないかなあ、と思います。しかもジャズレーベルなので、おそらくメロディはアドリブも入っているんじゃないかな。これもおそらくマンフレート・アイヒャーのアイデアではないかと思うのですが。ただ、聴き通すには聴く人を選ぶような感じでもあるので、実は私も購入後、ほとんど聴いてなかったです。このあたりの番号になってくると、記憶からもどんな音楽をやっていたかということが、抜け落ちてしまっていることが多いし、改めて聴く機会があったことに感謝しています。

 

Axum/James Newton(Fl, Afl, Bfl)(ECM 1214)(輸入盤) - Recorded August 1981. - 1. The Dabtara 2. Malak 'Uqabe 3. Solomon, Chief Of Wise Men 4. Addis Ababa 5. Choir 6. Feeling 7. Axum 8. Susenyos And Werzelya 9. The Neser

(02/09/27)全曲ジェームス・ニュートンのオリジナル。何とフルートのみで1枚のアルバムを作ってしまいました。一部フルートの多重録音の曲も。メロディが舞う感じもありますが、何となくワールドを感じさせるような場面もあります。フルートらしい高度なメロディの表現世界。1曲目は多重録音でハーモニーとメロディを比較的ゆったりと聴かせる曲。空間・哀愁・ちょっと日本系の2曲目、悲しげなメロディが内側へ向かう3曲目、多重録音の、キラキラと舞い飛ぶフレーズの4曲目、ややブルースやや尺八風味の5曲目、この楽器らしくちょっと飛躍のあるメロディの6曲目、多重録音で少々混沌とした空間的ハーモニーのタイトル曲の7曲目、素早くやや抽象的なパッセージの8曲目、多重録音で神秘的な世界が広がる9曲目。

 

LIVE-POWERED NEXUS/NEXT ORDER

Nextlivepowered
LIVE-POWERED NEXUS/NEXT ORDER(Order Tone Music)

武藤祐志(G)、清野拓巳(G)、石垣篤友(B)、松田”Gori”広士(Ds)
Released 2005.(2,500円、税込み) ’05年11月20日発売
1. Aggressive Continuity 2. Deadline Pressure 3. Hanadi 4. Insomania 5. The Dragon 6. Blue Stone

インディーズのジャズCDを応援するページ」からの紹介です。なかなか興味深いアルバムが届きました。ギターの武藤さんは「スコット・ヘンダーソン、アレン・ハインズ、ジェフ・リッチマンにジャズフュージョンギタースタイルを叩き込まれた」とのことで、対する清野さんは「パット・メセニー、ジョン・スコフィールド、ビル・フリゼールの音楽性を受け継いでいる」とのこと。タイプの違う2人のギタリストを含む4人の編成のサウンドは、言わばハード・フュージョンの世界ですが、そこに4ビートの世界も展開していて、「繊細な空間系インプロヴィゼーションと攻撃的なダイナミクスをあわせ持つ」サウンドが展開しています。

全6曲でライヴでの演奏のため、1曲あたりの時間が長く、曲も変化に富んでいて飽きさせません。果たして最初から構築されたものなのか、その場のノリでどんどん変化していったサウンドなのか、興味があるところです。

1曲目は何度か入る、えらい速いメカニカル系のギターのパッセージではじまったと思ったら、重量級のサウンドで圧倒し、途中でノリの良いファンクで進んで行き、再び重量級に。さらにギターのソロが変わるとちょっと軽めにアップテンポの4ビートになって展開していくスリリングな世界、そして最初のテーマに戻っていきます。

2曲目は静かでスペイシーにはじまっていきつつも、どことなくダークな感じを見せながら、そのままミディアムの4ビートになって行って、それでも演奏の感触はファンク的なものを感じる15分台の曲。途中、内省的で静かな場面やギターのみのフリー・インプロヴィゼーションの場面もあり。なかなかに静かな情熱を感じます。

3曲目はリズム隊のノリがけっこう良くて、テーマもメロディアスでこれぞファンク、といったサウンドで、交互に入る、あるいは同時に弾いている2人のギターの性格の違いも楽しませてくれます。後半だんだん盛り上がっていく。ベースだけがリズムを刻む場面で一度静かになり、また持ち上がっていきます。

4曲目はスペイシーで静かにやり取りが繰り広げられていき、途中盛り上がりがあっても、ミュートが効いたようなサウンドでの静かな演奏が前半は基調になっています。ベースソロが長めに続いて、その後少しずつヴォリュームが上がっていったり、引っ込んだりという構図。ここでも後半に4ビートの部分が。

5曲目はやはりメカニカルなややアップテンポのハード・ファンクといった感じで進行していきます。ギターの個性に応じてバックが変化するのは、なかなか面白い感じ。この曲もギタリストにあおられてか、それともバックにあおられてか、どんどん盛り上がっていきます。ラストはまたちょっと抑え気味に戻って5拍子でドラムソロがあります。

6曲目は、18分もの曲。スペイシーな部分からはじまってちょっとエキゾチックなフレーズがさざなみのように変化しながら、時に間を感じさせたりもするサウンド。そしてライヴの特性を生かして、ソロの時間を十分に、そして自由にとってあります。中盤戦ではギター2本同時進行のソロで盛り上がります。そして、完全ドラム・ソロもあって、構成的にはやっぱりライヴならでは。その後もサウンドが大きくなったり、小さくなったり、自在に変化していきますが、その変化が楽しい。

どの曲も一本調子ではなく、ドラマチックな展開があり、おそらくそれはその場の雰囲気でどんどん変わっていくものだと思うので、ライヴ録音でそういう瞬間を切り取れた、というのは、けっこう貴重なことだろうと思います。ハード・フュージョン(ファンク)を基調に様々な要素が入っていて、しかも自在に展開していくので、スリルがありました。自由度の高さでは、他ではなかなか聴けないサウンドではないかと思います。


’05年11月20日から新星堂、HMVなどでも購入が可能になるようです。

(追記 11/23)アメリカのLoLo Recordsから’06年の2月にCDが発売されることが決定したようです。おめでとうございます。

2005/11/19

Some Love Songs/Marc Copland

Marcsome
このところピアノ・トリオでのアルバムが少なかったマーク・コープランドですが、久しぶりに出してくれました。この人、恐ろしく繊細なピアノを弾くのですが、それでいてあまり甘口ではなく、どんな感じかはまあ、聴いてみてとしかいえないのですけれど。私は彼のデビュー直後から当初は国内盤で、そのうち輸入盤でしか出なくなったものが増えたので、輸入盤で追いかけています。7曲目の「My Foolish heart」などは繊細にはじまっても、中盤は4ビートである程度盛り上がる展開。それでも、やっぱりピアノタッチがきれいというか、不思議な淡いメロディとハーモニーを聴かせてくれるところが、良いんですねえ。


Some Love Songs/Marc Copland(P)(Pirouet)(輸入盤) - Recorded January 17 and 18, 2005. Drew Gress(B), Jochen Ruckert(Ds) - 1. Rainy Night House 2. Round She Goes 3. Time Was 4. Glad To Be Unhappy 5. Spartacus Love Theme 6. Foot Prints 7. My Foolish heart

(05/11/12)マーク・コープランド作は全7曲中2曲(2-3曲目)。他はポップス、スタンダード、映画音楽、ジャズメン・オリジナルなど。繊細な世界をトリオで表現しています。ジョニ・ミッチェルの曲を切ないような、ガラス細工のような慎重さをもって奏で上げていくバラードの1曲目、不思議なバランスの、内省的でいて速いパッセージが中間色的でやや硬質な2曲目、しっとり感と透明性の高い静かなバラードの3曲目、やはり静かにはじまってメロディをていねいに表現していく、前半ゆったり後半リズミカルな4曲目、繊細ながらビル・エヴァンスとはまた違った味付けで演奏する5曲目、ウェイン・ショーター作のミステリアスな部分をうまくすくい上げた、淡い感じの6曲目、やはりビル・エヴァンスの愛奏曲を独特のタッチで奏でる7曲目。

Urban Bushmen/Art Ensemble Of Chicago

1211 ECMのアルバムコメントの手直し作業も、1200番台前半は残りわずかなので、このアート・アンサンブル・オブ・シカゴのアルバムを直すと、1231番まで直ったことになります。この番号であらわす方法、ECMになじみがない方には何の事やらさっぱり分からないかもしれませんが。いちおうレーベルのスタートが1001番で、時々欠番があるものの、ジャズとクラシック(現代音楽)を含めて一連番号になっています。

また2枚組のアルバムで、彼らの3作目です。そしてこれはライヴ録音だからという必然性もあるのかな、と思っています。彼らのECMでの録音はすべて貴重だと思っているだけに、よくぞ残してくれました、と。でも、確か彼らはこの次の「サード・ディケイド」というアルバムを最後に、他レーベルからアルバムを出すようになったんですね。それでもこれだけしかアルバムを出してないのに、コンピレーション「:rarum」の20枚の中に入っているのだから、やはり彼らは偉大だったと思います。

 

Urban Bushmen/Art Ensemble Of Chicago(ECM 1211/12) - Recorded May 1980. Lester Bowie(Tp, Bass Ds, Long Horn, Vo), Joseph Jarman(Sopranino, Ss, As, Ts, Bs, Bass Sax, Vo, Bcl, Cl, Bassoon), Roscoe Mitchell(Ss, As, Ts, Bs, Bass Sax, Piccolo, Fl, Bongo, Conga, Cl, Bamboo Fl, Gongs, Glockenspiel, Whistles, Bells, Pans, Vo), Malachi Favors Maghostus(B, Per, Melodica, Bass Pan Ds, Vo), Famoudou Don Moye(Trap Ds, Bendir, Bike Horns, Whistles, Comga, Tympani, Chekere, Conch Shell, Long Horn, Elephant Horn, Gong, Cymbal, Chime, Wood Blocks, Belafon, Cans, Bass Pan Ds, Vo, etc) - 1. Promenade: Cote Bamako 1 2. Bush Magic 3. Urban Magic a) March b) Warm Night Blues Stroll c) Down The Walkway d) Rm Express 4. Sun Precondition Two a) Soweto Messenger b) Bushman Triumphant c) Entering The City d) Announcement Of Victory 5. New York Is Full Of Lonely People 6. Ancestral Meditation 7. Uncle 8.Peter And Judith 9. Promenade: Cote Bamako 2 10. Odwalla/Theme

ライヴ録音で2枚組。たくさん楽器が並んでいるので、どれだけ会場がにぎやかか想像がつきます。キーポイントは、やっぱりパーカッションという気も。 でもそれだけではなくて、あらゆる楽器で曲を作り上げていきます。メンバーそれぞれの曲と全員でのフリー・インプロヴィゼーションが有機的に絡み合い、不思議な音空間を作り出しています。3、4曲目はそれぞれ組曲になっていて、両方とも4部構成。叙情的で視覚的な場面があったと思ったら、アップテンポのシリアスなジャズが繰り広げられている部分もあります。全体的にフリーに近い演奏ですが、どことなくユーモラスな場面もあって、割と親しみのわく演奏も。適材適所の楽器選び。5曲目はタイトルどおり都会的か。ロスコー・ミッチェル作の7、8、10曲目が好みかも。

2005/11/18

Day Is Done/Brad Mehldau Trio

Braddayis
このアルバムも9月に買っておきながら、今までアップせずにいました。徐々にそういうアルバムは片付きつつありますが、このアルバムに関しては聴いていなかったわけではなくて、実は気に入って何度も聴いています。もしかすると、今年新譜のベスト3を選べ、となると個人的には入れたくなるようなアルバム。それほど気に入りました。ただこのアルバム、メロディが分かりやすい曲と分かりにくい曲があるので、ある程度ジャズを聴き込んだ人だと、ブラッド・メルドーの底知れない深さが分かるのではないのかなあ、と思います。ややひねくれている感じもするので、広く万人向け、というわけでもなさそうです。


Day Is Done/Brad Mehldau(P) Trio(Nonesuch)(輸入盤) - Recorded March 13 and 14, 2005. Larry Grenadier(B), Jeff Ballard(Ds) - 1. Knives Out 2. Alfie 3. Martha My Dear 4. Day Is Done 5. Artis 6. Turtle Town 7. She's Leaving Home 8. Granada 9. 50 Ways To Leave Your Lover 10. No Moon At All

(05/11/12)ブラッド・メルドー作は全10曲中2曲(5-6曲目)で、ポップスなどが多い。ドラムスが交替してのアルバムですが、前面に出てきて、全体に強力。哀愁と個性でじっくりと力強く引き寄せる1曲目、きれいなメロディとしっとりさ加減がいいバラードの2曲目、ソロ・ピアノでノリの良いクラシック的なフレーズもあるビートルズの3曲目、8ビート的でメロディ、リズム共に興味深いニック・ドレイク作のタイトル曲の4曲目、アップテンポでスリリングな展開の5曲目、ちょっと浮遊感のあるボッサといった感じの6曲目、またビートルズの曲をややリリカルから徐々に変化する7曲目、エキゾチック不可思議系の味のある8曲目、前作とは違って綾織り系にメロディが織り込まれた9曲目、短調がメインの印象的なメロディでせまる10曲目。

Voice From The Past-Paradigm/Gary Peacock

1210

ゲイリー・ピーコックのリーダー作。ヤン・ガルバレクにトーマス・スタンコ、ジャック・ディジョネットとのクァルテットとなるとけっこう力が入っているなあ、と思います。演奏は「やや思索的」と以前に書いたのも、リーダーの性格によるものではないでしょうか。けっこうこういうサウンド、好きなんですけれどもね。ただ、3曲目はオーソドックスな4ビートに近い曲だし、4曲目はフリー・インプロヴィゼーションかと思えるような場面があるし、曲のヴァリエーションとしては広いのではないかと思います。それでも、やはりピーコックの性格でしょうか、素直に盛り上げてはくれないようなところもありますね。

 

Voice From The Past-Paradigm/Gary Peacock(B)(ECM 1210)(輸入盤) - Recorded August 1981. Jan Garbarek(Ts, Ss), Tomasz Stanko(Tp), Jack DeJohnette(Ds) - 1. Voice From The Past 2. Legends 3. Moor 4. Allegory 5. Paradigm 6. Ode For Tomten

(99/09/10)全曲ゲイリー・ピーコックのオリジナル。やや思索的なサウンドの印象を持つアルバムですが、 北欧・東欧のフロントに、このリズム隊なので、かなりスゴいメンバーです。1曲目は哀愁を帯びたテーマではじまり、ややフリーのサウンドの中を淡々と語りかけてくるような11分の曲。2曲目は、どちらかと言うと混沌としたリズムの上を泳ぐメロディ、という感じの曲。3曲目は再演曲で、このメンバーにしては、オーソドックスな4ビートにやや近い曲。4曲目はどちらかと言うとフリー・インプロヴィゼーションに近い展開。5曲目はメンバーの丁丁発止のやり取りでさらにフリーな展開を示します。6曲目はやはり哀愁を帯びていて、ドラマチックに盛り上がる部分も。でも、思索的と言えば思索的な演奏だと思います。

 

2005/11/17

Channel Three/Greg Osby

Gregchannel
最近のEMI系列の新譜の輸入盤は、ショップの店頭で買うと、CCCDしか見当たりません。今回のグレッグ・オズビー盤もその例にもれず、だったので、Amazon.co.jpでUS盤を購入すればCD-DAだろうということで、注文してみたら、やっぱり当たり。CCCDだけはSONY BMGのように危険で何があるか分からないため、絶対買わないぞ、と決めています。1枚国内盤のセキュアCDというCCCD表記のないアンフェアなCCCDを持っていますが、それは実験用に使っています。いいかげん、音楽CDを買うことの不快感から開放して欲しいですね。だから、CCCD推進メーカーのアルバムは、例えCD-DAであっても、どうしても欲しいもの以外は買わないぞ、と決めています。


Channel Three/Greg Osby(As, Ss, Vo)(Blue Note)(US輸入盤) - Recorded February 9-10, 2005. Matt Brewer(B, Vo), Jeff "Tain" Watts(Ds, Cymbals, Per, Vo) - 1. Mob Job 2. Vertical Hold 3. Viewer Discretion 4. Diode Emissions 5. Fine Tuning 6. Please Stand By 7. Channnel Three 8. Test Pattern 9. Miss Ann

(05/11/12)全9曲中7曲(2-8曲目)がグレッグ・オズビー作曲。ピアノレス・トリオのアルバムですが、どこまで行っても彼は彼。オーネット・コールマン作の1曲目もフレージングなど、まるで自作曲のよう。浮遊感のあるサックスとベースの長めなユニゾンが続いてミステリアスなアドリブに入り込む2曲目、変拍子の上をサックスが漂っているような雰囲気の3曲目、響きが深く、スペイシーなはじまりのバラードの4曲目、マーチ的な不思議なリズムのドラミングに合わせてサックスのフレーズも飛ぶ5曲目、3拍子のリズムでサックスは哀愁を漂わせる6曲目、ベースがエレキになってM-BASE的な名残りもあるタイトル曲の7曲目、タイトルどおりテストのような、それで盛り上がる8曲目、エリック・ドルフィー作のこれも彼流の9曲目。

The Great Pretender/Lester Bowie

1209

レスター・ボウイのリーダー作。ここではけっこう自由にやらせてもらっているようで、やはり時間も長い1曲目の大作がポップスだということも、意外性のあるアルバムになっているのでは、と思います。後にブラス・ファンタジーにつながる、ということをアルバムコメントに書いてますけど、アート・アンサンブル・オブ・シカゴがECMでアルバムを出した時点で、こういう方向性もアリかな、と思えるようになりました。既成曲が3曲もあるのも、ECMとしては珍しいのでは。このアルバムも、あまり熱心に聴いてなかったので、またかけてます。場面により少しユーモラスな場面もあるのは、ボウイの音楽せいではないかと思います。

 

The Great Pretender/Lester Bowie(Tp)(ECM 1209)(輸入盤) - Recorded June 1981. Hamiet Bluiett(Bs), Donald Smith(P, Org), Fred Williams(B), Phillip Wilson(Ds), Fontella Bass(Vo), David Peaston(Vo) - 1. The Great Pretender 2. It's Howdy Doody Time 3. When The Doom (Moon) Comes Over The Mountain 4. Rios Negroes 5. Rose Drop 6. Oh, How The Ghost Sings

(99/05/05)ポップなノリの曲を、アヴァンギャルドな感じを含めて料理している1曲目がとにかく印象的。このサウンドは後のブラス・ファンタジーに引き継がれていくのですが、ここでの楽器の編成はオーソドックス。3曲目までが他の人の作曲で、後半がレスター・ボウイのオリジナル。その1曲目は何と16分台のポップスの大曲ですが、進んだり立ち止まったり。この曲のみバリトンサックスとヴォーカルも参加。おどけたニューオリンズ・ジャズのような2曲目、ハードなフリー・ファンクの様相を示す3曲目、哀愁メロディアス路線の4曲目、スペイシーなインプロヴィゼーションの5曲目。6曲目はプロデューサーであるアイヒャーやエンジニアの名前もクレジットされているエコーたっぷりのフリー・インプロヴィゼーション。

 

2005/11/16

Skylight/Art Lande, David Samuels, Paul McCandless

1208

3人の名義によるアルバムですが、ピアノ、ヴァイブラフォン、ホーンという変わった編成によるアルバムです。こういう編成だと、チック・コリアとゲイリー・バートンのコンビを連想させますけど、もうちょっとノリがカチっとしているよりは少しジャズ寄りな気もするし、そこにポール・マッキャンドレスのホーンが絡むと、やはりもう少し起伏の多い賑やかな感じもしてます。個人的には1200番台の一部のアルバムはあまり熱心に聴いてこなかったので、このアルバムのようにかけてみないとどんな音だったっけ、というケースが出てきます。当初聴いていた時に割と細かくアルバムコメントを書いていたのが救いです。今だとこういう書き方、できなくなってます。

 

Skylight/Art Lande(P, Per), David Samuels(Vib, Marimba, Per), Paul McCandless(Ss, English Horn, Oboe, Bcl, Wood Fl)(ECM 1208)(輸入盤) - Recorded May 1981. - 1. Skylight 2. Dance Of The Silver Skeezix 3. Duck In A Colorful Blanket (For Here) 4. Chillum 5. Moist Windows/Lawn Party 6. Ente (To Go) 7. Willow

(02/01/06)管楽器とピアノ、ヴァイブラホン系との変わった編成によるトリオ。全体的な印象は参加したメンバーにもよるのでしょうが、比較的端正な感じです。1曲目のタイトル曲は、その名のとおりメロディアスで明るく爽やかな印象を受けます。たたみかけるようなピアノやマリンバの音に乗っかっているホーンが哀愁を帯びて奏でられ、その対比が面白い2曲目、3人のフリー・インプロヴィゼーションでは自然体でお互いに語り合っている小品の3、6曲目、気だるい日曜日の午後のようなややスペイシーで、白っぽいやわらかな光の色調を伴っている4曲目、淡々としていながらも時にしっとりと、時にメロディアスにせまってくる5曲目。そして、表情を変えながら、メロディが流れるように進んでいく7曲目。

 

Shelf-Life/Uri Caine - Bedrock

Urishelf
久しぶりに聴いたWinter & Winterレーベルのアルバム。9月12日に購入しておきながらやっと今日紹介できました。その間、何と2ヶ月以上(笑)。他にいろいろ紹介しなければならないものが詰まっていたせいですが、輸入盤の新譜としての鮮度が薄れてしまったかどうか、少々心配です。まあ、知る人ぞ知る、八面六臂に活躍するユリ・ケインのアルバムで、これはエレクトリックなファンクというべきか、Bedrockの2枚目のアルバム。ジャズ度は非常に薄いですけれど、その今っぽさは、なかなか鋭いアンテナだなと思わせる部分はあります。17曲もあるので、全曲の紹介にならなかったのは、少々残念ですが。


Shelf-Life/Uri Caine(Key) - Bedrock(Winter & Winter)(輸入盤) - Recorded March 2004. Zach Danziger(Ds, Per), Time Lefebvre(B, G), Ralph Alessi(Tp), Bootsie Bernes(Sax), Ruben Gutierrez(Cl), Nnnj(Reconstruction Worker), DJ Olive(Electronics), Bunny Sigler(Vo), Art Tuncboyaciyan(Per), Luke Vibert(Production/Prog), Barbara Walker(Vo), Dan Zank(String Prog) - 1. SteakJacket Prelude 2. SteakJacket 3. Defenestration 4. Wolfwitz In Sheep's Clothing 5. Blackey 6. On The Shelf 7. Darker Bionic Cue 8. Strom's Theremin 9. Oder 10. Murray 11. bE 100se 12. Watch Out! 13. Bauwelklogge 14. Shish Kabab Franklin 15. Interruptus 16. Hello 17. Sweat

(05/11/12)全部の曲がユリ・ケインを含む共作で、エレクトロニクスを適度に絡ませたファンクもあり、けっこうカッコ良い。Bedrock名義としては2枚目で、「今」の音楽が17曲も詰まっています。トンガリ度もバツグン。ケインのキーボードも見どころか。1曲目はやや思索的な部分があってかなり自由なファンクを演じていて、後の曲につながっていきます。2曲目はさらにスピーディーにせまってきます。フュージョン的な3曲目も普通に料理していません。ちょっとダークな感じの4曲目、オーケストレーションっぽいアレンジがある5曲目。以下、短めですが変化に富んだカッコ良いファンクが続きますが、個人的にはアコースティック・ピアノがでるジャジーな9曲目、ヴォーカル曲の11、17曲目、シャープな14-16曲目あたりが好み。

2005/11/15

The Feeling's Mutual/John Swana Quintet

1090
Criss Crossレーベル順番聴き5日目。また明日から別方面に行きます。今日はジョン・スワナとクリス・ポッターという鉄壁のフロント陣に、ビリー・ドラモンドのドラムス、そしてオルガンとギターが新人という構成ですが、意外にも様々な曲調に対応できる全方位型です。全体的に今風ではあるけれども、オルガンもギターも安定していて、例えば6曲目のようなモーダルでアグレッシヴな曲にも違和感なく参加でき、やっぱり新人ならではのものを持っているなあと思いました。1曲目のチック・コリアの曲も冒険的。あれこれと詰め込んでいる印象もあるけれども、それだけ濃度が濃いのだ、という言い方もできます。


The Feeling's Mutual/John Swana(Tp, Flh) Quintet(Criss Cross 1090)(輸入盤) - Recorded December 16, 1993. Chris Potter(Ts, Ss, Fl), Steve Giordano(G), Dave Posmonier(Org), Billy Drummond(Ds) - 1. Litha 2. Trish 3. September In The Rain 4. Autumn Landscape 5. When Johnny Comes Marching Home Again 6. Cosmos 7. Simple Pleasures 8. Blues On The Road

(05/11/05)John Swana作は全8曲中5曲(2、4、6-8曲目)。ギターとオルガンは新人とのこと。なかなかいいセンス。チック・コリア作の12分台の1曲目は複雑な構成を持ちながら、このメンバーと編成だとなぜか今風の都会ジャズに聴こえます。ちょっと浮遊感があって都会的なバラードで途中からミディアムの4ビートになる2曲目、スタンダードをかなりのアップテンポでスリリングに料理している3曲目、8分の6拍子でしっとりとした季節感とやや盛り上がりもある4曲目、有名なマーチの歌をマーチ・ドラムにのせて、途中からアップテンポの4ビート的展開になる5曲目、ミステリアスな出だしからモーダルでパワフルになる6曲目、一転ワン・ホーンでソフトなバラードになる7曲目、ブルースというにはちょっと翔んでいる8曲目。

Playing/Old And New Dreams

1205

オールド・アンド・ニュー・ドリームス(オーネット・コールマンのバンドに在籍していたメンバー)での2作目。ECMを順番に見ていくと、いかにもECM的だったり、北欧色が強かったりするアルバムも目立ちますけど、このように、黒いというか、オーネット・コールマンを中心に据えていたかのようなアルバムも、少々落ち着いたサウンドが多めながら、割と出ているんですね。これより後の時代になってくると、ギンギンのフリージャズもいくらかある(スティーヴ・レイクのプロデュースのアルバムなど)ので、一定の傾向は見られるものの、ECMサウンドというものはない、というマンフレート・アイヒャーの言葉が真実味を帯びてきます。

 

Playing/Old And New Dreams(ECM 1205)(輸入盤) - Recorded June 1980. Don Cherry(Tp, P), Dewey Redman(Ts, Musette), Charlie Haden(B), Ed Blackwell(Ds) - 1. Happy House 2. Mopti 3. New Dream 4. Rushour 5. Broken Shadows 6. Playing

(02/09/29)ライヴ録音で、このメンバーではECM2作目。オーネット・コールマンの曲が3曲(1、3、5曲目)とメンバーのオリジナルによる構成。雰囲気も新しめのオーネット・アコースティック・バンドという感じ。アップテンポで元気やノリが良いながらも、自由度が高い演奏が繰り広げられる11分台の1曲目、アフリカの大地を思わせるような原初的なメロディやリズムと、今風のドラムソロとの対比が面白いドン・チェリー作の2曲目、オーネットの曲らしくジャズの範囲での飛翔が感じられる3曲目、スピーディーでこれまた飛び跳ねているデューイ・レッドマン作の4曲目、渋さとアバウトさ、民族的要素が同居しているような5曲目、ベースソロではじまり中間部にもソロがある、緩急自在なチャーリー・ヘイデン作のタイトル曲の6曲目。

 

2005/11/14

Sanfona/Egberto Gismonti & Academia De Dancas

1203

エグベルト・ジスモンチのリーダー作。このアルバムも2枚がそれぞれ趣向が違うので、1枚ずつ分けて出した方がいいのでは、とも思えるのですが、あえてこうしている理由が何かあるのでしょうか。他にもいくつか、テーマがそれぞれ違うけど、2枚組としてまとめて発売されているアルバムがありますし。ただ、今回のように、1枚はグループで、1枚がソロで、というのもアリなんじゃないかなあ、と聴いていて思うようになりました。彼の演奏って、本家ブラジルから出しているアルバム以外では、ECMが一番入手しやすいし、少し洗練された感じはあるけれども、それでもブラジル色が出ているなあ、と感じます。

 

Sanfona/Egberto Gismonti(G, P, Vo) & Academia De Dancas(ECM 1203/04)(輸入盤) - Recorded November 1980 and April 1981. Mauro Senise(Ss, As, Fl), Zeca Assumpcao(B), Nene(Ds, Per) -Egberto Gismonti & Academia De Cancas - 1. Maracatu 2. 10 Anos 3. Frevo 4. Loro 5. a) Em Familia b) Sanfona c) Danca Dos Pes d) Eterna Solo - 1. De Repente 2. Vale De Eco 3. Cavaquinho 4. 12 De Fevereiro 5. Carta De Amor

(02/11/15)全曲エグベルト・ジスモンチのオリジナル。別々の2枚のアルバムを合わせた雰囲気の2枚組。1枚目がグループによる演奏ですが、やはり彼の曲は彼の曲、という印象。淡い色調のサウンドで、ラテン色を感じる場面も。曲の展開は観念的な部分やフリーの部分も一部にありますが、時にサックスやフルートのメロディが印象に残ります。5曲目は21分にも及ぶ彼ならではのドラマチックな組曲構成で、彼の原初的な表現に近い部分かも。2枚目はソロによる演奏です。ここではギターの演奏が中心。多重録音の曲もありますが、個性的なアルペジオの織り成す色彩の世界にひたるようなサウンド。特に16分台の1曲目は、曲の進行とともにその表情を変えていきます。2曲目はインディアンオルガンでの演奏。

 

Tell It Like It Is/The Tenor Triangle With The Melvin Rhyne Trio

1089
Criss Cross順番聴き4日目。オルガントリオをバックにテナー・サックス3人がバトルを繰り広げる(というよりは、それぞれがソロを演奏して次に引き継いでいく、というのがほとんどですが)演奏方法、けっこう好きです。特にここでの3人、エリック・アレキサンダー以外は知名度は日本では今ひとつですが、演奏は当然ながらうまく、何よりもあまりリスナーが訓練されてなくても3人の個性が聴き分けられるのがいいところではないかな、と思います。アレキサンダーには「メカニカルな」という表現も使いたいところですけれど、バラードなどでは歌心もけっこうあると思うし、それはこのアルバムを聴いてみてのお楽しみ、ということで。


Tell It Like It Is/The Tenor Triangle With The Melvin Rhyne(Org) Trio(Criss Cross 1089)(輸入盤) - Recorded January 4, 1993. Ralph Lalama(Ts), Eric Alexander(Ts), Tad Shull(Ts), Peter Bernstein(G), Kenny Washington(Ds) - 1. Tell It Like It Is 2. Thing One 3. Minor Changes 4. Ballad Medley: When Sunny Gets Blue, Cherokee, Memories Of You 5. Lazy Bird 6. Body And Soul 7. The Eternal Triangle

(05/11/05)スタンダードやジャズメン・オリジナル中心で、個性的な3人のテナーが聴きどころ。都会的な、高音域がやや多いエリック・アレキサンダー、やや低音でブロウしている感じのタッド・シュル、メロディアスな感じのソロをとるラルフ・ララマ。1曲目はウェイン・ショーター作のまだジャズっぽい時代だった頃の作品を、ブルースのような味付けで。タッド・シュル作のやはりソロが取りやすいミディアムテンポの2曲目、ピーター・バーンスタイン作の渋いマイナーブルースの3曲目、3曲のバラードのメドレーをそれぞれワン・ホーンで演奏する4曲目、ジョン・コルトレーン作をアップテンポのボッサ調で楽しく料理する5曲目、普通ならバラードを陽気な4ビートで料理する6曲目、ソニー・スティット作のアップテンポで迫力ある7曲目。

2005/11/13

Invocations, The Moth And The Flame/Keith Jarrett

1201 先日「インプレッションズ」に書いた、古い2枚組CDで中に挟まっていたスポンジが劣化してCDの印刷面を一部溶かしてしまったというのは、キース・ジャレットの下記のアルバムなんです。輸入盤にライナーをつけて国内盤仕様にしていて、スポンジの材質が国内盤のものと違っていました。これもたまたまアルバムコメントを直すために取り出さなければ、もっと時間が経ってどうなっていたことかと(笑)。わざわざ買いなおすのもどうかなあ、と思い、これ以上溶けるのが進行しないかどうか、そのまま様子を見ることにします。

これはキース・ジャレットの2枚組で、1枚ずつテーマがあって、その描写という形で演奏が進行していきます。全く違った表現なので、1つずつ2つに分けて発売すればいいんじゃないかとも思えるのですが、何か狙いがあったのでしょうか? 演奏の方は、情景描写的な2枚目が好きで、そちらをよく聴いていた時期がありました。ただ、キースの膨大な作品群の中から、というと、これは少々地味なアルバムかな、とも思えます。

 

Invocations, The Moth And The Flame/Keith Jarrett(P, Org, Ss)(ECM 1201/02) - Disc1 Recorded October 1980. 1. First(Solo Voice) 2. Second (Mirages, Realities) 3. Third(Power, Resolve) 4. Fourth(Shock, Scatter), 5. Fifth(Recognition) 6. Sixth(Celebration) 7. Seventh(Solo Voice) Disc2 Recorded November 1979. 1. Part 1 2. Part 2 3. Part 3 4. Part 4 5. Part 5

邦題「インヴォケイションズ~蛾と炎」。「インヴォケイションズ」の方は、サックスとパイプオルガンを使用。 最初の1曲目と最後の7曲目では、サックスのよくのびる音でゆったりとメロディが漂っていきます。2曲目から6曲目はパイプオルガンの曲(曲によってサックスも多重録音しています)ですけれども、いわゆる持続音で攻めるというよりはメロディやサウンドがダイナミックに変化していく感じで、曲ごとに色合いが異なる感じ。「蛾と炎」の方は ピアノの演奏で、39分台の一連の作品。サウンド的なイメージとして、まず炎があって、蛾が自由に飛び回っていた後に、炎に近づいてやがて焼かれてしまう?様子が見えるような表現です。 2曲目の穏やかで牧歌的な場面や、3曲目の明るく8ビート的に進む場面も印象的。

 

Better Times/Rob Bargad Sextet

1086
Criss Crossレーベル順番聴き3日目。このロブ・バーガドというピアニスト、どこかで名前を聞いたような気がするのですが、Criss Crossにはこのリーダー作を1作残したっきりで、サイド参加作もありません。Amazonでも調べたところ、やっぱり出てくるのはこのアルバムだけ。なかなかいいなあと思うのですが、録音の機会に恵まれなかったのでしょう。こういうときに注目するのはオリジナル曲で、今回は7曲もあって、けっこういろいろな趣向の曲がちりばめられています。まあ、録音枚数の多さと実力はあまり相関関係がないと思いますけれど、ただこのレーベルには珍しく、録音が1日で終わっていないんですね。何かトラブルでもあったのでしょうか。


Better Times/Rob Bargad(P) Sextet(Criss Cross 1086)(輸入盤) - Recorded December 30, 1992 and December 10, 1993. Eddie Henderson(Tp, Flh), Tom Williams(Tp on 7), Steve Wilson(As, Ss), Donald Harrison(As on 7), Peter Washington(B), Billy Drummond(Ds), Daniel G. Sadownick(Per) - 1. Better Times 2. Tears 3. Little J.J. 4. The Snake 5. Is It Love? 6. Carla Vallet 7. When I Fall In Love 8. My Shining Hour 9. Star Eyes 10. Autumn Song

(05/11/05)全10曲中Rob Bargadの作曲は7曲(1-6、10曲目)。7曲目のみフロント違い。曲によって(’93年録音の方)パーカッションが参加しているので、リズムがいい感じ。ミディアムタッチでファンキーな感じのある、懐かしいサウンドのタイトル曲の1曲目、ミステリアスな雰囲気を持つ、ボッサに近い雰囲気の2曲目、テーマがやや複雑、アドリブはアップテンポでスリリングな3曲目、6拍子の都会的なファンク・チューンの4曲目、ピアノとミュート・トランペットでのバラードの5曲目、テンポも良く、ノレる感じの元気な6曲目、メロディが美しいバラードからややスローな4ビートにいく7曲目、ワルツ進行になっているやや元気な8曲目、ラテン風の陽気さのあるスタンダードの9曲目、ソロ・ピアノで美しいメロディを奏で上げる10曲目。

2005/11/12

Harcology/Greg Gisbert Quintet

1084
Criss Crossレーベル順番聴き2日目。Criss Cross初登場のGreg Gisbert、コメントにも書いたけれど、速いパッセージでもバラードでも端正な印象があります。きっちりと吹いていく人。サイドにクリス・ポッターを持ってきたものだから、個人的にはどうしても個性的なクリス・ポッターに耳がいってしまうのですが、グループ全体のバランスとしてはとれているのではないかな、と思います。まあ、ジャズにはちょっとしたアクも必要だとは思うのですが、端正なのも個性のうちですしね。もう少しリーダーとしてオリジナルを聴きたかった気もしますけれど、メンバーからは4作(ピアノのJohn Campbell作は4曲目)あるので、それはそれで楽しめました。


Harcology/Greg Gisbert(Tp) Quintet(Criss Cross 1084)(輸入盤) - Recorded December 28, 1992. Chris Potter(Ts, Ss), John Campbell(P), Dwayne Burno(B), Gregory Hutchinson(Ds) - 1. Is That So 2. Harcology 3. Eleventh Hour 4. Turning Point 5. Autumn In New York 6. Uxmal 7. Three In One 8. The Eternal Triangle

(05/11/03)Greg Gisbert作は2曲目のみで、他のメンバーの曲やジャスメン・オリジナルが並びます。端正なトランペットを吹く人だという印象。デューク・ピアソン作のメロディアスなソロが続くミディアム・アップテンポの1曲目、8分の6拍子でメカニカルなテーマの掛け合いの部分もあって印象的なタイトル曲の2曲目、クリス・ポッター作のアップテンポのソロがまた迫力のある、ドラムソロもある3曲目、都会的な雰囲気で渋めながらもやや盛り上がって進んでいく4曲目、スタンダードのバラードをワン・ホーンで朗々と奏でる5曲目、ポッター作のモーダルに進行していく6曲目、サド・ジョーンズ作でテーマ、ベースソロのあと今風バップ的にホーンやピアノが進む7曲目、アップテンポで速いパッセージが連続するスリリングな感じの8曲目。

Eventyr/Jan Garbarek

1200 現在何年も断続的にECMのアルバムコメントの手直し中で、1001番からはじめて1210番まで、やっと手直しが終わったところです。そして1650番からあとも、発売が比較的新しいために直っていて、ちょうどこの間にまだまだ手直しをしていないものがあります。Blue Noteなどは資料がいろいろ出回っているけれど、ECMのCDの中身がどうなのか、という日本語の資料は少ないと思うので、あと何年かかっても、この作業を続けて行きたいと思います。でも、ホント、作業は断続的です。

ヤン・ガルバレクのリーダー作。でも、だいたいの曲がフリー・インプロヴィゼーションで、相手がギターとパーカッションというのが個性的ではありますね。でも、ガルバレクはECM的にマイペースとでも言うのでしょうか、どんなメンバーが相手でも、アイデンティティは崩れないというか、空間的にも生かされている演奏だし、少し地味かもしれないけれど、興味深い演奏です。

 

Eventyr/Jan Garbarek(Ts, Ss, Fl)(ECM 1200)(輸入盤) - Recorded December 1980. John Abercrombie(G), Nana Vasconcelos(Talking Ds, Per, Voice, etc.) - 1. Soria Maria 2. Lillekort 3. Eventyr 4. Weaving A Garland 5. Once Upon A Time 6. The Companion 7. Snipp, Snapp, Snute 8. East Of The Sun And West Of The Moon

面白い編成で、しかも トラディショナルの4曲目以外は、フリー・インプロヴィゼーション(?)。全体的にエスニックというか、比較的静かな無国籍的なサウンドが多いですが、これはヤン・ガルバレクとナナ・ヴァスコンセロスの指向性だと思います。夕闇の中をゆったりと漂っているような哀愁のある11分台の1曲目、牧歌的な中を印象的なメジャーのリフが断片的にあらわれてくる2曲目、前半サックスが朗々と唄い、後半幽玄なフルートの、タイトル曲の3曲目、やんわりと浮かび上がるようなメロディの4曲目、ちょっと暗めで緊張感がある5曲目、ギターが不参加の6-7曲目は、2人の国籍の特徴がよく出ている6曲目、素朴な雰囲気で語りかけてくる7曲目。妖しげな音たちが浮かんでは消えていく、スペイシーな8曲目。

 

2005/11/11

The Gift/Billy Drummond Quartet

1083
Criss Crossレーベル順番聴き1日目。ドラマーのリーダー作ですが、オリジナルはなく、トータルサウンドでもいくけれども場面によってはオレがオレがのドラムソロで、バランスとしてはいいのではないかな、と思います。ジャズメン・オリジナルが多いといっても、昔の曲は少なく、今の曲が多いところも特徴。クァルテットの人選も良いみたいで、アグレッシヴな部分も持ちながら、どことなく都会的なSeamus Blakeのサックスもけっこう自己主張しているし、Renee Rosnesのピアノもいい感じ。特にクインテットにしなければならない部分がなくて、全体的に引き締まった印象があります。分かりやすいスタンダードはありませんが、やっぱり「今」を行っているんだと思います。


The Gift/Billy Drummond(Ds) Quartet(Criss Cross 1083)(輸入盤) - Recorded December 23, 1993. Seamus Blake(Ts, Ss), Renee Rosnes(P), Peter Washington(B) - 1. Car Tunes 2. The Common Law 3. Ode To Angela 4. Apex 5. The Gift 6. Gargoyles 7. Dear Old Chicago 8. Devil May Care

(05/11/03)Billy Drummondの曲はなく、かわりにRenee Rosnesの曲が2曲。ジャズメン・オリジナルが中心で、「今」のジャズ。ドラムスも前面に出てきます。元気さと現代的な冷徹さが同居している、アップテンポでサックスがゴリゴリくる1曲目、浮遊感がある複雑そうな展開の、やや抑え気味ながら出るところは出る2曲目、ハロルド・ランド作のボッサ・ナンバーをサックスが自由に駆けまわる3曲目、チャールス・ロイド作の目まぐるしいメロディで、ピアノが抜けてアップテンポの4曲目、幻想的でやや控えめなバラードのタイトル曲の5曲目、ロングトーンと変わったリズムと、アップテンポの4ビートが交互に出る6曲目、クリフォード・ジョーダン作の12分にもわたるワルツの7曲目、ボブ・ドロー作のアップテンポでせまる8曲目。

Stella Malu/Katrina Krimsky, Trevor Watts

1199

これも初のECMの録音のデュオ。トレヴァー・ワッツはその後も何枚かリーダー作を出しています。フリー・インプロヴィゼーションと言うには美しい旋律が随所に出てきます。やはり2人での作曲だったのかなあ、と思えるほど。こういう時ジャケット写真がそのイメージを伝えているのって、いいですよね。実は買った当時、ほとんど1-2階しか聴いてなくて、今(’23年)になって聴き返して、なかなかいいなあ、と思うようになってます。コメントを当時残しておいたのが救いかも。この時期のこういうアルバム、集めていた当時も意外に見かけていなかったので、今ではCDで探すのは難しいのかな、とも思えます。

 

Stella Malu/Katrina Krimsky(P), Trevor Watts(Ss, As)(ECM 1199)(輸入盤) - Recorded March 1981. - 1. Mial 2. Stella Malu 3. Duogeny 4. Rhythm Circle 5. Cyrstal Morning 6. Song For Hans 7. Moonbeams 8. Villa In Brazil

(02/06/07)全曲演奏者のオリジナル、と言うよりはインプロヴィゼーションか。静かできれいなイメージの曲が多いです。キラキラと高音部を多用したピアノの音に寄りそうように歌っているサックスの1曲目、ソロ・ピアノでしっとりとメロディアスに綴っていくタイトル曲の2曲目、ゆったりと郷愁を誘うようにメロディを綴って展開していく11分台の3曲目、エコーが効いたサックスのみで不思議な効果をもたらす4曲目、聴いていて、なるほど「クリスタル・モーニング」だと思うような曲調の5曲目、哀愁のある世界が広がるソロ・ピアノでの6曲目、インプロヴィゼーション的展開を示す静かでスペイシーな7曲目。どことなく素朴な雰囲気を漂わせつつノリの比較的良い8曲目はフェードアウトで余韻を残しつつ、遠ざかります。

 

2005/11/10

Dawn Dance/Steve Eliovson

1198

ECMには1枚しかアルバムを残さなかったミュージシャンというのも多く、このスティーヴ・エリオブソンもその一人。演奏としては少々地味ながらけっこういいと思うのですけれども。南アフリカ出身で、世の中に出ているのも、このアルバム1枚だけということです。でも、コリン・ウォルコットとのデュオで、いい演奏を残しているのに、もったいない話です。このアルバムだけ聴くとけっこうクォリティーが高く、実際何度も聴いています。まあ、世の中には、チャンスの問題とか、吐き出せる才能がアルバム1枚分だったとか、いろいろな問題があり、こういうミュージシャンもけっこういますけれど。

 

Dawn Dance/Steve Eliovson(G)(ECM 1198) - Recorded January 1981. Collin Walcott(Per) - 1. Venice 2. Earth End 3. Awakening 4. Song For The masters 5. Wanderer 6. Dawn Dance 7. Slow Jazz 8. Africa 9. Memories 10. Eternity

コリン・ウォルコットとのデュオ。曲によってはそれぞれのソロ。そこはかとない哀愁やエキゾチックさ、深さを感じさせるアコースティック・ギター。ハーモニーが個性的。ドラマチックなメロディが印象的にせまってくる1曲目、スペイシーでハーモニーのセンスが良い2曲目、ウォルコットのインタールード的な3曲目を経て、ギターのアルペジオの進行が美しい4曲目、2人のインプロヴィゼーションにしては進行がきれいな5曲目、哀愁系ではじまってだんだん目の前が開けてきて再び最初に戻る、タイトル曲の6曲目、スロージャズと言うよりはきれいなバラードの7曲目、これまた青く広がるアフリカの空を連想させる8曲目、美しいメロディの小品の9曲目。そして静かな2人のインプロヴィゼーションで幕を閉じます。(01年6月21日発売)

 

2005/11/09

Dolmen Music/Meredith Monk

1197

後年の扱いはNew Seriesなんですけど、正式にはまだその名は出ていない時期のアルバムで、メレディス・モンクのECM初リーダー作になります。ただ、クラシックや現代音楽に区分するのも微妙で、こういうアルバムもまたボーダーレスな世界に迷い込むようなアルバムになってきます。通常の歌唱の中に、妙に響く個性的な叫びというのかつんざきというのか、そういうヴォイスが混ざっていて、不思議な気持ちになります。ここでもジャズ畑からのコリン・ウォルコットの名前も見えますし。こういうアーティストもECMでなければ日の目を見なかった可能性もあるかもしれません。ただ彼女の歌は、聴く人を選ぶかもしれません。

 

Dolmen Music/Meredith Monk(Voice, P)(ECM (New Series) 1197)(輸入盤) - Recorded March 1980 and January 1981. Collin Walcott(Per, Vln), Steve Lockwood(P), Andrea Goodman(Voice), Monica Solem(Voice), Julius Eastman(Voice, Per), Robert Een(Voice, Cello), Paul Langland(Voice) - 1. Gothem Lullaby 2. Travelling 3. The Tale 4. Biography 5. Dolmen Music a) Overture And Men's Conclave b) Wa-Ohs c) Rain d) Pine Tree Lullaby e) Calls f) Conclusion

(02/09/09)全曲メレディス・モンクの作曲。クラシックや現代音楽のジャンルのヴォーカル曲というより、鋭い張りのある声のパフォーマンスという気がします。一度聴いたら忘れられない声。5曲目のタイトル曲は23分に及ぶ組曲で、6人のヴォイスによる演奏が聴けますが、合唱というよりヴォイスの重なり合いがミステリアスかつエキゾチックで、沈んだ感じのサウンド。そして、ヴォイスがメイン。 コリン・ウォルコットの参加が目を引きます。

 

2005/11/08

Cellorganics/Thomas Demenga/Heinz Reber

1196

まだNew Seriesがはじまってなかった時期のクラシックですが、もうここまでくると、その方向性を積極的に出すようになってきます。チェロとパイプオルガンの2人による演奏ですけど、演奏者のハインツ・レーバーとトーマス・デメンガの作曲になっていて、クレジットだけを見ると、2人の即興演奏ではないか、と勘繰りたくもなります。ただ、クラシック畑の人たちなので、譜面があったのかどうか、気になるところではありますね。カッチリとしていて、しかも、コード進行的なものもある感じなので、記譜された音楽ととらえるのが自然なのかもしれませんけど。ボーダーレスな作品として聴いても、なかなかいい感じではあります。

 

Cellorganics/Thomas Demenga(Cello)/Heinz Reber(Pipe Org)(ECM (New Series) 1196)(輸入盤) - Recorded October 1980. - 1. Cellorganics #1 2. Cellorganics #2 3. Cellorganics #3 4. Cellorganics #4

(02/09/09)ハインツ・レーバーとトーマス・デメンガの作曲。チェロとパイプオルガンという組合わせで、曲のタイトルや2人での作曲というところから、クラシック版フリー・インプロヴィゼーションを想像してしまいますが、ゆったりと進んでいきながらも、もっとカッチリしていてドラマチックな雰囲気。メロディが印象的な部分も。全体的に荘厳で、大きい音でせまってくるところもあり、メロディやサウンドの色彩感は寒色系ながら豊かです。

 

2005/11/07

Who's To Know/Shankar

1195

インドのシャンカールも、ここではECM初リーダー作ですが、その後何枚もアルバムを出しているので、要注目のミュージシャンのひとりだったかもしれません。ここでは、エレクトリック・ヴァイオリンとパーカッションが目立ちますが、インドの古典ミュージックの様式に乗っ取り、長い演奏を2曲という構成にしているのかもしれません。インドの音楽にはこの場面ではこういう曲をというのがあるようで、そういったものをいったん作曲し直して、少しわかりやすくしている部分もあるのかも。それにしても、聴く側としては、完全にインド音楽ですよね。日本はともかく、ヨーロッパでは意外に需要が多かったのかなあ、と考えてしまいます。

 

Who's To Know/Shankar(Vln, Tamboura)(ECM 1195)(輸入盤) - Recorded November 1980. Umayalpuram K. Sivaraman(Mridangam), Zakir Hussain(Tabla), V. Lakshminarayana (Cond) - 1. Ragam-Tanam-Pallavi (Raga-Hamavathi) 2. Ananda Nadamadum Tillai Sankara (Ragam-Savithri Tala-Adi)

シャンカールによる作曲。サブタイトルは「インディアン・クラシカル・ミュージック」。ただし、シャンカールはダブルネックのエレクトリック・ヴァイオリンを使用しているので、古典音楽そのままではないと思いますが。音階や曲のタイトル、他の参加メンバーをみると、ほぼインド古典音楽とみて良いのでは。それぞれ22分を超える長い曲が2曲。出だしはヴァイオリンを中心に、インド的な穏やかなドラマを垣間見せてくれます。徐々にタブラが加わったりしてリズムがつき、インドのノリをけっこう体に感じることができます。だんだん盛り上がってきて、全員かなりのテクニック。2曲目も静かなヴァイオリンの場面からはじまりますが、また違った雰囲気。リズムが入ってきますが、このリズム(特に後半)もなかなかスゴい。

 

2005/11/06

The Amazing Adventures Of Simon Simon/John Surman

1193

ジョン・サーマンのリーダー作。相変わらず多重録音で、バップフレーズがなくて哀愁漂うメロディやアルペジオで構築されている彼の特徴あるサウンドが満載のアルバムです。曲によりジャック・ディジョネットも参加していますが、基本的にはサーマンが中心でいろいろサウンド作りをやっているのではないかと思われます。バス・クラリネットやバリトン・サックスの音が個人的にはけっこう好きなんですが。ここでは物語性を持たせた曲をつなげて、その展開を楽しむ作りになっているようです。でもイギリスの音というか、そういう寂しげな感じがうっすらと出ている感じ、けっこう好きです。その後アルバムを量産する一人です。

 

The Amazing Adventures Of Simon Simon/John Surman(Ss, Bs, Bcl, Synth)(ECM 1193) - Recorded January 1981. Jack DeJohnette(Ds, Per, P) - 1. Part 1 Nestor's Saga (The Tale Of The Ancient) 2. Part 2 The Buccaneers 3. Part 3 Kentish Hunting (Lady Margaret's Air) 4. Part 4 The Pilgrim's Way (To The Seventeen Walls) 5. Part 5 Within The Halls Of Nepture 6. Part 6 Phoenix And The Fire 7. Part 7 Fide Et Amore (By Faith And Love) 8. Part 8 Merry Pranks (The Jester's Song) 9. Part 9 A Fitting Epitaph

邦題「サイモン・サイモンの不思議な旅」。アルバムタイトルや個々の曲名(邦題が面白い)からしてアルバムにストーリー性があるかもしれません。1曲目「ネスターの武勇伝」10分台の曲で、厳かなキーボートをバックに流れるメロディ。2曲目「海賊たち」サックスとドラムによるインプロヴィゼーション。3曲目「王国の人たちの狩猟」サックスの多重録音。4曲目「放浪の路」6曲目「不死鳥と炎」7曲目「信仰と愛」はフリー・インプロヴィゼーションか。5曲目「海神の懐で」は何となくプログレ風のバックのサウンド。8曲目「メリー・プランクス」はシンバルとのデュオながら何となくジャジー。9曲目「旅の終わり」サックスの多重録音。アグレッシヴな部分はあっても、ジャズと言うよりは、いつものジョン・サーマンのカラーが強いサウンド。(99年9月15日発売)

 

2005/11/05

Kids Are Pretty People/ウラジミール・シャフラノフ・トリオ

Vladimirkids
澤野工房で一番誰が有名かというと、やっぱり発売枚数の多さと録音点数から、このウラジミール・シャフラノフではないかと思います。バンバン盛り上がる場面もあれば、繊細な場面もありますが、何よりも楽しめる種類のジャズであって、彼のどういう演奏であっても、ベクトルはリラックスする方向に向かうんではないかと思うほどに、彼のピアノは印象付けられます。私も普段は聴かない種類の演奏ですが、このピアニスト、やっぱりかけてしまうと割とその後、BGMとしてヴォリュームをちょっと小さめにしてヘヴィーローテーションになりやすい、という経験があります。広くジャズ周辺の方でもウケてしまうんではないか、そこがまたセールスにつながるんではないかと思いますが、どうでしょうか。


Kids Are Pretty People/ウラジミール・シャフラノフ(P)・トリオ(澤野工房)
Kids Are Pretty People/Vladimir Shafranov(P) Trio(Atelier Sawano AS051) - Recorded April 22, 2005. Pekka Sarmanto(B), Jukkis Uotila(Ds) - 1. O Que Tinha De Ser 2. With Malice Toward None 3. Avila And Tequila 4. I Wish I Knew 5. Cinema Paradiso "Love Theme" 6. Glad To Be Unhappy 7. Firm Roots 8. Brigas Nunca Mais "No More Fighting" 9. Easy Walker 10. Cup Bearers 11. Kids Are Pretty People 12. Prelude No.20 13. It Never Entered My Mind

ウラジミール・シャフラノフ作はなく、スタンダード、ジャズメン・オリジナル、クラシックやボッサ。理屈抜きに聴けるジャズ。哀愁のあるボッサの1曲目、ワルツでそれなりにまったり聴ける2曲目、急にアップテンポでスリリングなラテン的、時に4ビートの展開になる3曲目、品の良いゴージャスな感じもあるジャズの4曲目、しっとりとしたメロディの映画音楽の5曲目、キラキラした感じでミディアムの6曲目、ちょっとアグレッシヴながら品が良い7曲目、軽い感じのボッサから4ビートになる8曲目、ゴキゲンなミディアムでちょっとどっしり感のある9曲目、やはり陽性でアップテンポの10曲目、ミディアムで渋いメロディとアドリブのタイトル曲の11曲目、クラシックの雰囲気をあまり崩さない12曲目、しっとりとしたバラードの13曲目。(05年10月21日発売)

To Be Continued/Terje Rypdal

1192

テリエ・リピダルのリーダー作で、このメンバーでは2作目。あまりアルバムに登場してこないミロスラフ・ヴィトウスが連続して登場というだけでも貴重だし、しかもジャック・ディジョネットとのトリオで、相変わらずエフェクター効きまくりのリピダルのギターと併せて、独特なサウンドを紡ぎだしているのは見事です。1曲目こそ、ゆったりと、それでいて雄大な空間を作り出していますけど、2曲目以降、4ビートもあったり、ファンク・ロック的なものもあったり、けっこう変化に富んでいます。レーベルには素晴らしい組み合わせが多すぎて、なかなかセレクトは難しいですけど、この組み合わせもけっこう印象的です。

 

To Be Continued/Terje Rypdal(G, Fl)(ECM 1192) - Recorded January 1981. Miroslav Vitous(B, P), Jack DeJohnette(Ds, Voice) - 1. Maya 2. Mountain In The Clouds 3. Morning Lake 4. To Be Continued 5. This Morning 6. Topplue, Votter & Skjerf 7. Uncomposed Appendix

このメンバーで2枚目。それぞれのオリジナルと5曲目が3人のフリー・インプロヴィゼーション。ギターにエフェクトを思いっきりかけて広がりのあるサウンドを出し、独特な世界を演出する曲も。また、最強のリズムセクションが、三位一体となったサウンド 。映画音楽のようなフリーのような、その空間的な広がりをゆったりと味わう事のできる1曲目、アップテンポやミディアムの4ビートを基調に進んでいく2曲目、多重録音でヴィトウスのピアノも聴けるややどんよりとしたサウンドの3曲目、エレキベースでファンク・ロックのような4曲目、ベースの高音アルコを筆頭に、リピダルのフルートの参加も含め、緩急自在にせまってくる5曲目、薄暮のメロディを演出するバラードの6曲目。7曲目の小品は何とディジョネットのヴォイスも。

 

2005/11/04

カム・トゥゲザー/マンハッタン・ジャズ・クインテット

Mjqcome
「商業主義」とコアなジャズファンから非難されることの多い、MJQ(マンハッタン・ジャズ・クインテット)ですが、私も彼らのファーストアルバムが4ビート歴の最初の方でけっこうハマるきっかけになったので、ジャズの裾野を広げる意味ではけっこう意味があったんじゃないかと思います。最初の方のアルバムはそれこそ10万単位で売れたという話も聞きます。デヴィッド・マシューズのアレンジが嫌いという人もいるでしょう。特徴としてはアレンジが凝っているけれど、ほとんどの曲でテーマは2管のユニゾンでそのままなぞり、非常に分かりやすいテーマを提供している、ということがあります。また、各方面の(今回は主にビートルズの)有名な曲を演奏していることも特徴。アレンジを加えてはいても、アドリブ部分は他のジャズとあまり変わることはありません。コアなジャズファンが難解なジャズを聴くのもジャズですが、例えばこの「MJQ」や「上原ひろみ」などのようにジャズ周辺をいかに取り込んでいくか、ということが考えられた演奏も「ジャズ」なんですね。


カム・トゥゲザー/マンハッタン・ジャズ・クインテット(Videoarts)
Come Together/Manhattan Jazz Quintet(Videoarts) - Recorded June 14 and 15, 2005. David Matthews(P), Lew Soloff(Tp), Andy Snitzer(Ts), Charnett Moffett(B), Victor Lewis(Ds) - 1. Come Together 2. A Day In The Life 3. Big Apple Jam Part 2 4. Michelle 5. We Can Work It Out 6. I Was Born To Love You 7. All My Loving 8. Don't Stop Me Now 9. Over The Rainbow

ビートルズの曲が5曲、クイーンの曲が2曲、デヴィッド・マシューズの作曲が1曲、スタンダードが1曲。タイトル曲の1曲目の出だしのアレンジやアップテンポで重量級の展開など、けっこう斬新です。ウェス・モンゴメリー・ヴァージョンと違って、軽快なラテン・サウンドと4ビートが入り混じる構成に仕上がっている2曲目、アップテンポでなかなか都会的なオリジナルの3曲目、しっとりとした哀愁に包まれるバラードの4曲目、アップテンポではじまったと思ったら途中半分のテンポの部分もある5曲目、けっこう明るいややアップテンポのボッサ調の6曲目、意表をつく出だし、おなじみのメロディ、4ビートとつながるジャズしている7曲目、出だしの大らかなバラードから元気なサウンドに変わる8曲目、3拍子でちょっとノレる9曲目。(05年10月19日発売)

As Falls Wichita, So Falls Wichita Falls/Pat Metheny & Lyle Mays

1190

パット・メセニーとライル・メイズのデュオの演奏で、そこにナナ・ヴァスコンセロスが参加したアルバム。もうこれは説明不要なくらいのアルバムですけど、このメンバーでシンセサイザーなども駆使しながら、情景描写を思わせるような、時に雄大な風景を色覚的に思い出させるような演奏をしたものだと思います。個人的にはECM時代のメセニーのアルバムのほとんどを好きですけど、これもかなり好きな部類になりますね。この時期、この2人が関わっていると、ああ、2人で作り出した音だなあ、と分かります。今振り返ってみても(’23年)、メセニーのアルバムはたくさん出ましたが、ライル・メイズがいた時期が最も印象が強いです。

 

As Falls Wichita, So Falls Wichita Falls/Pat Metheny(G, B) & Lyle Mays(P, Synth, Org)(ECM 1190) - Recorded September 1980. Nana Vasconcelos(Per, Dr, Vo) - 1. As Falls Wichita, So Falls Wichita Falls 2. Ozark 3. September Fifteenth (Dedicated To Bill Evans) 4. "It's For You" 5. Estupenda Graca

パット・メセニーとライル・メイズのデュオ(全曲2人での作曲)に、ナナ・ヴァスコンセロスが参加したアルバム。ライル・メイズの色が濃く出ていると思います。この中で注目すべきはタイトル曲の20分もある1曲目で、アメリカの情景を思わせるようなゆったりした広大なサウンドが、場面によって哀しみ、喜びなどの感情をあらわしながら物語性を帯びて聴く人の心にせまってきます。ピアノやギターが細かいフレーズを連射しつつも、表情を変えながらも明るいサウンドで楽しい2曲目、サブタイトルで「ビル・エヴァンスに捧ぐ」とあって、しっとりした印象的なメロディを陰影に富んだ表情で淡々と綴っていく3曲目、グループでの演奏の雰囲気に近い、後半ノリの良い曲調の4曲目、ヴォイスのメロディが印象的で牧歌的な5曲目。(02年9月19日発売)

 

2005/11/03

キューン/ラファロ 1960/スティーヴ・キューン、スコット・ラファロ

Kuhn1960
’60年の録音ものまでさかのぼるのも久しぶりですが、今まで未発表だったテープの初公開ということで、かなり貴重な音源。しかも、スティーヴ・キューンとスコット・ラファロとの録音で、興味ないはずがないですよね(笑)。ラファロもビル・エヴァンスへの参加作品ほどにはトリッキーではないように感じますが、それでも十分個性を発揮しているように思います。4-5曲目の「ソー・ホワット」をもう取り上げているあたり先進性を感じますが、キューンのピアノはモーダルではなくてメロディアスに聴こえるのは私だけでしょうか。収録時間は短めですが、音源としてはスタジオ録音で音も良いし、聴いてみても損はないとは思います。ただ、今まで未発表だった、という理由も何となく分かるような気も。


キューン/ラファロ 1960/スティーヴ・キューン(P)、スコット・ラファロ(B)(P.J.L.)
1960/Steve Kuhn(P), Scott LaFaro(B), Pete La Roca(Ds)(P.J.L.) - Recorded November 29, 1960. - 1. Little Old Lady 2. Bohemia After Dark 3. What's New 4. So What 5. So What (Alternate Take)

’60年録音。ピート・ラロッカとのトリオ。貴重な未発表音源で、収録時間は29分ほど。スコット・ラファロの名前で買う人が多いのでしょうけれど、あまりトリッキーではなく、どちらかというとオーソドックスな4ビートの方が目立っています。ただ、時期を考えると、けっこう進んだベースではないかとも思えます。特にベース・ソロは独壇場かも。1曲目はジョン・コルトレーン作の明るいメロディを持っているスタンダードのような雰囲気の曲。アップテンポで、バップの雰囲気を残しつつ、ピアノもベースもかなり速いフレーズをこれでもかと繰り出していく2曲目、スローなバラードでの美しいメロディを聴かせ、そこにゆったりとラファロらしく絡んでいくさまがなかなかに興味深い3曲目、この当時でもう「ソー・ホワット」を取り上げていて、モードとの関わりが印象的な4-5曲目。(05年10月19日発売)

Tin Can Alley/Jack DeJohnette's Special Edition

1189

ジャック・ディジョネット・スペシャル・エディションの2作目。もうここでフロントのメンバーが2人とも入れ替わっているんですね。それでも、ちゃんとこのグループの音が出ているところは見事です。けっこう好きなことをやっているように思えて、マンフレート・アイヒャーは人気のあるミュージシャンには、そう言うところを許しているんだなあ、という印象を持った記憶があります。ここでも4ビートジャズは出てきますしね。でも、そのサウンドも個性的で、そう言うところは、いわゆるECMサウンドというものはない、という発言も本当なのかな、とも思いますけど。スペシャル・エディションの個性は、まず聴いてみないとなあ、とも思いますが。

 

Tin Can Alley/Jack DeJohnette's Special Edition(Ds, P, Org, Per, Vo)(ECM 1189) - Recorded August 1980. Chico Freeman(Ts, Fl, Bcl), John Purcell(Bs, Fl, As), Peter Warren(B, Cello) - 1. Tin Can Alley 2. Pastel Rhapsody 3. Riff Raff 4. The Gri Gri Man 5. I Know

5曲中4曲はジャック・ディジョネットのオリジナル。フロントのサックスがそっくり変わっても、ちゃんとスペシャル・エディションしています。曲によってテナーとバリトンのフロントなので、けっこうな重量感。浮遊感を伴うような重いテーマがあり、自由かつメロディアスなフレーズで4ビートで進んでいく1曲目、出だしで静かにフルートがささやいて、ソロ・ピアノを経て、サックスに切り替わり徐々に展開していく14分台のバラードの2曲目、バス・クラとバリ・サクで、不思議感覚のアヴァン・バップともいうような浮遊感のあるピーター・ウォレン作の3曲目。4曲目は ディジョネットの一人多重録音で、パーカッシヴかつ不安のオルガン。ヴォーカルも入ってサーカスの音楽のようなユーモアのあるテーマの、ブルージーに盛り上がる5曲目。

 

2005/11/02

ウィーンの夜~ライヴ・アット・バードランド/ジョー・ザビヌル

Joevienna
ジョー・ザビヌルはもうけっこうな歳なのに、相変わらず最先端を突っ走っている感じです。このアルバム、もったいないことに輸入盤は2枚組だそうで、1枚になってしまった国内盤に手を出してしまって、少々後悔しています(笑)。購入動機は、以前ザビヌル・シンジケートに加入していたスコット・ヘンダーソンが再びここに出てきて、2曲目と6曲目でちょっと目だっている(全曲に参加しているわけではないですが)ためです。まあ、これがなくともワールド路線のファンク/フュージョンでこれでもかと押しまくる路線は、ワン・アンド・オンリーの世界ではないかと思います。いったいいつまで突っ走る気なんだろう、と少々人事ながら心配になってしまいますが(笑)。


ウィーンの夜~ライヴ・アット・バードランド/ジョー・ザビヌル(Key)(Victor)
Vienna Nights/Live At Joe Zawinul's Birdland/Joe Zawinul(Key) & The Zawinul Syndicate(Victor) - Recorded May 26-30, 2004 and September 21-October 1, 2004. Lineley Marthe(B), Amit Chatterjee(G, Vo), Sabine Kabongo(Vo, Per), Manolo Padrena(Per, Vo), Nathaniel Townsley(Ds), Alegre Crrea(G), Karim Ziad(Ds, Per), Aziz Sahmaoui(Vo, Per), Arto Tuncboyaciyan(Per, Vo), Scott Henderson(G) - 1. Y'elena 2. Two Lines 3. Do YOu Want Some Tea, Grandpa? 4. Chabiba 5. Blue Sound/Note 3 6. Rooftops Of Vienna 7. Louange 8. East 12th Street Band 9. Boogie Woogie Waltz

ジョー・サビヌル作は全9曲中5作。いくつになっても元気でオリジナリティのあるワールド色満載のアルバムを発信。アフリカ出身のサリフ・ケイタ作のヴォーカル曲をやはりアフリカ風に料理している1曲目、ウェザー・リポートの曲の再演でアップテンポの4ビートライクでハードな展開の2曲目、適度なゆったり加減でヴォーカルが味わい深く絡んでいく3曲目、アフリカというか中近東というか、そういう陽気さを含むヴォーカル曲の4曲目、シンセサイザーのインプロヴィゼーション中心とヴォーカルの静かな5曲目、アップテンポで明るく、なかなかスリリングな展開の6曲目、エスニック色の強いやや静かな7曲目、やはり明るいワールド色が支配するヴォーカルも入る8曲目、ウェザー・リポートでの再演になる印象の強い9曲目。(05年10月21日発売)

Freigeweht/Rainer Bruninghaus

1187

ライナー・ブリューニングハウスのリーダー作。彼はすでにサイドマンとしていくつかのアルバムに出ていますが、なかなかいい、ECMらしいピアノを弾く人で、これがECMでの初リーダー作だったと思います。とは言うものの、ただおとなしいだけではなくて、盛り上がる場面もあって、けっこう芯は硬派だな、この人、と思います。参加しているメンバーにもよるのでしょうけど、特にケニー・ホイーラーの起用は、アルバムにとって良かったのでしょう。フロント楽器としてシャープな音色のフリューゲルホルンの音を残しています。ヨン・クリステンセンのドラムスも、この時期はけっこうはっきりと叩いていて、アクセントになってます。

 

Freigeweht/Rainer Bruninghaus(P, Synth)(ECM 1187)(輸入盤) - Recorded August 1980. Kenny Wheeler(Flh), Jon Christensen(Ds), Brynjar Hoff(Oboe, English Horn) - 1. Stufen 2. Spielraum 3. Redspuren 4. Die Flusse Hinauf 5. Tauschung Der Luft 6. Freigeweht

(99/09/10)硬質で透明感があり、やや沈んだアルバムの色調はこのメンバーだからでしょうか。けっこうピアノが美しい。1曲目は少し沈んだパーカッシヴで8分の7拍子のドラマチックな曲。ピアノとホーンが印象的で美しい。2曲目はシンセサイザーとドラムをバックに、これまたピアノとホーンが印象的なメロディを奏でます。3曲目は淡々と、しかもドラマチックに進行していく11分台の曲。ドラムがバックでアクセントを添えています。全体的に哀愁を帯びている4曲目、どちらかと言うと非ジャズ的なオーボエの演奏でシンセサイザーをバックにした5曲目。6曲目も12分台の曲ですが、オーボエとホーンが漂い、ドラムも厳かに自己主張しています。最後のピアノはこのアルバムの結末としてふさわしい。

 

2005/11/01

Little Movements/Eberhard Weber Colours

1186

エバーハルト・ウェーバーのリーダー作。メンバーもいいし(このメンバーでは2作目かな?)、ここでは「カラーズ」というグループ名を名乗っているところを見ると、このメンバーでずっと行こうとしていたのかもしれません。その前の作品では、ドラマー違いというのもありましたし。彼はもう、ECMの申し子というような特徴あるサウンドのベースを弾いていますし、作曲ももうその色が満載ですしね。ある意味、ECMの指標と(ちょっと言い方に語弊があるかもしれませんが)なるような曲やアルバムを作っていたと思います。今(’23年)では、彼のアルバムは中古市場で人気らしく、割と良い値段がついています。

 

Little Movements/Eberhard Weber(B) Colours(ECM 1186)(輸入盤) - Recorded July 1980. Charlie Mariano(Ss, Fl), Rainer Bruninghaus(P, Synth), John Marshall(Ds, Per) - 1. The Last Stage Of A Long Journey 2. Bali 3. A Dark Spell 4. Little Movements 5. 'No Trees?' He Said

(00/12/17)2曲目を除き、すべてエバーハルト・ウェーバーによる作曲。1曲目は幻想的な出だしから4分半をこえて哀愁を含んだ印象的なテーマに続く、印象的な展開の曲。2曲目は12分台の大作でスペイシーな出だしから3分をこえたところでフュージョン的なビートもメロディもはっきりとしたテーマが入りこんできます。民族音楽っぽい部分をはさんでメロディアスな後半部へと続きます。印象的なメロディがけっこうでてきて、特にチャーリー・マリアーノのソプラノ・サックスが心にしみる3曲目、エキゾチックでスペーシーなサウンドと元気な部分が同居するタイトル曲の4曲目、8分の7拍子でテーマもはっきりしている、メロディアスな5曲目。 まあ、メンバーがメンバーなので、ECM流フュージョンと言えなくもないですが。

 

スパイラル/上原ひろみ

Hiromispiral
上原ひろみの3作目。ここでこの3人だけのトリオでの演奏になり、ゲストはいなくなりました。キメもバシバシとキマり、内省的な演奏も多くなって、トリオとしてのまとまりがかなり良くなってきていて、ある時点での完成形をみたのではないかと思います。シンセサイザーを使用しているのが8曲目だけで、これはこれでシンセサイザーの特性を生かした面白くてノレる演奏なのですが、あえてほとんどの曲をピアノのみで演奏しているところなど、自信のあらわれかもしれません。私が思っているよりも、はるかに反響が多いのは、曲調からロックやプログレ、フュージョンのファンあるいはさらにその周辺の人たちにも違和感なく入れる、あまりジャズジャズしていない演奏だからかも。あまりに個性的ですが、話題作を聴いてみる価値はありそうです。


スパイラル/上原ひろみ(P、Key)(Telarc)
Spiral/Hiromi Uehara(P、Key)(Telarc) - Recorded May 28-31, 2005. Tony Grey(B), Martin Valihora(Ds) - 1. Spiral Music For Three-Piece-Orchestra: 2. Open Door-Tuning-Prologue 3. Deja Vu 4. Reverse 5. Edge 6. Old Castle, By The River, In The Middle Of A Forest 7. Love And Loughter 8. Return Of Kung-Fu World Champion 9. Big Chill

全曲上原ひろみの作曲。今回は3人だけでの演奏で、8曲目を除けばピアノで勝負。内省的な部分も増え、キメがけっこうキマります。あまり派手ではなく、静かにはじまったかと思ったら、穏やかな中にもスゴいフレーズも入っているドラマチックなタイトル曲の1曲目。2-5曲目は組曲になっていて、28分もの長さで、静かで美しいフレーズもちりばめられていて、メカニカルな部分もあったり、盛り上がるところは盛り上がる、まさに物語のような壮大な展開。まさに3人のオーケストラか。ラテンのテンポも良く、哀愁度がかなり強い情景的な6曲目、テンポが立ち止まるようなゆったりのような、それでホンワカとくる7曲目、シンセで「カンフー」が戻ったゴキゲンな8曲目、ゆったりと中間色的色合いでメロディアスに進む9曲目。(05年10月19日発売)

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