2008年5月 8日 (木)

5月のおススメ盤(工藤)

さて、久しぶりに大坂昌彦のアルバムが出ました。Paddle WheelからM&Iレーベルに移っても、硬派な感じのするところは相変わらずで、存在感のあるドラムを聴かせてくれます。ちなみにジャズの日本人ドラマーでは一番好きです。フュージョンだと神保彰。オリジナルか少なくて、ジャズメン・オリジナルが多いですが、柔らかくならないのがいいところだと思います。ともかく1曲目でぶっ飛びでした。


オマージュ/大坂昌彦(Ds)(M&I)
Hommage/Masahiko Osaka(Ds)(M&I) - Recorded 27-29, 2007. Tadataka Unno(P), Daiki Yasukagawa(B), Osamu Koike(Sax) - 1. Cherokee 2. Afro Blue 3. Isfahan 4. E.S.P. 5. Dear August - Special Song For Audi - 6. Remember Hymn 7. St. Thomas 8. Hymn To Freedom

ライヴ。サックスは1、8曲目は抜けます。大坂昌彦の作曲は5曲目のみで、他はジャズメンオリジナル中心。各曲がジャズメンたちへのトリビュートです。1曲目でピアノがスローで入ったと思ったら途中からこれ以上速くは弾けない、叩けないレベルでの「チェロキー」にはぶっ飛びます。これだけでも聴く価値あり。スピリチュアルな感じながら跳ね飛ぶようなドラムスが目立っている2曲目、バラードからミディアムにかけてのホンワカとした雰囲気のある3曲目、ベースソロからはじまりアップテンポで浮遊感があってモーダルな4曲目、やはりアップテンポで現代的で都会的なアプローチの5曲目、危うげな味わいの淡色系のバラードの6曲目、陽気に4ビートも交えつつカリプソでの7曲目、静かなピアノからゴスペル的に盛り上がる8曲目。(08年4月16日発売)

ジャズCDの個人ページ(工藤)

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2008年5月 6日 (火)

appleJam5月のブラボーな盤(bb白岩)

どちらかというとニューオリンズのジャズ盤を好んでここへ引っ張ってきている気が自分でもするのですが、今回はそのニューオリンズのジャズマンがまだ全然ニューオリンズ臭を感じさせていなかった時の盤です。といいますか、自分がドナルドを好きになったきっかけがそもそもはアート無礼鍵のバンドでテレンス・ブランチャードと一緒にフロントに立っていた頃でした。そんな訳で実はドナルドには言いにくいのですが彼が後にマルディグラ・インディアンとして自己のアイデンティティを確立して以降も同じくらい好きでありながら、もっとそれ以前のこの時期のドナルドの方を今もより好んでヘヴィに聴いている気がします。でももちろん最新盤が出たら出たでそれが最もワクワクどきどきする刺激を私に与えてくれることも確かです。


90年代ドナルドで最も大好きな作品がこのバードランドのライヴ盤
Donald Harrison Quintet / For Arts Sake
2007 German (USA Black Lion/Candid) CCD-79501

Recorded Live at Birdland New York City 1990
Donald Harrison - alto saxophone
Marlon Jordan - trumpet
Cyrus Chestnut - piano
Christian McBride - bass
Carl Allen - drums

怒鳴る奴(ドナルド)がいつ頃を境にはっきりと自身のルーツがニューオリンズにあることを、音楽で表現し始めたかは、私にはよく判らないのですが、少なくともこの時期はまだ100%メインストリーム・ジャズの土壌に両足が位置していた頃。後の2002年盤でも再演する"So What"が、原曲のイメージを忠実に残したカバー・チューンになっていることに、マイルスが59年にやろうとしたことを出来る限り似た条件下で自分自身ででも再現してみたかったのかなと感じます。自作の#5.For Art's Sakeは無礼鍵に捧げた感じのファンキー・チューン、Blue Note盤かと錯覚する音は確信犯だと思います。トランペットがリーモーガン生き写しなのも楽しい瞬間です。


あとがき

マルディグラ・インディアンとしての彼の作品を聴いたとき、そのクールなラップを誰がやっているのか気になってドナルドに尋ねたことがあるのですが、あっさりとラップも歌も(一部を除いて)ボクがやってるんだよ、という返事が返ってきました。ある時にはマイルスに同化しようと実験してみたり、あるときはアルトでコルトレーンに成りきってみたり、またあるときはヒップホップ寄りのマルディグラに挑戦してみたりと、思うにドナルドは気に入ったものに自ら全身で浸って、全身で浸ることで結果として自分の中のフィルターを通して今度は自分の世界観、音楽観として表現している人なんだなと最近は感じています。

bb白岩(appleJam)

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2008年5月 1日 (木)

appleJam 4月のブラボーな盤を聴く(工藤)

久しぶりに白岩さんのおススメCDは、ジャズの直球ど真ん中という感じで、オーソドックスなクインテット編成のジャズを聴かせてくれます。フランスでの録音となっていますが、雰囲気はどきどきセカンドラインもあったりして、気分はニュー・オリンズのモダンジャズという感じです。ニューヨークのようにはトンガってはおらず、陽気でおおらかなジャズを聴くことができます。やや田舎っぽくて往年の全盛期(’50年代)を感じるジャズとでも言うのか、その時々入るニューオリンズ風味がなかなかいいですね。都会的な味の曲ももちろんあります。


Guillaume's Invitation / Leroy Jones (2007 USA Gillaume Nouaux Production) - Recorded August 30 and 31, 2006. Leroy Jones(Tp, Flh), Jerry Edwards(Tb), Julien Brunetaud(P), Sebastien Girardot(B), Guillaume Nouax(Ds) - 1. Two RB's 2. Harbor Street Parade 3. Minor Bash 4. I'll Remember Alex 5. Scandinavian Summer 6. It Don't Mean A Thing... 7. 1944 Stomp 8. Transit 9. Invisible 10. Guillaume's Invitation 11. Second Line

リロイ・ジョーンズ作は5、9曲目の2曲、そしてドラマーでありレーベル・オーナーのGillaume Nouauxの曲は2、4、8曲目の3曲。他にはジャズメン・オリジナルが目立っています。セカンド・ラインの入る部分もあったりして明るいニュー・オリンズのジャズの雰囲気の曲もある(特に11曲目)ものの、3曲目のルー・ドナルドソンの曲のように、ややアップテンポで都会的な渋さを引きずっていて、おっ、いいねえ、と思わせる曲もあります。技法的には’50年代あたりを意識した演奏とも思え、適度にメロディアスなところがいいですね。4曲目は逆に現代的な複雑なコード進行のようで歌っている、アドリブの部分はミディアムで進行する曲。5曲目は明るくやや元気なボッサのリズム。ファンク的なビートを持つデューク・エリントン作もアレンジがカッコ良い。8曲目はちょっと靄のかかったダークな雰囲気が。オーネット・コールマンの9曲目も彼らのサウンドと化してしまっています。ちょっといなたいと言うか、白岩さん好みのサウンドのアルバムかな、と思います。私もこういう音、好きですけど。

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2008年4月30日 (水)

工藤さんの4月のおススメ盤を聴く(bb白岩)

大小を問わず様々な国の人々が極めて平等な扱いの中、極めて公平な審判の下でスポーツという共通のフィールドで自己の能力と技の限界に挑戦する場・・・それがオリンピックだと思って毎回楽しみにしていましたけど、今度ばかりは何やら雰囲気が異なってきてしまいましたですね。ひとつの民族なんていう窮屈なスローガンは、およそ国際的なスポーツの祭典には似つかわしくありませんし、そんな旗をこれみよがしに振っている中で選手も競技をしたくはないと思います。そんなスローガンは聖火の時だけでもう沢山です。本番の大会の際は、本来のオリンピック憲章をしっかりと心に刻んで、会場が変なプロパガンダの場所にならないことを祈りたい心境です。その方が中国も国としてのイメージが遙かに良くなるはずですし。一人一人の中国の人は好きなんですが、国となるとなんとも凄い暴走している気がしないでもありません。でも、それをいうと、アメリカ人とアメリカの音楽が大好きな自分が、共和党政権のアメリカ政府は大っ嫌いなんですよね。もっと言えば、自分は日本人にもかかわらず、今の自公政府が大・大・大っ嫌いなんですけど(笑)。うぅ、なんのこっちゃ。 失礼致しました。m(_ _)m

No Name Horses 2(Verve)

小曽根真(P, Org)
エリック宮城(Tp, Flh)
木幡光邦(Tp, Flh)
奥村晶(Tp, Flh)
中川英二郎(Tb)
片岡雄三(Tb)
山城純子(Btb)
近藤和彦As, Ss, Fl)
池田篤(As)
三木敏雄(Ts)
岡崎正典(Ts, Cl)
岩持芳宏(Bs, Bcl)
中村健吾(B)
高橋信之介(Ds)
with 高瀬龍一(Tp, Flh on 2-4, 8, 11)
菅坂雅彦(Tp, Flh on 5, 7-9)
田中充(Tp, Flh on 6, 10)

ビッグバンドものはそのスケールの大きさと豪快さで私もかなり好きですが、このバンドに関していうと全体的にやや窮屈な演奏に終始している点が惜しい感じです。思うにビッグバンドだからこその爽快さは、何よりも個々のプレイヤーが野鳥のように自由に天空に舞っていながらその実全体が見事に統制が取れている感じ。そんな大自然的な統一感に心底惚れ惚れする作品を沢山今までも聴いてきました。この作品の場合、あたかも縦軸と横軸とそして時間軸とにスケールが刻んであって、各人がナノ秒単位でそのスケール通りに勤めを果たしているという感でしょうか。あと音が紙臭いというか、デジタル臭いというか、どうも楽器本来のニュアンスが耳に届かない点ももどかしい感じがしました。演奏にも音にももう少し伸びやかさがあってもいいように感じます。小曽根真は大好きなジャズマンなんですが、まして大変な力作と判っていてそれをピンとこなかったと書くのは結構勇気が要るのですが、本当の感想を書かないことには意味がないですし、今回も聞き役が悪かったと思って勘弁様して下さいね。

ps
もしや全く同じ音源を別の人がリミックス、リマスタリングしたら、がらっと印象が変わるかも知れないですね。音が剥きだし過ぎて、私には刺激が強すぎました。トシなんですかね(笑)。 とほほほほ。

bb白岩(appleJam)

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2008年4月16日 (水)

appleJam4月のブラボーな盤(bb白岩)

毎年、大阪の造幣局ご自慢の桜の通り抜けのニュース映像を見る度、京都市左京区の実家から5分で行ける哲学の道の桜を思い出します。子供の頃は家から南禅寺や永観堂へ行くにも銀閣寺に行くにもいつも通るようにしていた道です。お寺にいくのではなくその付近に行くという意味ですが、一応子供なりにも独特の四季折々の風情を楽しんでいたというこか(笑)。それから約40年後の今、磐田に住むようになってからは逆に直ぐ近くのうらぶれた公園の桜の木々に季節の変わり目を感じています。今年はもう既に散っていますけど、幽霊公園という感じの割には結構立派な桜が咲くのが目を引きます。

ファンキーなハードバップ・チューンからニューオリンズ・ジャズまで多彩なセッション
Leroy Jones / Guillaume's Invitation
2007 USA Gillaume Nouaux Production
パーソネル
Leroy Jones - trumpet, flugelhorn
Jerry Edwards - trombone
Julien Brunetaud - piano
Sebastien Girardot - bass
Guillaume Nouax - drums

アルバム・タイトルから察するに、今回はドラムのギヨームがリロイ等お気に入りのメンバーを誘ってスタジオ入りした一枚のようです。現地情報によればギヨームとはレスター・ヤングやロイ・エルドリッジといったスイング全盛時代の巨人達が大好きとのこと。多分そんなニュアンスがスタジオでも空気を染めたか、ここにはもろセカンド・ラインから50年代テイストのファンキー・ジャズまで実に多彩な拡がり。私などはルー・怒鳴る奴損(ドナルドソン)作の#3.Minor Bushから、間にリロイのオリジナルを挟んで#6.のエリントン・チューン辺りの流れがまさに毒。#7.でまた瞬間移動でニューオリンズの空間に戻るところも見事です。

あとがき

自分で判る範囲の情報によれば、リロイは13才でダニー・パーカーのバプテスト・ブラスバンドに加わりトランペットを担当してからが、本格的なキャリアの始まりかなと思います。ハイスクール卒業後にはいよいよ自らのブラスバンド、ハリケーン・ブラスバンドを結成、その後クリーンヘッド・ヴィンソンと共にカナダツアーに参加するなどキャリアも徐々にスケールアップします。Boneramaのリーダーとしても活躍している旧友、Craig Klein(tb)と組んだ96年のソロ作 "Props for Pops"が、シーンの中で長らくリロイの代表作的位置づけにあったように感じますが、その後も引き続きクレイグ・クラインとの縁が継続している模様で、両者は相当の信頼関係にあるものと思います。あと余談ですが名前の読みはリロイではなくルロワだという説もあるのですが、今までずっとリロイという読みに馴染んでいたせいもあってそのままの表記をしています。ちなみにドラムのギヨームという読みもほとんど勘に頼っています。

bb白岩(appleJam)

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2008年4月 5日 (土)

4月のおススメ盤(工藤)

ノー・ネーム・ホーシズのアルバムの1枚目が2年前に出た時はスゴいと思いました。そして、今回の2枚目。いくつかの曲はスキッと発散するようなホーンアレンジで聴いていて気持ちが良いし、いくつかは個性的で内省的な部分もあります。作曲者や曲にもよるのでしょうけれど、変化に富んでいて聴いていてひきつけられるものがあります。それを国内の一流のミュージシャンが、おそらくは難しいアレンジをカッコ良く演奏してしまう。こんなアルバムが好きです。また、往年のビッグ・バンドアレンジというよりは新しさを感じさせるところも、いい感じ。でも、ほとんどがオリジナルなので、ちょっと冒険してみたいかな、と思う方に。


No Name Horses 2(Verve)
No Name Horses 2(Verve) - Recorded December 10, 12-14, 2007. 小曽根真(P, Org)、エリック宮城(Tp, Flh)、木幡光邦(Tp, Flh)、奥村晶(Tp, Flh)、中川英二郎(Tb)、片岡雄三(Tb)、山城純子(Btb)、近藤和彦As, Ss, Fl)、池田篤(As)、三木敏雄(Ts)、岡崎正典(Ts, Cl)、岩持芳宏(Bs, Bcl)、中村健吾(B)、高橋信之介(Ds)、with 高瀬龍一(Tp, Flh on 2-4, 8, 11)、菅坂雅彦(Tp, Flh on 5, 7-9)、田中充(Tp, Flh on 6, 10) - 1. No Strings Attached 2. You Always Come Late 3. Into The Sky 4. Portrait Of Duke 5. ATFT 6. Stepping Stone 7. Cookin' For Hungry Horses 8. Miyabi 9. OK, Just One Last Chance 10. Reconnection 11. Someone To Watch Over Me (Bonus Track)

国内の一流メンバーを集めたビッグ・バンドの2枚目。ラストのホーン中心で演奏されるバラードのスタンダード(11曲目、ボーナストラック)を除いて、小曽根真作(1-2、4、7、9)か参加メンバーの作曲が多い。小曽根がハモンドオルガン(1曲目)を使う曲も。何と言ってもオリジナルを中心に勝負しているところがスゴく、アレンジもノリが良く、けっこう聴いていて発散するような、それでいて緻密な計算がなされているようなホーン・アレンジが素晴らしい。難しいことをさらりとやってのけるようなメンバーが集まったこそできる演奏かも。もちろんそれぞれのソロも聴きどころが多いです。どの曲も割とストレートですが、6曲目は7拍子で変則的なビート。4曲目のしっとりとしたバラードもなかなか。8曲目はダイナミックな部分もあるバラード。(2月20日発売)

ジャズCDの個人ページ(工藤)

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2008年3月30日 (日)

appleJam 3月のブラボーな盤を聴く(工藤)

3月のappleJam白岩さんの紹介は、南部のロックとファンク、そしてポップスが合わさったような、ボーカル曲が多いアルバムでした。いわゆる4ビートジャズではありませんが、田舎っぽさと同時に、ホーンのアンサンブルはカッコよいし、曲によってはファンクの切れ味のあるものもあって、面白いです。白岩さんのお店のファンの方は注目するのでは。


The Big Awesome/Johnny Sketch and the Dirty Notes(2007 USA Self Released)

Johnny Sketch (Marc Paradis) - guitar, lead vocals, cello, percussion
Busta Gnutt (Dave Pomerleau) - bass, vocals
Dirty Johnny (Andre Bohren) - drums, vocals, keyboards, percussion
Johnny Rico (Omar Ramirez) - trumpet, flugelhorn
Johnny Rocket (Andre Mouton) - alto/baritone sax
Johnny Hitman (Tommy Occhiuto) - tenor sax, flute
Michael Skinkus - percussion
Curtis Blo Watson - vocal

1. New Dexieland 2. Find My Freedom 3. Cora Lee 4. Dance Dance Dance Dance Dance 5. Manzanita 6. Just Lied 7. Milacle 8. The Getaway 9. When I Go 10. Kaiser 11. M'GitDat 12. Axia 13. Glory Of God

南部のロックとファンク、そしてポップスが合わさったような、ボーカルアルバム(インストの曲もあります)。どことなくメロディアスでキャッチーなヴォーカルラインもあって、田舎と街中がごちゃ混ぜになったようなサウンドが面白いです。ジャズ寄りの部分はホーンが複数参加して時折りソロもとっているかな、というだけで、やっぱりロックやポップスなどの範疇で聴く音楽だと思います。その方面で考えてみたら、野暮ったさとメロディアスな部分が一緒になっていて、楽しいと思います。そしてファンクの部分も垣間見えます。3曲目は珍しくアップテンポのマイナーな曲で、日本人の私には強く印象に残りました。そして4、7曲目あたりはゴキゲンでタイトなファンク。こういう曲も演奏しているんですね。かと思ったら6、10-11曲目はギターがかなりロックしています。全13曲、いろいろな曲があってカラフルで飽きないです。

ジャズCDの個人ページ(工藤)

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2008年3月27日 (木)

工藤さんの3月のおススメ盤を聴く(bb白岩)

今年のグラミー賞のWOWOWでの生中継を見ていて、遂に最後の最後までホスト役のカビラ氏は、本年の50回目のグラミーからCajun/Zydecoの部門賞が新設されたことを一言も伝えていませんでした。チャート音楽命の方にとって、そのことが如何に関知外の出来事かを痛感した次第です。でも例えそういうスタンスの業界人であっても、絶対に絶対に黙殺出来ない大きな存在が今回のこのハービー・ハンコックだよなー、などとも思いながら番組を見ていた次第です。なんと言ってもカテゴリーを超越して大変な一時代を築いた人。そして今回共演しているウェイン・ショーターもまた同じくらい歴史的にもとても大きな存在で、そんなビッグな二人が今もシーンのど真ん中で現役で活躍していることを単純にとても嬉しく感じます。今月はとても幸せな気持ちで聴いた一枚になりました。

Herbie Hancock/ River ~ The Joni Letters (Verve)

Herbie Hancock(P)
Wayne Shorter(Ts, Ss)
Dave Holland(B)
Vinnie Colauta(Ds)
Lionel Loueke(G)
Norah Jones(Vo on 1), Tina Turner(Vo on 2)
Corinne Bailey Roe(Vo on 4)
Joni Mitchell(Vo on 6)
Luciana Souza(Vo on 8)
Leonard Cohen(Vo on 10)

それを何時何処で読んだのか、誰が書いたのかの記憶もないのですが、その方の分析によると毎留守デイヴィスは吹く直前に終点の音を先にイメージし、そしてあとは如何にして無駄をそぎ落とした音数でもってそこへたどり着くかを信条とし、一方ジョン・凝るトレーンは吹きたい頭の音が常に先にあって、一端吹き出したあとは自分の吹いた音に自分自身が触発されてあとどうなるかは神のみぞ知る。~~という、明快に両極に分かれるタイプの奏者だという分析が、それを読んだ日から約30年くらい頭から離れません。今月のテーマになったハンコックはどっちに近いタイプかなと思いつつ、CBSコロムビア時代の毎留守五重奏団は一時期ずっとリーダー役をハンコックとショーターに任せっきりだったような気がしなくもなくて、そういった相性からも察するに、少なくとも多分ハンコックは実に思索的に一瞬の思いや閃きが次の閃きを生んでいくタイプだからこそ、マイルスが好んで長いこと一緒に仕事をしていたようにも思います。そういう気持ちは今回のこの作品にもズバリ当てはまる気がして、ピアノのフレーズの紡ぎ方が、何ともポエミーで牧歌的。ジャズという音楽がもつ本来的な波動、一個の石が湖面に幾重もの波を作るみたいな拡がりが見事に表現されている感じです。個人的なベスト・トラックはレナード・コーエンと共演した#10.で、ここでのコーエンがまさに詩の朗読そのまんまで臨んでいるのが印象的。ハンコックの思索的なさざなみが拡がる感じのピアノに相当に触発された結果ではないかと思います。朗読に伴奏を付けるという難行も共にインスパイアされる者同士による共演の結果、全く無理なく微塵の不自然さもなく、まさにアートの領域で完成したトラックになっている気がします。

bb白岩(appleJam)

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2008年3月 9日 (日)

appleJam 3月のブラボーな盤

産業革命の時代の次が情報(IT)革命と言われる今この瞬間だとしますと、次の新時代は農業革命の時代が地球規模でやってきそうに思います。もし私が音楽バカでなかったら、きっと借金してでも地場の企業と合体した農業プロジェクトのNPO法人かあるいは新発想の集団農場を経営したいと燃えていたかも知れません。但しそのためには一方的に政府の意向や農水省のペースで業務の内容にあれこれ口出しをされないという前提が欲しいところです。せっかく軌道に乗ってきたところで、いきなり減反政策だの生産作物の転換命令だの言われたらうんざりしてしまいそうだからです。それはともかくここから先はマジに農業が時代の先端を切り開くと私は信じています。そしてもちろんそんな時代の人々の暮らしを支える主役のひとつがやっぱり音楽であって欲しいとも願っています。


Johnny Sketch and the Dirty Notes / the Big Awesome
2007 USA Self Released

Johnny Sketch (Marc Paradis) - guitar, lead vocals, cello, percussion
Busta Gnutt (Dave Pomerleau) - bass, vocals
Dirty Johnny (Andre Bohren) - drums, vocals, keyboards, percussion
Johnny Rico (Omar Ramirez) - trumpet, flugelhorn
Johnny Rocket (Andre Mouton) - alto/baritone sax
Johnny Hitman (Tommy Occhiuto) - tenor sax, flute
Michael Skinkus - percussion
Curtis Blo Watson - vocal

ニューオリンズがかつてはフランスの領土だった時代の名残で、今この瞬間も爺ちゃん婆ちゃんがフランス語しか話せず、逆に孫は英語しか話せず、真ん中に位置するパパやママがその両者の通訳をしている家庭がある時々耳にすることがあります。そんなニューオリンズのバンドに時々感じる昭和初期の日本のエッセンス。それはきっと当時のフランス文化がどちらにも共通の影響を残した結果でしょうか。ザディパンクスやこのJS&DNの#3.なんか聴くとほんとに不思議な気持ちになります。とはいえ本質はアストラル・プロジェクト風の#11で、変則リズムと複雑怪奇さは、完璧なるジャズ的アプローチが様になるバンド。暁光を浴びる猿人の後ろ姿が描かれているのが印象に残ります。

あとがき

活きの良さとアイデアの豊富さと同時にそれを実際に音に出来る確実性が凄いと感じたバンドで、お店では2003年のデビュー時から注目している存在です。特にリーダーのスケッチのユニークさは特筆で、活動初期の頃はハリーのうねるイレクトリック・ヴァオリンと共にバンドの二枚看板という展開に目を見張ります。ユニークでかつカッコいい音が洪水のように飛び出してくる点と、思いついたことは何でも形にするというこのアグレッシヴさ、かつてのリターン・トゥ・フォーエヴァーにも通じる気がして、宇宙空間的インプロヴィゼーションにはただただ酔いしれてしまいます。現在はヴァイオリンのハリーが抜けて、バンド的にはより判りやすいラインを描くロッキン・ファンク集団となっていますが、それでもなお単なるジャムバンドとは別格に見ないといけない存在だと思います。

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2008年3月 3日 (月)

3月のおススメ盤(工藤)

グラミー賞の年間最優秀アルバム賞に選ばれたということで、今月も発売からちょっと経っていますが、ハービーハンコックの’07年作品を紹介したいと思います。

ハービー・ハンコックが久しぶりにジャズの方面でリーダー作を出してくれました。とは言うものの、ジョニ・ミッチェルの曲がほとんどなので、ノリは渋めだけれどもポップス。でもやっぱり彼とウェイン・ショーターはタダ者ではないですね。軽いノリにはならず、ちょっと沈んだ感じから、さりげなく、それでも鋭くえぐるようなフレーズがあちこちに出てきます。ジョニの曲をどれだけ知っているかでも、親しみ度は違うと思いますが、あまり知らなくても、けっこういいんじゃないかと思いますよ。ただ、基本はポップスノリ、そしてヴォーカルの曲が半分ほどあるという点、4ビートは出てこない、ということで好き嫌いはあるかもしれません。それからボーナス・トラックは、ちょっとカラーが明るめで違うような気もしました。


リヴァー~ジョニ・ミッチェルへのオマージュ/ハービー・ハンコック(P)(Verve)
River: The Joni Letters/Herbie Hancock(P)(Verve) - Released 2007. Wayne Shorter(Ts, Ss), Dave Holland(B), Vinnie Colauta(Ds), Lionel Loueke(G), Norah Jones(Vo on 1), Tina Turner(Vo on 2), Corinne Bailey Roe(Vo on 4), Joni Mitchell(Vo on 6), Luciana Souza(Vo on 8), Leonard Cohen(Vo on 10) - 1. Court And Spark 2. Edith And The Kingpin 3. Both Sides Now 4. Rievr 5. Sweet Bird 6. The Leaf Prophecy 7. Solitude 8. Amelia 9. Nefertiti 10. The Jungle Line 11. A Case Of You

ジョニ・ミッチェルへのトリビュート作で、彼女の作曲は共作を含め9曲(1-6、8、10-11曲目)。ボーナストラックは11曲目。デューク・エリントン作(7曲目)、「ネフェルティティ」(9曲目)も入っています。約半数がヴォーカル曲で、渋いながらもポップなイメージがあって、4ビートでガンガン攻めるというような曲はないですが、ジョニ・ミッチェルのエッセンスをよく取り入れた感じで、ハービー・ハンコックとウェイン・ショーターがスゴい。攻撃的ではないのに、ところどころ入る楽器のえぐりとるような鋭いフレーズ、危ういアウト・フレーズなどでタダモノではないハンコックのリーダー作ということを思い知らされます。たとえそれがバラードの曲であっても。7、9曲目のジャズメン・オリジナルも流れに沿っていて、スーッと溶け込みます。(07年9月19日発売)

ジャズCDの個人ページ(工藤)

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